「同じものを見ても支持政党が違うと解釈がまったく異なるのはなぜか?」が神経学的に解明される

GIGAZINE



同じニュースを見たにもかかわらず、政治的なスタンスが左派か右派かによって理解のしかたが180度違ってしまうという現象が、しばしば発生します。政治的なニュースを処理している人の脳をスキャンする新たな研究により、このような偏りが脳の中で発生するメカニズムが解明されました。

Shared neural representations and temporal segmentation of political content predict ideological similarity | Science Advances
https://doi.org/10.1126/sciadv.abq5920

Study offers neurological explanation for how brains bias partisans against new information | Brown University
https://www.brown.edu/news/2023-02-01/political-brain

アメリカは民主党と共和党が票を争う二大政党制をとっており、「自由」という言葉や星条旗の写真、2020年アメリカ大統領選挙の結果など、同じものを見聞きしてもそれぞれの政党の支持者では受ける印象や解釈が正反対になります。従来の定説では、このような政治的な偏りはニュースやソーシャルメディアの選択的消費、つまり何を知るかを自分で選んだ結果だとされてきました。


この学説では、自分と異なる政治的主張にさらされ続けるとやがて偏りが解消されるはずですが、これまでの研究では逆に「ソーシャルメディアで反対意見に直面すると政治的な偏りがかえって助長される」ということが示されています。

そこで、アメリカ・ブラウン大学カーニー脳科学研究所の認知科学者であるオリエル・フェルドマンホール氏らの研究チームは、リベラル派と保守派の被験者22人ずつ、合計44人に画像や動画で政治的な言葉を示して、その最中の脳の活動を血流の変化から分析する磁気共鳴機能画像法(fMRI)で調査しました。

フェルドマンホール氏によると、人が単語のような単純で静的な画像を見ると、脳はその単語を特定の活動パターンで表現するとのこと。この脳神経のパターンはまるで指紋のようなので、研究者の間で「神経指紋(neural fingerprint)」と呼ばれているそうです。


研究チームが、被験者に「妊娠中絶」「移民」「ギャング」など政治的に利用されることの多い言葉や、「自由」のような曖昧な言葉を示しつつ脳をfMRIでスキャンしたところ、リベラルな人の脳が作る神経指紋は他のリベラルな人とよく似ており、これは保守的な人の神経指紋でも同様でした。

研究チームはまた、同じイデオロギーを持っている人同士では、政治討論の映像を視聴している最中の脳の神経パターンがよく似ていることも突き止めました。これは、政治的な概念や言葉に対する神経指紋がよく似ているのが主な理由だと考えられています。

こうした一連の実験結果についてフェルドマンホール氏は「政治的偏向の問題は、表面的なレベルで対処できるものではありません。私たちの研究では、このような二極化した信念が強く凝り固まっていて、人々が政治的な言葉を感じる方法にまで影響していることを明らかにしました」と話しました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

Source

タイトルとURLをコピーしました