セックスを女性の資源と捉える「性的経済学」

GIGAZINE
2023年01月02日 08時00分
メモ



セックスを経済的観点から捉え、女性をセックスの売り手、男性を買い手と考えて文化や性的傾向を考える「性的経済学」という理論が、経済学者のロイ・バウマイスター氏とキャスリーン・ヴォース氏により提唱されています。

Sexual Economics: Sex as Female Resource for Social Exchange in Heterosexual Interactions
(PDFファイル)https://assets.csom.umn.edu/assets/71503.pdf

Sexual Economics: Sex as Female Resource for Social Exchange in Heterosexual Interactions – Roy F. Baumeister, Kathleen D. Vohs, 2004
https://doi.org/10.1207/s15327957pspr0804_2

Sexual Economics, Culture, Men, and Modern Sexual Trends | SpringerLink
https://doi.org/10.1007/s12115-012-9596-y

Why won’t guys grow up? Sexual economics – The Globe and Mail
https://www.theglobeandmail.com/opinion/why-wont-guys-grow-up-sexual-economics/article5172942/

バウマイスター氏らはセックスを経済学の原理から捉え、「セックスは女性が持つ数少ない資源の1つだ」と指摘しています。バウマイスター氏らが提唱する性的経済学においては、男性は女性よりもセックスを欲しているという大前提が存在します。この前提において、経済活動における女性は資源の供給者、つまり売り手であり、男性は買い手と見なすことができます。こう考えると、性行為をする男女は同じことをしていますが、社会的には全く異なる行為が行われていることになります。

狩猟採集や農耕の時代では男女は別々の社会的役割を担い、後に広まったより広範な経済的・社会的活動は主に男性の領域から生まれ、富や権力は男性を中心に構築されるようになりました。バウマイスター氏らは、歴史上、セックスの供給を制限しておくことは女性にとって有利であったと主張しています。バウマイスター氏らは「セックスは社会の富の一部を得るために男性に提供できる女性の資源だった」とし、女性はセックスの価値を高めるためにセックスをできる限り制限していたのではと考えています。

これらは、人は誰かに物やサービスを与え合うものであり、お互いに何かを交換することで自然な人間関係が形成されていくという「社会的交換理論」という考えに基づくものであり、何らかの物質的・社会的資源を得るために女性がセックスの供給者にならざるを得なかった時代・文化的背景が見てとれるとバウマイスター氏らは指摘しています。


女性が権力と機会を得るようになると、女性は社会の富の一部を自分の力で手に入れることができるようになり、上記の観点も変化していきます。しかしながら、性的市場において女性の価値が高いという状態は続いており、これは性行為を金銭と引き換える売春において女性がセックスの売り手となることが多いことからも明らかです。

バウマイスター氏らは「自然が生物学的に男性に不利な要素を組み込んでいるため、性市場は女性有利になっています。女性も確かにセックスを欲していますが、大多数の女性が大多数の男性よりもセックスを欲していない限り、女性は集団的優位性を持ち、社会的役割や相互作用は、男性よりも女性に大きな力を与えるでしょう。女性のセクシュアリティに対する文化的抑圧は、性的経済学の観点から見ると特別な勝利といえます」と述べました。

また、「ほとんどの学校や企業、科学団体、政府、その他多くの機関は、女性を保護し昇進させるための明確な方針を持っています。同じように有能な男性よりも先に女性を雇用したり昇進させたりすることは標準的な慣行となっています。ほとんどの大組織には、女性の利益を保護し、女性が男性より優遇されることを保証する政策や監視役が存在します。しかし、それと並行して男性の利益を保護する政策や仕組みはほとんど存在せず、多くの場合、明確に禁止されています。例えば主要な新法はフェミニストの法学者によって注意深く精査され、女性にとって問題や不利になりそうな面はすぐに批判されるので、すべての新法は女性に優しくなっています。誰も男性に気を配らないので、女性に有利で男性に不利な構造変化が加速しています」などともバウマイスター氏らは主張しました。


なお、バウマイスター氏らのこの理論に対し、コラムニストのマーガレット・ウェンテ氏は「若い男性はセックスの機会が手軽に手に入るようになったため、経済的価値は変化した」と指摘しています。

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