Twitterの状況がますます混迷を深めるなか、ゲーマーはこのソーシャルメディアプラットフォームから飛び出してはいないものの、その崩壊がオンラインゲームコミュニティに取り返しのつかないダメージを与えると懸念する人は少なくない。
ゲームクリエイターや一般ユーザーは、ディスコード(Discord)、インスタグラム(Instagram)、YouTubeなどの代替プラットフォームにより多くの時間とリソースを費やすことで、保険をかけようとしている。
「@TwitterGamingにはもはや命がない」
10月下旬にイーロン・マスク氏が同社を買収したのち直ちに従業員の半数をレイオフし、マスク氏が倒産もあり得るとスタッフに告げたことから、Twitterは論争のなかに巻き込まれた。
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Twitterのゲーム担当スタッフも例外なくレイオフの対象に。ゲームコンテンツ・パートナーシップ部門の責任者、リシ・チャダ氏は解雇を免れたが、彼のスタッフの多くはそうはいかなかった。
業界関係者のロッド・ブレスラウ氏はこう語る。「@TwitterGamingのハンドルネームにはもはや命がなく、誰もそれを動かしていない。(マスク氏は)チームの多くを排除した。我々の業界にとってよいことではないが、いま、現実に起こっているのはそういうことだ」
結論からいうと Twitterの運命は不透明で、ゲームクリエイターはTwitterの完全崩壊に備え、すでに代替チャネルでのプレゼンス強化を積極的に始めている。
コミュニティはすでにディスコードなどに移行し始めている
『大乱闘スマッシュブラザーズ(以下、スマッシュ)』のトッププレイヤーで、ニューヨーク市におけるゲームカテゴリーのディスコード・コミュニティを仕切るジャスティン・コーヘン氏は、「多くのゲーマーやゲーム界の著名人たちは、Twitterが永遠に続くわけではないこと、とくに1年前の状況ではないことを理解し始めている。そのため、彼らは多様なプラットフォームに投稿したがっている」と話す。
これは、ゲーマーが初めてディスコードをダウンロードしたという意味ではなく、圧倒的大多数はすでにディスコードを利用しており、ゲーマーやゲームクリエイターが意識的に、ディスコードをTwitterに代わる主要なコミュニティプラットフォームの土台にしたということだ。センサータワー(Sensor Tower)のデータによると、10月27日~11月14日のあいだに、ディスコードのモバイルアプリは約480万回インストールされているが、これは10月9日~26日の470万回からわずか2%増加したにすぎない。
「ディスコードは純粋に共同体の集合場所として存在しており、Twitterの2つの主要機能のうちのひとつと直接競合している」と、ツイッチ(Twitch)ストリーマーのギャッピー氏は述べる(ギャッピー氏はブランドとのパートナーシップの可能性を危うくしないために匿名を希望した)。「だから、Twitterがもう使えないのなら、クリエイターとして、コミュニティ管理全般にディスコードを使ったほうがいい」
また、ストリーマーたちは、投稿の優先順位が下がるのを防ぐためにサブスクリプションサービス「Twitter Blue」を購入することを迫られていて、現在Twitterで経済的なプレッシャーを感じていると、ギャッピー氏は付け加える。
Twitterはゲーム市場を失うか
ゲーマーやゲームクリエイターのコミュニティ形成の場が他所に移ったことで、Twitterはゲーマーにリーチしようとするブランドの注目と広告費を失うリスクを抱えている。
センサータワーのデータによると、ゲーム会社のTwitterへの広告費は、10月前半と11月前半において前月比で13万1200ドル(約1820万円)減少している。これはあらゆる分野の広告主が、「リスクの高さ」を理由にTwitterから手を引いているためだ。
ニューヨーク大学のeスポーツおよびゲーミングディレクター、ジェイソン・チュン氏は、「もしブランドが発表の場を別のプラットフォームに移し、どこか別の、より信頼できるスペースに移行し始めたら、それはおそらく、デフォルトのマーケティングツールとしてのTwitterにとって死を告げる鐘となるだろう」と述べる。
コミュニティがまとまらなければ、市場は育たない
結局のところ、Twitter崩壊の可能性に関して、ゲームコミュニティが直面する最も重要な課題は、クリエイターによるコンテンツ投稿の減少や、広告主の支出減少の問題ではない。事実、ゲームやeスポーツをめぐる物語(情熱、ライバル関係、盛り上がりの瞬間)は、従来、ほかのいかなるソーシャルメディアチャネルよりもTwitterで生み出され、広まってきた。Twitterのような中心的プラットフォームがなければ、eスポーツ業界を構成する多くの個人やコミュニティをまとめることができず、eスポーツの視聴率やエンゲージメントが全体的に低下する可能性がある。
「Twitterがなくなったら、大会に積極的に参加したり、試合を探したりしない、スマッシュコミュニティにいる普通の人たちの参加レベルが気がかりだ」と、同ゲームのトッププレイヤーで、2万2000人が参加するディスコードチャンネル「ミーリー・オンライン(Melee Online)」の共同設立者であるリシ・マルホトラ氏は述べる。「スマッシュを追いかけるファンは、その物語性の面に興味を持つ人が本当に多いのだ」。
[原文:As Twitter’s gaming community navigates uncertainty, other platforms stand to benefit]
Alexander Lee(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)