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iOS14以降、顧客の獲得がより難しくなり、費用もかかるようになった環境において、2つのD2Cブランドが、広告予算をメタ(Meta/旧Facebook)からTikTokに移行したと発言している。
スーパーガット(Supergut)は独自のレジスタントスターチ(難消化性デンプン)をベースにした商品を販売しているが、これまではデジタル広告予算の80%をメタとインスタグラムに費やしていたと述べている。しかしこの夏から、その費用の40%をTikTokとインフルエンサーに移した。一方でプレバイオティックソーダブランドのポッピー(Poppi)もまた、短編動画共有アプリであるTikTokでのバイラル化動画の効果を目にし、マーケティング活動の一部をメタからTikTokに移行した。
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昨年のAppleによるiOS14のアップデートにより、ユーザーは自分のオンラインでの活動が特定のアプリにトラッキングされることを拒否できるようになった。そのため、各ブランドは自社の努力と広告への支出を費やす別のチャネルを探すことを求められた。そして、商品の完売を引き起こすことで有名になったプラットフォームのTikTokが、新規顧客の獲得とブランド認知の確立を望むブランドの注目を集めることになった。ブランドがTikTokで公開するコンテンツは、有料なものとオーガニックなものの両方があり、この戦略の結果としてトラフィックと認知が増大しつつある。
多数のオーディエンスにリーチできるTikTok
スーパーガットのマーケティング担当シニアバイスプレジデントを務めるファザルド・シャリフ氏は次の様に述べている。「iOS14のリリースと、人々がアプリのトラッキングを拒否するようになったことから、Facebookはこれまでほど信頼性が高くなくなった。当社は、顧客と結びつくために別の場所を探す必要に迫られた」。
同社はムニーク(Muniq)という名前で2019年に設立され、4カ月前に、スーパーガットにリブランディングしたばかりだ。それと同時期に、マーケティング活動をメタからTikTokに切り替えはじめた。TikTokに注力した結果、同社は顧客獲得コストを半分に低減し、サイトのオーガニックなトラフィックを2倍にすることができた。同社は現在、昨年1月のシリーズA資金調達ラウンドを820万ドル(約12億1000万円)で終了した後、現在は資金調達を行っていると語る。
同社は、教育用動画などのコンテンツを通じて、TikTokではるかに多数のオーディエンスにリーチできることから、同アプリに注力していると語る。同社は、TikTokで「#guttok」と呼ばれている、腸の健康を意識した側面を活用したいと語る。このハッシュタグ付きの動画は現在、合計で6億6200万回以上再生されている。このハッシュタグでもっとも多く再生されているTikTokのコンテンツのひとつは、プレバイオティックファイバーが健康に及ぼす利点について語ったものだ。@trentytokというハンドルネームを持つクリエイターを撮影したもので、90万回以上再生されている。
スーパーガットは、Facebookにおいて、見込み客発見とリターゲティングという従来型のプロセスで集客を行ったという。同社には、スーパーガットコミュニティ(Supergut Community)という公式のFacebookグループもあり、1万2000人以上のメンバーを抱えている。このFacebookグループは、同ブランドのコミュニティメンバーが健康管理の体験談を共有する場として作られたものだ。
従来型のアプローチは死んだ
「Facebookが死んだとは言わない」と、スーパーガットの創設者でCEOを務めるマーク・ワシントン氏は述べる。「私が死んでいると思うのは、D2Cブランドが成長エンジンとして有料ソーシャルメディアに全面的に依存する従来のアプローチだ。そして、これらの資金のほとんどはこれまでFacebookに流れていた」。
マーケティング企業のベラルディウォン(Belardi Wong)のプレジデントを務めるポリー・ウォン氏は、AppleのiOS14アップデートのリリースを受けて、各ブランドは広告費の支出先の多様化をめざしていると語る。しかし、ほかのプラットフォームとは異なり、TikTokはもっともニッチなオーディエンスもターゲットにできる能力があると、同氏は述べている。このため、美容品ブランドのピースアウト(Peace Out)から生理ケアブランドのオーガスト(August)まで、あらゆるカテゴリーのブランドが、ほかのメディアよりもTikTok上でコミュニティを構築することに注力している。
ウォン氏は次のように述べている。「TikTokの広告は大きく異なり、より体験的なものだ。当社は、TikTokでうまく機能するカテゴリーや、うまく機能するターゲット層が数多く存在することがわかる」。
TikTokの広告制作で求められる課題
スーパーガットと同様に、ポッピーもマーケティング活動のかなりの部分をTikTokに捧げた。同社のもっともバイラルな動画はシャークタンク(Shark Tank)での自社の経験についてのもので、5000万回近く再生された。この動画が投稿された次の日、ポッピーの商品の売上は平均的なセールの日と比べて200%も増加した。
ポッピーの共同創設者で最高ブランド責任者を務めるアリソン・エルスワース氏は、今年10月に米モダンリテールがマイアミで開催した「Modern Retail DTC Summit」(10月17〜19日)で次のように語った。「実際のところ、ほかのチャネルではこのような種類のリーチは得られない。当社はこのプラットフォームで有料の広告をはじめたが、最終的には支出のほとんどをメタから移し、いまでは4対1でTikTokが中心だ」。
エルスワース氏は、ポッピーがこのアプリでターゲットオーディエンスと結びつくことができ、店舗内とオンラインの両方で売上が向上していると語る。同社は、TikTokユーザーから、ターゲット(Target)やホールフーズ(Whole Foods)などの店舗でポッピーの商品を購入したというコメントを目にしていると語る。同社は現在、TikTokで20万人を超えるフォロワーを抱えている。
しかし、メタと比べてTikTokの広告は、結果のトラッキング能力という点において依然として初期段階であると、ウォン氏は語る。さらにTikTokのフォーマットは、アプリのユーザーベースの共感を集めるために、従来型の広告フォーマットの枠を超えて考えることをブランドに求める。また、Modern Retail DTC Summitにおいて、一部の小売エグゼクティブは、コンテンツ制作のコストが高くなっており、ほかのブランドが経験しているような高いコンバージョン率が達成されていないと、匿名で語った。
しかし、Metaと比較すると、TikTokの広告は、結果を追跡する能力という点ではまだ初期段階にあるとWongは述べています。また、TikTokのフォーマットは、アプリのユーザーベースに共鳴するために、ブランドに従来の広告フォーマットの外側を考えるよう迫っています。Modern Retail’s DTC Summitに参加した小売企業の幹部の中にも、コンテンツ制作のコストが高くなっており、ほかのブランドが経験しているような高いコンバージョン率を経験していないと匿名で発言している人がいます。
ウォン氏は次のように述べている。「これは根本から異なるタイプの広告ユニットだ。メタにはごく具体的な広告作成用のレシピが存在し、それはTikTokとは完全に異なったものだ」。
それでも各ブランドは、TikTokに労力をつぎ込んでいる。スーパーガットは、自社の戦略を変更したあとでソーシャルメディアのフォロワーが3倍になり、TikTokのフォロワーは2万4000人に近づいたと語る。また、同社はスーパーガットスタジオ(Supergut Studios)というコンテンツクリエイターの社内チームも構築中で、TikTokを含む同社の各チャネルでコンテンツと認知を推進していく。
スーパーガットのシャリフ氏は、「特定のコンテンツによって誰かとはじめて関わるとき、いかにしてその人の意識を保ち、最終的に購買につなげるか。そのファネルを進めるにはどうすればいいだろうか」と述べている。「当社はこれからも広告を継続していくが、今後はコンテンツがいわば切り込み役となると、私は考えている」。
[原文:Why brands like Supergut and Poppi are moving their ad spend from Meta to TikTok]
MARIA MONTEROS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)