雷が落ちると枝葉の先が青く光る「コロナ放電」が大気質に影響を及ぼしている可能性

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雷が落ちた時、落下地点周囲に生えている草木の先端から小さな青い火花が発生する「コロナ放電」という現象が確認されることがあります。このコロナ放電という現象によって大気質が大きく変化していると、ペンシルバニア州立大学気象大気科学部の研究チームが報告しています。

Prodigious Amounts of Hydrogen Oxides Generated by Corona Discharges on Tree Leaves – Jenkins – 2022 – Journal of Geophysical Research: Atmospheres – Wiley Online Library
https://doi.org/10.1029/2022JD036761

Plant leaves spark with electricity during thunderstorms — and that could be altering our air quality in unpredictable ways | Live Science
https://www.livescience.com/thunderstorm-leaf-discharges-affect-air-quality

雷が落ちた時、落下地点周辺の電場が強く振動すると、大気中の分子がイオンと電子に分離することがあります。この分離したイオンや電子が他の原子に衝突することで、連鎖反応的に電子とイオンが増えていく現象がコロナ放電です。悪天候時に船のマストやアンテナの先端が青白く発光する「セントエルモの火」という現象の正体は、このコロナ放電だといわれています。

by Nitromethane

研究チームは実験室に雷雨の電場を再現した上で、さまざまな条件下で8種類の植物からの放電現象を観測しました。その結果、植物からのコロナ放電はラジカルを大量に発生させ、周囲の大気質を大きく変化させることがわかったそうです。

植物からのコロナ放電で発生するヒドロキシルラジカルヒドロペルオキシルラジカルという2つのラジカルはどちらも負の電荷を帯びており、さまざまな化合物を変質させることで知られています。

特にヒドロキシルラジカルはメタンなどの温室効果ガスと反応するので、メタンの除去に役立ちます。一方で酸素と反応するとオゾンが発生しますが、このオゾンは人間にとって有毒。このように、放電現象によって発生したラジカルによって、大気の成分が大きく変化するというわけです。

2021年8月に発表された研究では、大気中にわずかに存在するヒドロキシルラジカルのおよそ6分の1が雷雨によって発生していると報告されています。しかし、研究チームは、落雷の発生しやすい地域に存在する膨大な数の樹木を考慮すると、植物から発生するコロナは1つ1つが小さくても、全体としては大気質に予測不可能な影響を及ぼすと指摘。大気中のヒドロキシルラジカルの一部は植物から発生したコロナ放電によるものである可能性があると主張しています。


論文筆頭著者のジェナ・ジェンキンス氏は「世界全体で常時1800回の雷雨が発生しており、雷雨が発生しやすい地域にはおよそ2兆本の樹木が生えています。ヒドロキシルラジカルは大気にとって最も重要な研磨剤です。そのため、この物質がどこで作られるかをより正確に把握することで、大気中で起こっていることをより完全に理解できるのです」と述べています。

なお、実験中に研究チームは、植物からコロナ放電が発生した時に紫外線が検出されたと報告しています。

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