世界的に有名な絵画「モナ・リザ」には、「前を通り過ぎる際に、女性がこちらを目で追っているように感じる」という心理的現象が発生する逸話が存在しており、多少の角度の違いが生じても目が合い続けているように感じる心理的効果は「モナ・リザ効果」と呼ばれています。このモナ・リザ効果が、自然界に生きる動物たちの間では生存に関わる重大な意味を持っていることが明らかになりました。
Frontiers | Eyespot configuration and predator approach direction affect the antipredator efficacy of eyespots
https://doi.org/10.3389/fevo.2022.951967
The Mona Lisa effect: How eyespots deter predators that approach from different directions | Max Planck Institute for Chemical Ecology
https://www.ice.mpg.de/429345/PR_Rowland
“Mona Lisa effect” applies to animals too | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2022/10/how-the-mona-lisa-effect-may-help-butterflies-moths-ward-off-predators/
モナ・リザに描かれた女性の顔をじっくり観察すると、目線は斜め方向を向いており、正面を見ていないことが分かります。しかし、モナ・リザをパッと見た際は「女性と目が合っている」と感じるはず。さらに、モナ・リザを右や左から鑑賞しても女性と目が合い続けているように感じます。このように対象が自分の方向を見ていないのに目が合っているように感じる心理的現象は「モナ・リザ効果」と呼ばれており、モナ・リザ効果が発生する理由は「瞳孔が目の中心に描かれているから」とする説が存在しています。
モナ・リザ効果とは別に、ウシを用いた2020年の研究では「ウシのお尻にライオンの絵を描くと、ライオンに捕食されなくなる」いう実験結果が確認されています。ウシの研究以外にも、一部のチョウや魚類が持つ目のような柄は、外敵から身を守る効果があると考えられているなど、「目に似た柄が外敵からの攻撃を防ぐ」という例は多く知られています。
ウシのおしりに「目」を描くとライオンに食べられなくなるという実験結果 – GIGAZINE
イギリスの研究チームは、上記の現象が「模様を目と認識した結果」なのか「派手な模様を認識した結果」なのか検証する実験を行いました。
実験の内容はこんな感じ。以下のような獲物に見立てた3種の「円形と三角形を組み合わせたイラスト」をヒヨコの前に配置し、ヒヨコがイラストに襲いかかるまでの時間を計測しました。
実験の結果、円形が左側に寄っているイラストの場合、ヒヨコは「左側から襲う際に慎重になる」という行動を示し、右側に寄ったイラストでは「右側から襲う際に慎重になる」という行動を示しました。一方で、円形が同心円状に配置されたイラストを襲う際は「全ての方向において、慎重になる」という行動を示しました。
研究チームの一員ではるハンナ・ローランド氏は「円形を同心円状に配置したイラストでは、(モナ・リザのような)部屋のどこにいても目が合うように感じる肖像画と同じように、ヒヨコに対して『どの方向からも目が合っている』という印象を与えたようです。これは、自然界で『目のように見える模様』が発達した理由を示しています」と述べ、一部の動物が持つ目のような模様はモナ・リザ効果が手伝って捕食リスクを有効的に抑えていると結論付けています。
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