奈良県平群町のメガソーラー建設現場。
工事中止をよいことに、その現場を歩くと、単に森林を伐採して造成しただけではない犯罪行為が浮かび上がる。
これが何かわかるだろうか。
まずは全景を紹介すると。
山を削って、ソーラーパネルの設置場所を造成しようとしたのだが、工事申請書の数値が虚偽だったことがバレて工事中止命令が出た。すでに森は伐採済みで、そのまま放置された状態だから、大雨が降るたびに崩れている。
その一角にあるのが、これだ。
この丘の上にある石。これをよく見ると……。かつては森の中だったらしいが、今や剥き出しになっている。
岩には石仏が彫られていたのだ。それを故意に削ったとしか思えない。このアップが冒頭の写真。見た通り、重機の、多分、ショベルカーの爪で掻き取ったと思われる。この石仏の以前の姿を探すと、「生駒の石仏」というサイトにあった。平群の「裏の谷磨崖物地蔵尊立像」というらしい。ちょっとリンク先に飛んで壊される前の石仏を見てほしい。
素朴な、風情のあるお地蔵さんである。実は生駒山にはそこここに石仏がある。街道や古道沿いのほか、森の中で見つかることもある。森を切り開いて家を建てようとしたら、石仏がたくさん出てきたので、そこに建てるのは諦めた(少しずらした別の土地に移した)人も知っている。私も道のないところで石の道標や梵字を刻んだ石を見つけたことがある。
そうした史跡を容赦なくソーラー建設が破壊したのだ。
これが悪質と思えるのは、ソーラーパネルを設置することに何ら関係ないからだ。全体を見回して、この石仏の岩が邪魔になっているようには見えない。仮に邪魔だとしたら、岩ごと動かすか、岩を割るなどして移動させるだろう。盛り土で地形を変える計画もあったようだが、破壊する必要はない。
だがそうした方法ではなく、石仏の部分だけを、ある意味ていねいに掻き取って破壊している。目的は石仏破壊そのものだったのだ。その行為は、メガソーラー建設のために必要な作業とは思えないし、手間をかける意味もないのである。
石仏の保存などで反対運動が起きたら面倒だから、存在そのものを消そうとしたのか。奈良では、どこでも工事を始めて古墳や住居跡など遺跡がすぐ出る。工事が止まると厄介だから、見つけたら壊すか埋めるんだ、と冗談半分本気半分で言われるの。しかし、この石仏に関しては、地元の人なら存在を知っているのだから逆効果だろう。もしかしたら整地を担当した重機のオペレーターがイタズラ気分でやったのかもしれない。いずれにしても文化財の破壊である。
石仏を破壊すると言えば、アフガニスタンのタリバンを思い出すが、業者のレベルの低さを感じる。
これ、もっとも怒るべきなのは、平群町であり地元自治会のはずなのだが、今のところその気配もなし。自治体の文化レベルも問われかねない。
それにしても、伐採跡地のいたるところに伐った木を積んでいる。それが、ちょっと意外なほどていねいなのだ。これは、やはり搬出するつもりだったのだろう。となると、行き先はバイオマス発電所しかないなあ。。。