メイドロボットによる「メイドロボカフェ」を作ることを目的として2018年2月に設立された「MaSiRoプロジェクト」が、2022年10月7日から9日までの3日間、秋葉原駅から徒歩10分の場所にあるレンタルカフェ「カフェ・トリオンプ」でメイドロボットによる給仕実験を行なう。座席数は9。参加者は事前応募による抽選予約制で、3日間合計で全14回、合計102名が体験する予定だ。7日には一部の回がメディアにも公開された。
美少女型ロボット3姉妹で「異能vationプログラム 破壊的な挑戦」にも採択
「MaSiRo」とは「Maid Apprentice Substantializing Ideal Robot」の略。「MaSiRoプロジェクト」はもともと「A_say」こと山上紘世氏の個人プロジェクトとして始まった。現在のプロジェクトメンバーはおおよそ8名程度。趣味のプロジェクトなので、人数は増えたり減ったりしているとのこと。これまでに2018年には人と手を繋いで一緒に移動できる「手繋ぎロボット・ましろ」のほか、2021年にはクラウドファンディングで資金を募り、300%を達成。機能向上・複数台の連携を強化などを目的に「ちろ」と「ちや」、合わせて3体、「3姉妹」のロボットを作ってきた。
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2021年11月には総務省主催の「異能vationプログラム 破壊的な挑戦」部門に採択される。プロジェクトのファンによる他薦だった。2021年11月から2022年11月の1年間で「失敗を恐れず自身の立てた目標に向けた挑戦」を支援するもので、「MaSiRoプロジェクト」では「本物の美少女型ロボットとふれあえるメイドロボカフェ プロトタイプの実現」を目標として掲げた。
具体的には「手繋ぎロボット・ましろ」を、物を運んで給仕ができる「メイドロボット」へと成長させるために、カフェ空間での自律移動、コーヒーハンドリング、かわいい仕草、複数ロボット同士の掛け合いなどの機能を開発。そして最終的に1年間の開発の成果として、ロボットによる給仕実験を行なうというもの。
メイドロボットと、ロボットが働きやすい環境を一体として作ることで、「かわいいメイドロボットたちがコーヒーを淹れて、持ってきて、触れ合える」体験の実験場として「メイドロボカフェ・プロトタイプ」の実現を目指している。
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ロボットが活躍でき、求められる場所としての「メイドロボカフェ」
ロボットの開発は、A_say氏の自宅アパートで行なっている。A_say氏は「ロボットオタク」であり「2次元オタク」だ。ロボットの社会普及はなかなか進んでいない。いっぽうアニメファンとしてはキャラに画面から出てきてもらいたい。そこで、ロボットでしか生み出せない価値を皆に提供するためには、まるでアニメから抜け出てきたような個性豊かなメイドロボットが働いて、その「かわいさ」によって、人間では実現できない価値を提供するメイドロボカフ ェを作るべきだと考えて、このプロジェクトに取り組んでいる。
「手繋ぎロボット・ましろ」は当初は段ボール姿から始まって「アニメ顔キグルミ」技術や、液晶の目などを徐々に搭載することで、今日の姿になっている。「ましろ」はデプスカメラで顔や周囲の物体を認識し、1,440×2,880ドットの液晶の瞳で表現を行なうことができる。
移動方式は車輪(差動2輪)。車輪は脚と比較すると安定してローコストであり、機構はロングスカートの下に隠せるからだ。この機構でカフェの中を自律走行する。なおロボットは常にゆるやかに上下に動いていて、この動きも女性らしい動きになるように既存データを使うなどして工夫しているとのこと。
「ましろ」は喋らない。この点もこだわりの1つで、現段階ではあくまで視線や目線のよる非言語コミュニケーションとしている。自律での会話は現状では成り立ちにくく失望させてしまうと考えて、会話させないことにしている。また、いわゆる「中の人」はいない。遠隔操作する「中の人」が入れ替わってしまうと、そのロボットならではの個性やキャラクター性も失われてしまうからだ。
そのほか、静電容量センサーや圧力センサー、把持センサー、2DLiDARなどを備え、腕は7軸、手は2軸。このほか首や腰に各々3軸あり、モーター数は全部で29。制御や自律移動にはSTM32マイコンとIntelのNUCを用いている。ちなみに「ちろ」と「ちや」の腕は左右対称になっている。サイズは海外にも持って行きやすいように小型化しているとのこと。
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A_say氏はアニメの最終回でがっかりしてしまったことがあるそうで、最終回を迎えない「終わらない物語」を作りたい、「生きた美少女型ロボット」を作りたいと語る。人の役に立って必要とされ続けること、愛され続けることが「生きている」ということだと考えて、そのロボットたちが活躍しやすい場として「メイドロボカフェ」を提唱している。
現在は、まずは限られた環境で決められた作業をこなせること、そして誰もがその気になれば会いに来られるかたりを目指している。役に立てる実用的なタスクをこなす技術と、人に愛されるための表現や環境との相互作用を融合させることを目指す。
本格的なロボットカフェ実現を目指す
今回のカフェはあくまでプロトタイプだ。今後、プロトタイプでの検証を経て、本格的なロボットカフェ実現を目指す。「人の役に立てる技術」と「愛される技術」の両方を開発・融合させることを狙っている。A_say氏は「まだまだお店を開ける段階ではない。3、4年くらいは時間がかかりそう。ロボットの速度も遅いので採算が取れるようにするにはどうすればいいか、今後検証していきたい」と語る。今後、数カ月に1回、最低でも1年に一回はロボットによるおもてなしをする機会を設けたいとのことだった。
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