こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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高級婦人アパレルのエムエムラフルアー(M.M. LaFleur)は9月下旬、ニューヨーク市に新しい小売店舗を開設した。同社は実店舗での展開が今後も継続し、顧客ベースの拡大につながることを期待している。
創設者でCEOを務めるサラ・ラフルアー氏は、創業から10年になる同社において、現在は売上の90%をeコマースが占めているが、最終的には実店舗の小売チャネルがeコマースと同程度の規模になることを望んでいると、米モダンリテールに語った。2023年にはニューヨークにもう1店舗を開設する予定で、そのほかにも主要都市で3〜4店舗を開く計画だ。
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小売売上の8割以上が対面によるもの
同社は2016年から、ニューヨークやワシントンDCなどの都市でショールームを運営しており、顧客は注文をする前に、サイズ測定やスタイリングを確認するためのアポイントメントを取ることができる。また、ほかの主要都市でも、シーズンごとにポップアップ店舗を開催してきた。しかし、アッパーイーストサイドのなかでも小売店が集中するマディソンアベニューに地上階の新店舗を開設したことで、顧客は展示ラックから商品をそのまま購入できるようになった。
「我々が本当に成長しようとするとき、商品に触れ、感じてもらうことが、新しい顧客にブランドを紹介するうえで欠かせないと考えた」と同氏は述べている。
米国国勢調査局の数値では、小売の総売上高に占めるeコマースの割合は14.5%で、買い物客は依然として対面で買い物をすることが多いと示されている。Covid以前の数値に回復することをめざすエムエムラフルアーにとって、対面での買い物は新しい顧客を勧誘する方法となり得るものだ。ラフルアー氏によれば、同社の収益は2020年に半分に低下した。回復は遅かったが着実に進んでおり、2021年には収益が30%増加し、さらに2022年はこれまでに29%増加した。目標は今年後半にCovid前の水準に復帰することだと、同氏は語る。
ラフルアー氏は、すでに開設しているショールームが成功し、パンデミック前に約300万ドル(約4億3500万円)を売り上げたことが、店舗での販売がブランドにとって次のステップとして有効であることを証明した。しかし、この拡大計画は、10年にわたるデジタル直販の経験から得た教訓も反映されている。同氏は、同ブランドが5、6年前にデジタルマーケティングに「あまりに多くの資金を」投入したと語る。現在は、対面形式でブランドを顧客に紹介することがより有効だと考えている。
同氏は次のように述べている。「資金の使い方や配分を考えたとき、小売により多くのマーケティング資金を使うことに決めた。小売は強力な広告チャネルだと思う」。
高価格帯のD2Cブランド
550平方フィート(約51.1平方メートル)の店舗は、豪華なカウチやオットマンが置かれ、買い物客が「足を置くことができる」快適な環境をめざしている。店舗のオープンを宣伝するため、1週間のアクティビティを開催し、市内をめぐる花柄のラッピングバスや、ニューヨークシティバレー団(New York City Ballet)のタイラー・ペック氏によるダンスパフォーマンス、さらに無料での商品配布などを行った。
しかし、実店舗という物理的なスペースを所有することは、運用方法を習得するための時間を必要とする。同氏は店舗の正確なリース期間を明かしていないが、標準的な10年間契約よりも前に解約できる可能性があるリース契約を締結するために、何度もトライしたと述べている。特に、Covid-19によるロックダウンの後の不安定な時期を経験した後は、こうした柔軟な契約が重要な考慮事項だったと、同氏は語っている。
「当社のようなブランドが求めていることと、大家が求めていることとのあいだには、多少の分断を感じている」と同氏は述べている。
D2Cマーケティング代理店のベラルディウォンのプレジデントを務めるポリー・ウォン氏は、ハイエンドのアパレルブランドは、顧客獲得のために実店舗への展開をはじめる可能性があると語る。買い物客にとって、高価格帯の商品を試着することが重要であると同時に、対面で買い物しない顧客に対してブランドへの信頼を高めるのに役立つと、ウォン氏は述べている。
「D2Cブランドのなかでも、特に高価格帯のファッションブランドは、特に不動産価値の高いAマーケットにおいて、1年に数店舗を慎重に開設しているのを目にしている」と同氏は述べる。
店舗は「ブランドの拡張部分」
ここ数カ月における別の例として、フランシスバレンタイン(Frances Valentine)が今年中に、アトランタとアラバマのバーミンガムに、6番目と7番目の店舗の開設を計画している。ベーシックなアパレルブランドのバックメイソン(Buck Mason)は今年、東海岸と南部を中心に、6店舗の開設を予定しており、小売でのプレゼンスを拡大する計画だ。オールバーズ(Allbirds)やブオリ(Vuori)などほかのブランドは、今後数年間に100を超える店舗を運用することを計画している。全体として、D2Cブランドはさまざまな都市にも展開しつつあり、オースティンのサウスコングレスアベニュー(South Congress Avenue)やナッシュビルの12サウス(12 South)などの高級商店街に群れを成し、各ブランドは来店者の動向についてのデータに基づいて市場を注視している。
また、ここ数カ月の例では、フランシス・バレンタインが、今年、アトランタとアラバマ州バーミンガムに6店舗目と7店舗目をオープンする予定です。ベーシックのアパレルブランドBuck Masonは、東海岸と南部の地域を中心に、今年さらに6店舗の開店を計画し、小売のプレゼンスを拡大する予定です。また、AllbirdsやVuoriなどのブランドは、今後数年間で100店舗以上を展開する計画です。全体として、DTCブランドはさまざまな都市にも進出しており、オースティンのサウスコングレスアベニューやナッシュビルの12サウスといった高級ショッピング街に集まっているのを見かけることができ、ブランドは顧客の足跡に関するデータに基づいて市場を検討しています。
キングリテールソリューションズ(King Retail Solutions)でビジネス開発ディレクターを務めるローランド・フィゲレード氏は、実店舗の開設がすべてのD2Cブランドに有意義なわけではないとしながらも、アパレルにおいては特に有益だとしている。店舗は「ブランドの拡張部分」になり、たとえば現地でのカスタマイズや、特別なイベント、または季節限定コレクションの事前公開など、顧客とエンゲージメントを築ける新たな体験を提供できると、同氏は語っている。
「これらの種類のブランドは、顧客との対面での結び付きを増やしていく必要がある」と、同氏は述べている。
対面だからわかる価値
エムエムラフルアーの新しい空間では、伸縮性のあるニットパンツやピマコットンのワンピースなど多用性を念頭に置いた商品を揃えた「パワーカジュアル」ラインを中心に販売する。ラフルアー氏は、パンデミックによるロックダウンの前は、このラインはニッチな分野だったと語る。しかしロックダウン以降は、女性たちが一日中着ていられる衣服を探し求めるようになったことで、今では売上の大部分を占めるようになった。
同ブランドの商品は全体的に高価だが、対面で商品を紹介された買い物客は、オンラインで商品を知る買い物客よりも、早くブランドを気に入ってくれるかもしれないと、同氏は説明している。
同氏は、「当社が販売する衣服は控えめで、落ち着いた色味のものが多い。ほとんどの顧客は、実際に着てみるまでこれらの衣服を十分に評価しないだろうが、着てみれば当社の商品には値段相応の価値があることを理解するだろう」と話す。「こうした事実は、オンラインよりも対面の方がはるかに伝えやすい」。
[原文:With a new NYC storefront, M.M. LaFleur changes its brick-and-mortar strategy]
MELISSA DANIELS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via M.M. LaFleur