寿司というものがある。酢飯を一口サイズに握り、ワサビをつけ、そこに魚を乗っける。それが寿司だ。米、ワサビ、魚という組み合わせがとてつもない美味しさを生み出す。魚の部分はいろいろな魚が使われ、それが漬けになっていたり、炙られていたりなど様々だ。
東京の八丈島の郷土料理に「島寿司」というものがある。一番の特徴はワサビを使わない点ではないだろうか。ワサビの代わりに「カラシ」を使う。それがとても美味しいので自分で作ってみようと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)
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島寿司を食べる
寿司にもいろいろなものがあるけれど、オーソドックスなのはシャリ、ワサビ、ネタ(魚)ということになる。もちろんワサビ抜きのものもあるけれど、ワサビの代わりに別のものを入れるという発想は私にはなかった。
しかし、日本は広い。八丈島の郷土料理「島寿司」では、寿司という私の凝り固まった考えを自由にしてくれた。まず基本的にネタの部分は必ず漬けとなっている。これは八丈島が暑いことに関係しているかは分からないけれど、日持ちさせる工夫と思われる。
もちろん普通の寿司にも「漬け」はあるのだけれど、島寿司の最大の特徴はワサビではなく、カラシを使う点だろう。一般の寿司には見ることのできない特徴だ。ネタを持ち上げるとカラシが顔を出す。
普通の寿司ではネタを持ち上げると緑色なのだけれど、島寿司では黄色。食べるとわかるのだけれど、これが非常に美味しい。カラシの辛味は意外に寿司に合う。豚の角煮にカラシをつけるように、漬けにより甘くなったネタにはカラシが合うのだ。
八丈島のスーパーに行くと島寿司が並んでいる。普通の寿司も並んでいるけれど、島寿司の方が多く並んでいるのだ。使う魚はトビウオやメダイなど様々だけれど、江戸前寿司ではあまり見ないものが多い印象だ。
食材を釣る
島寿司は非常に美味しかった。八丈島ではスーパーでも普通に買えるし、飲食店でも気軽に食べることができる。しかし、せっかく八丈島に来ているので、この島寿司を自分で作ってみたいと思う。
魚の調達から島寿司作りは始まる。八丈島は海なのだ。海に囲まれているのだ。その辺に魚がいるはずなのだ。簡単に釣れるはずだ。釣れないわけがない。だって海をのぞくと魚が泳いでいるのがわかるもの。
防波堤から釣りをするので、大きな魚が釣れた場合はすくいあげなければならない。そのために大きな網も買った。このために買った。小さい魚と大きな魚、大きな魚がいいに決まっているので大きな網を買ったのだ。もう釣る気しかないのだ。
驚いた。めちゃくちゃ驚いた。自分で書くのはあれなのだけれど、こういう場合、大抵釣れないのだ。釣れないオチでいろいろとスケジュールを組んでいた。前日に魚を買える場所も探していた。それなのに釣れてしまった。
ちょっと詳しく書くと、リールにラインを新しく巻いたばかりだったので、ちょっと湿らそうと軽く投げた。ラインの先にはミノーというルアーが付いている。投げてしばらくリールを巻いていると急に竿がしなり、フッキングした結果、釣れた。
釣れると思っていないから、かなり焦った。釣れないと思いつつ釣りをしていたので起きたらお昼くらい驚いたわけだ。八丈島の海は豊かなのだろう。釣りが上手いわけではない私があっさり釣ったから。釣り場に着いて10分で釣りは終了した。
島寿司を作る
釣れた魚を持って島内のデイキャンプ場に移動した。事前に連絡しておけば無料で使うことができる。とてもありがたいことだ。八丈島にはそのようなキャンプ場が多い。八丈島は島寿司を作るには最適な場所なのだ。
釣れた魚はカッポレという魚だ。アジ科の暖海域に生息する魚だ。当然江戸前寿司では見かけない魚。島寿司で使う魚もそういう魚が多いのでちょうどいいかもしれない。またカッポレは美味とのこと。楽しみだ。
釣れると思っていないので、安い包丁しかなく、これが非常にキレが悪く、3枚におろすのになかなか苦労した。またカッポレ自身も脂があるようで、すぐに包丁がベタベタになり、さらにキレが悪くなる。
綺麗な色をしている。間違いなく美味しいだろう。実は我慢できずに少し食べたのだけれど、脂が乗っていてクセもなく非常に美味しかった。このままでも十分に美味しい魚だ。これを漬けにしなければならない。
魚は新鮮な方が美味しいという考え方もあるし、少し寝かして熟成させた方が美味しいという考え方もある。私はどちらも美味しいと思うので、今回は新鮮な方だ。八丈島にいる時間も限られているので、熟成させる時間はそもそもないしね。
ご飯は炊かないのか、と思うかもしれない。せっかくメスティンもあるのに。私もそう思うのだけれど、メスティンでは残ったカッポレを醤油などで甘辛く煮ている。煮魚も美味しいから。
ここからがある意味本番。魚が釣れなくて右往左往するのが本番だと思っていたけれど、1投目で釣れちゃったからカラシを本番ということにする。スーパーで練りカラシを買ってきた。これをシャリにつけて、その上にカッポレの漬けを乗せる。さすれば完成だ。
島寿司は美味い
島寿司が完成した。せっかくなので漬けにしていない寿司も作った。こちらも当然カラシを使っている。煮魚も完成していた。甘ったるいいい匂いがしている。まさかこんなにスムーズに島寿司を作れると思っていなかった。
美味しい、とても美味しい。ワサビとは異なりカラシの辛味が少し甘い漬けとなった魚によく合う。もちろん漬けではない方の寿司にもカラシは悪くない。漬けの方が美味しくは感じたけど。ワサビの持つ爽やかさはないけれど、カラシにより深みのようなものが生まれている。
煮魚も美味しかった。カッポレが脂の乗った時期で特別に美味しかったのかもしれない。カラシをつけて煮魚も食べてみたけれど美味しかった。考えてみれば、ワサビもカラシも「アブラナ科」の植物だ。ある意味、基本的には一緒なのかもしれない。寿司はどちらもありだ。
驚きしかない
島寿司が美味しいのは当然として、釣れたことに今も驚いている。それだけ八丈島の海は豊かなのだろう。レンタカーも魚釣り専用というものもあった。もちろん釣りなんてしなくて、海を見ているだけでもいい。八丈島の海は美しすぎるのだ。東京から飛行機で55分なのに。