動物たちの「移動のしかた」って、けっこう奥が深い。
ゾウは子どもを守るために円陣を組み、クジラは泡で輪っかをつくって魚を追い込む。
ではヒヒは…?
南アフリカに生息するチャクマヒヒたちは、まるで集団登校のように一列になって移動します。
この行進は「プログレッション(progression)」と呼ばれていて、ずっとナゾだったんです。なぜ彼らは、あえてまっすぐな縦列で歩くの?
IFLSがその答えを伝えました。
ヒントは「仲のよさ」
スウォンジー大学の研究チームが、36日間で78回ものプログレッションを観察した結果、驚くべきことが判明しました。
ヒヒたちの並び方は、てっきり「敵から身を守るため」とか「リーダーに従っている」と思われていました。が、実際にはそうではなく、誰と仲がいいとか、群れのなかでの地位だったんです。
たとえば、群れのなかで地位が高くて社交的なヒヒほど、列の中央に位置しやすい。一方で、あまり仲間のいない下位のヒヒは、先頭か最後尾にいることが多いそう。
要するに「仲よし同士で一緒に歩きたい」という気持ちが、あの整然とした行列を生み出していたんです。
なんだか学生時代の自分を思い出すな…。
先頭にいるのがリーダーとは限らない
もうひとつおもしろいのは、ヒヒたちの行列は「誰かが指示を出して統率している」わけじゃないということ。たとえば寝床に戻る夕方の時間帯、彼らはおそらく目的地をすでに全員が知っています。
なので、前を歩いているヒヒがリーダーというわけではなく、ただ単に前に出ているだけ。
このあたり、人間社会の「なんとなく流れに乗ってる」みたいな感じとちょっと似てるかもしれませんね。
ヒヒだって仲良しさんと歩きたい
この研究は軽く聞こえるかもしれませんが、動物の社会性や行動進化を考えるうえで非常に重要な示唆を含んでいます。
「移動」というシンプルな行動のなかにも、友情、ヒエラルキー、個体間の信頼関係がしっかりと刻み込まれているんですね。
私たちも、学校の帰り道、なんとなくいつも一緒に歩いてた友だちがいたように。
ヒヒたちもまた、仲良しさんと歩きたいだけなのかもしれません。
Source: IFLS