映画のAI使用をめぐり、アカデミー賞が新たな情報開示の義務化を検討中

「製作、監督、脚本、すべてAI」みたいな映画…くる?

ブラディ・コーベット監督の『ブルータリスト』は、その壮大なスケールと印象的な映像美、そして長尺の上映時間(3時間30分超)で観客を魅了していますが、その一方で俳優の声を調整するためにAIを使用していた点が問題視されています。

今年の授賞式シーズンに公開された他の映画でもAIの使用が次々と明るみに出ていて、アカデミーは「このままじゃマズい」とばかりに、新たな開示ルールの導入を検討しているみたいですよ。

アカデミーがAIに関する情報開示の義務化を検討

業界誌Varietyによると、近年の映画では機械学習ツールが広く使用されていること、そしてアカデミーがこれまで任意だったAI使用に関する情報開示の義務化を検討していることを次のように伝えています。

「アカデミーは現在、AIの使用について任意の開示フォームを提供していますが、4月に公表される予定の2026年アカデミー賞規定での開示の義務化を視野に入れ、各部門におけるAIの利用状況について、現在理事会と執行部が調査中です」

発端は『ブルータリスト』

『ブルータリスト』は、ナチスの強制収容所を生き延びたハンガリー人建築家ラースロー・トート(架空の人物)が、第2次世界大戦終結後にアメリカに渡り、裕福な実業家のビジネスに巻き込まれていく姿を描いた作品です。

で、10部門でオスカーにノミネートされた直後にAIツールを使用しているというニュースが浮上。この論争は、映画の編集者であるダーヴィド・ヤンチョ氏がRedShark Newsに語ったインタビュー記事によってさらに拍車がかかりました。

ヤンチョ氏は、製作側がウクライナのソフトウェア会社Respeecherを雇い、映画俳優たちのセリフが本物のハンガリー訛りに聞こえるように仕上げたと説明しました。また、映画に登場する建築設計図の一部を作成するためにAIが使用されたようです。

ヤンチョ氏はAI使用の是非について以下のように述べています。

「AIについて話すと業界ではすぐに物議を醸しますが、本来そうあるべきではありません。AIが提供するツールについて、もっとオープンに議論すべきです。この映画でAIを使用した部分についても、これまでになかった技術ではありません。ただ単にプロセスが大幅に高速化するだけです。予算や時間が不足したために撮影できなかった細かい部分をつくるためにAIを活用したのです」

AIはハリウッドにとって頭痛の種になっていて、業界はAIツールを禁止すべきか、それとも活用すべきか、判断に迷っているようです。

そんな中、OpenAIは昨年、動画生成AIのSoraを売り込むべくハリウッドに進出しています。また、マーティン・スコセッシ監督の『アイリッシュマン』でも、回想シーンで俳優を若返らせるためにディープフェイクのような技術を使おうとしたことが話題になりました。

ただ、映画製作の現場に新しい自動化技術がじわじわ浸透しているものの、観客がそれを求めている証拠はほとんどないようです。


いっそのことAIを使っている部分を情報公開して、オスカーに「ベストAI加工賞」部門をつくっちゃえばいいのでは?

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