「犬が草を食べるのは胃腸の調子が悪いからではない」と専門家、犬はなぜ草を食べたがるのか?

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犬を飼ったことがある人の中には、散歩中の愛犬が道ばたの草を食べ始める場面に遭遇したことがある人も多いはず。肉食を基本とする犬が草を食べる理由や、その際に注意すべき点について、オーストラリア・アデレード大学獣医学部のスーザン・ヘイゼル氏とジョシュア・ゾアネッティ氏が解説しました。

Why does my dog eat grass? And when is it not safe for them?
https://theconversation.com/why-does-my-dog-eat-grass-and-when-is-it-not-safe-for-them-205658

犬が草を食べるのはよく見られる行動で、2008年に発表された研究では犬の飼い主の80%が「愛犬が定期的に芝生をかじっている」と報告しています。また、イエローストーン国立公園に生息するオオカミを対象とした2006年の研究では、オオカミの排泄物の74%から草を中心とした植物が見つかりました。つまり、草を食べる犬の習性は祖先であるオオカミが野生で暮らしていた頃から受け継がれてきた可能性が高いことになります。

「犬が草を食べるのはおなかの調子が悪くて吐きたい時」と説明されることがありますが、過去の研究からその可能性は低いとヘイゼル氏らは考えています。例えば、12頭の犬に1日3回6日間草を食べさせた2007年の研究では、嘔吐した犬はほとんどいなかったとのこと。

by Kory Seay

また、研究に参加した犬はすべて健康で胃腸には寄生虫もいませんでした。このことから、「犬が催吐剤や虫下しの代わりに草を食べているという説は否定されており、ほとんどの犬にとって草を食べることは問題行動ではなく病気を示唆するものでもない」と論文の著者は記しています。

この研究ではほかにも、犬がまだ食事をしていない時、つまりおなかが減っている時ほど草を食べる可能性が高く、逆に満腹時は草を食べる可能性が低くなることがわかりました。

原則として肉を食べて生きる犬がわざわざ草を食べたがる理由が気になりますが、ヘイゼル氏らによると「単純に好きだからかもしれません」とのこと。犬が退屈な時や暇な時に草をかじるのが楽しい場合もあれば、草が好物なことも考えられます。また、地面から草をむしり取るのが面白いという場合や、普段とは違うものを口にしたい場合もあるかもしれないと、ヘイゼル氏らは推測しています。


前述の研究から、犬が草を食べているからといって体調が悪いわけではないことがわかっていますが、犬に草を食べさせる際に注意しなければならないことがいくつかあります。例えば、隣家の芝生などは勝手にかじったら迷惑な場合があるほか、より重要なことに公園や広場などの芝生には除草剤がまかれている可能性があります。

2004年に発表された研究では、除草剤への暴露と犬の膀胱(ぼうこう)がんとの間には関連性があることが示されているため、ヘイゼル氏らは「自宅の庭に農薬を散布する際には犬やおもちゃ、餌入れや水飲み用のボウルなどは撤去してください。そして、犬を庭に入れる時は農薬のパッケージに書かれた乾燥時間を確認して、薬剤が完全に乾いていることを確かめてからにしましょう」と呼びかけました。

特に、土に浸透させる粒状タイプの殺虫剤や肥料の場合は時間がかかるため、24時間以上待つ必要があるものもあります。そのため、愛犬の健康を考えてリスクを減らしたい場合は、手作業で除草するのも検討すべきとのこと。


また、植物の中には犬にとって有害なものもあり、例えばオレガノやゲッケイジュの葉などを犬が食べてしまうと、吐いたり下痢を起こしたりしてしまう場合もあります。

こうした草や農薬に気をつけさえすれば、愛犬が草を食べても問題ないことから、ヘイゼル氏らは「犬が散歩の途中で草を食べ始めても、除草剤が散布されていない限り心配は要りませんし、たまに吐くぐらいなら問題ありません。ただ、吐き戻しがあまりにひどい場合や下痢がある場合は、獣医師に相談するといいでしょう」と述べました。

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