Q&AサイトのStack Overflowが「AI投稿OK」に方針転換して物議、抗議のためモデレーターら600人以上が大規模ストライキに署名

GIGAZINE



情報技術やプログラミング技術に関するナレッジコミュニティ・Stack Overflowで活動するボランティアのモデレーターらが2023年6月5日に、Stack Overflowを運営するStack Exchangeに対する公開書簡を発表し、コミュニティの管理や保守に関するボランティア業務を一時停止することを表明しました。モデレーターらは書簡の中で、AIが生成した投稿の即時削除を原則禁止とした新しいポリシーを撤回するよう求めています。

Dear Stack Overflow, Inc.
https://openletter.mousetail.nl/

Stack Overflowはこれまで、ChatGPTを始めとするAIが生成した投稿を禁止する方針をとっており、モデレーターがそのような投稿を発見した際は即座に削除したり、場合によっては通常のプロセスを省略して投稿者のアカウントを即刻凍結したりできるようになっていました。

この措置の背景には、AIが生成した投稿には一見すると正しいが実際には誤った内容、いわゆる「幻覚」が含まれており、コーディングに習熟していない一般ユーザーが適切に見分けることが難しいため、投票システムなどの従来の機能では不正確な投稿の氾濫に対応できないという懸念があります。

会話AI「ChatGPT」の回答の投稿がコーディングQ&AサイトのStack Overflowで一時的に禁止される – GIGAZINE


しかし、アメリカやイギリスに住む多くのモデレーターにとって祝日だった5月29日、非公開のモデレーター会議でAI生成コンテンツの投稿を一律削除する方針に疑問を呈する意見が投稿されたとのこと。

翌30日に内容が一部変更された状態でStack Overflowの運営方針などについて議論するサイト・Meta Stack Exchangeに投稿された書き込みには、「AI生成コンテンツの検出は不正確で誤検知の可能性が非常に高い」との主張が含まれており、その中で投稿者はAIが生成したことのみをもって投稿を削除することを停止するよう求めています。

しかも、この投稿には「mod-agreement-policy」というタグが付与されました。これにより、AI生成コンテンツを削除しない方針が合意済みとして扱われ、拘束力のあるモデレーターポリシーとなってしまいました。

この一件に対し、ストライキを決行したモデレーターはMeta Stack Exchangeへの投稿で、「新ポリシーは、確立されたコミュニティのコンセンサスやこれまでのコンテンツモデレーターの支援を無視しており、コミュニティのメンバーとは一切議論されておらず、モデレーターやユーザーに誤解を与えるような形で提示され、審査されておらず審査することも不可能なデータ分析から得られた根拠のない主張に基づくものです」「ユーザー生成コンテンツに見せかけたAI生成コンテンツを許すことは、やがてサイトの価値をゼロにまでおとしめることになると確信しています」と懸念を表明しています。


問題視されているのは、AI生成コンテンツだけではありません。Stack Exchangeはこれまでにも、モデレーターらが反対する変更を繰り返し強行しており、改善を求めてもずさんな対応ばかりだったとモデレーターらは主張しています。例えば、モデレーターやキュレーターにとって最も必要なツールであるチャットは非常に古い機能であるため、コミュニティは再三にわたり改善を要求してきましたが、何年も放置されているとのこと。

こうした懸念や運営会社への不信感から、モデレーターらは公開書簡に「適切なルートを通じて変化をもたらそうとした私たちの努力と危惧は、あらゆる場面で無視されてきました。今、私たちは最後の手段として、10年以上にわたりボランティアの努力を注ぎ込んできたプラットフォームへの献身を打ち切ります」と記して、ストライキの決行を宣言しました。

ストライキの対象となる具体的な活動は以下の通り。
・問題のある投稿にフラグを立てて処理する。
・スパム対策ボット「SmokeDetector」の実行。
・投稿の閉鎖や、閉鎖に向けた投票。
・投稿の削除や、削除に向けた投票。
・レビューキューに追加されているさまざまなタスクのレビュー。
・盗用、低品質な回答、失礼なコメントの検出など、モデレーション支援のために作られたさまざまなボットの実行。

モデレーターやキュレーターではない一般ユーザーも、投稿に投票したりコメントしたりするのを控えることでストライキに参加できます。ただし、あくまで穏健なストライキを目指しているため、意図的にAI生成コンテンツを投稿したり破壊行為を行ったりすることは厳に慎むように呼びかけられています。

ストライキの期間は無期限で、「Stack Exchangeがモデレーターの懸念にある程度対処できるような形で問題のポリシー変更を撤回し、AIにより生成された回答への対応策をモデレーターが効果的に施行できるようになるまで」とされています。

書簡には、モデレーターや一般ユーザーを含め、記事作成時点で600人以上の署名が集まっていました。


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