不安神経症の発症リスクや現在の重症度・最も効果的な治療法を客観的に判断するバイオマーカーを調査する血液検査が開発される

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過度なストレスや疲れ、強い不安や恐怖の感情を抱くことで、精神面の不調だけでなく身体面にも支障をきたす症状が「不安神経症」です。インディアナポリス大学のアレクサンダー・ニクレスク氏らの研究チームが、不安神経症を発症するリスクや現在の不安の重症度、不安を最もよく治療する可能性が高い治療法を客観的に判断することができる血液検査の開発を行いました。

Towards precision medicine for anxiety disorders: objective assessment, risk prediction, pharmacogenomics, and repurposed drugs | Molecular Psychiatry
https://doi.org/10.1038/s41380-023-01998-0


IU researchers develop blood test for anxiety
https://medicine.iu.edu/news/2023/03/blood-test-for-anxiety


New Blood Test Developed for Anxiety | Technology Networks
https://www.technologynetworks.com/diagnostics/news/new-blood-test-developed-for-anxiety-370924

ワシントン大学医学部保健指標評価研究所(IHME)の調査では、世界中で推定7億9200万人がメンタルヘルスに障害を抱えて生活しており、約2億8400万人が不安障害や恐怖症、PTSDなどの症状で苦しんでいるとされています。ニクレスク氏は「現代では多くの患者が不安神経症に苦しんでおり、日常生活に支障をきたす可能性があります」と述べています。

その一方でニクレスク氏は、「現在の不安神経症に対する医師のアプローチは、薬物治療認知行動療法を行うことですが、投与される一部の薬物には中毒性があることが問題視されています。そのため、より効果的で中毒性のない選択肢となり得る既存の薬品と患者とを結び付けるために血液検査によるアプローチを開発しました」と報告しています。

研究チームは「不安神経症患者と健康な個人との血中RNA変化の調査」「不安神経症を示す候補となるバイオマーカーの優先順位付け」「バイオマーカーの検証」「臨床的な有用性についてバイオマーカーをテスト」という4段階のアプローチを経て不安神経症に関する血液検査の開発を行いました。

血液検査の開発にあたって研究チームは、インディアナポリス医療センターに入院している患者に対して定期的な調査を行うとともに、血液検査を行い、バイオマーカーの検証を行いました。さらに研究チームは主要な精神疾患を持つ男性と女性患者の血液中の遺伝子における性差を確認し、縦断研究を行って不安神経症を発症しやすい遺伝子のバイオマーカーの発見に取り組みました。


臨床的に重度の不安神経症と診断された患者に対して行った調査の結果、エストラジオールピレンペロンロペラミドなどの薬品が各個人のバイオマーカーに対してどのような効果を示すのか特定することに成功しました。

ニクレスク氏は、血液検査によるアプローチについて「不安神経症を治療するためには、薬物治療のほか、患者のライフスタイルを変化させるなど、さまざまな方法があります。しかし、個人の不安の重症度や将来的なリスク、そして個々人に合った治療のオプションを知ることができる、血液検査のような客観的な判断基準は人々の治療の上で非常に強力です」と述べています。

また、健康状態を示すバイオマーカーは時間とともに変化する可能性があり、ニクレスク氏は「血液検査によるテストは、患者が将来的により高いレベルの不安神経症を発症するリスクと、ホルモン量の変化などの要因が不安神経症にどのように影響するかを評価することに役立ちます」と報告しました。

加えてニクレスク氏は、不安症について適切な診断が行われない結果、パニック発作を起こしたにもかかわらず心臓発作だと誤認して緊急治療室に運び込まれる人がいることを指摘し、「血液検査によって不安神経症を早期に知ることができれば、患者の苦痛をできるだけ取り除き、患者個人に合った適切な治療を施せるようになることが期待できます」と話しました。


研究チームの目標は、不安神経症の発症理由が生物学的な理由であるか、外部の薬品によって引き起こされているかに関係なく、不安神経症を示すバイオマーカーを見つけることです。

さらにニクレスク氏によると、不安神経症に対する血液検査は、これまでにニクレスク氏らの研究チームが開発したうつ病や双極性障害PTSDに対する血液検査と組み合わせて検査を行うことが可能で、患者の現在のメンタルヘルスと、将来のメンタルヘルスに対する懸念をより包括的に把握できるとのこと。

また、不安神経症などの研究者は、これらの血液検査を使用して、個々のバイオマーカーをターゲットにした新たな不安神経症の治療法を開発することも可能です。


研究チームによるこの血液検査は、アメリカのインディアナ州を拠点とする新興企業と共同でさらなる開発が進められています。

ニクレスク氏は「私たち研究チームの目標は、1本の血液採取用チューブを使用するだけで、患者とその担当医に包括的なメンタルヘルスに関するレポートを提供できるようにすることです」と述べています。

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