リテールメディアの台頭が脅威に:メタとGoogle、 AI を活用した新広告サービスを発表

DIGIDAY

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テック大手各社が、小売広告費のシェア拡大に乗り出している。その際、彼らは、業界で乱発されているバズワード「AI(人工知能)」を使ったより新しい広告ソリューションを提供している。

AIを活用した新広告サービス

メタ(Meta) は5月11日木曜日、広告主向けにAI(人工知能)を活用した新しい広告のアップデートを多数発表した。広告主が、「テキストのバリエーション」「背景の生成」「画像の切り出し」といった小さな変更を自動的に適用できるよう、AIを活用した「クリエイティブ標準機能強化」からなる、いわゆるAIサンドボックスを初公開した。これらのツールは、ブランドがクリエイティブ資産の再利用に費やす時間やリソースを削減するのに役立つと同社は主張している。メタは、少数の広告主を対象にAIサンドボックスをテストしており、7月からこれらの機能をより多くの広告主に段階的に提供する予定であるという。

メタはまた、過去にD2Cブランドが実施した広告のコンバージョンを向上させた「Advantage+」ショッピング・キャンペーンの新しいAI強化機能を発表した。新しいAI機能のひとつは、広告主であるブランドが、メタ広告マネージャ(Ads Manager)を通じて、メタ上の通常の広告をAdvantage+ショッピングキャンペーンに複製できるようにするものだ。また、ブランドが顧客デモのような動画コンテンツをアプリ群全体にアップロードすることができる「カタログ広告」と呼ばれる新しいクリエイティブフォーマットをASCでテストしているという。メタは、AIと機械学習を用いて、フィード、ストーリーズ、ウォッチ、リールの各フォーマットにおいてユーザーに最適な動画を、自動的に表示すると主張している。測定を改善するために、メタは広告主に、自動化されたショッピングキャンペーンと、通常のメタ広告のパフォーマンスを比較するために、AIで作成された自動パフォーマンス比較レポートを提供する予定だ。

さらに、メタは新しい「Advantage+ Audience」ツールをテストしており、ブランドがAIの助けを借りて、ターゲットにしている年齢や性別などの設定パラメーター以外の新しい顧客層にリーチするために使用することができる。

これとは別に、ライバルのGoogle(グーグル)も、5月10日のI/Oデベロッパー・カンファレンスで、ジェネレーティブAIを使ってGoogleでのショッピング体験を「スーパーチャージ」すると発表した。Googleはサーチ・ジェネレーティブ・エクスペリエンス(Search Generative Experience、SGE)と呼ばれる新機能をテスト中で、ユーザーに代わってショッピングリサーチを行い、インターネットから得た洞察を要約して、もっとも正確な商品詳細、価格、お買い得情報をユーザーに提供すると主張している。Googleは、AIを搭載したSGEは、本質的に「ショッパブル」であり、商品結果には、購入するための小売業者のサイトに関する情報が表示されると述べた。同社は、AIがGoogleのショッピンググラフに掲載されている350億件の商品リストを選別し、適切な結果を導き出すことで、ユーザーのオンラインショッピング体験を簡素化すると主張している。ユーザーは、Googleのサーチラボ(Search Labs)という、Google検索の最新体験を試すための新しいプログラムに参加する必要がある。

リテールメディアの脅威

高い水準において、これらの取り組みはすべて、ブランドの広告パフォーマンスを向上させ、ひいてはデジタル広告プラットフォームの収益向上につなげることを目的としている。デジタル広告プラットフォームが直面する大きな課題のひとつは、リテールメディアの脅威の高まりだ。ウォルマート(Walmart)やインスタカート(Instacart)、さらにはダラー・ゼネラル(Dollar General)といった小売業者やeコマース企業は、Googleやメタのような企業が持つ高収益で有利なビジネスに魅せられ、独自の広告プラットフォームを目指すところが増えている。

イーマーケター(e-marketer)の推計によると、米国のデジタルリテールメディアの広告費は31.4%成長し、2022年には408億1000万ドル(約5兆5500億円)に達した。2024年には611億5000万ドル(約8兆3300億円)に達し、デジタル広告費の20%近くを占めると予想されている。Amazon(アマゾン)は、このリテールメディアへの支出を独占し、年間約300億ドル(約4兆840億円)の広告収入を生み出している。直近の四半期でのAmazonの広告収入は95億ドル(約1兆3000億円)と、前年同期の78億ドル(約1兆620億円)に比べて21%増加した。

しかし今、メタとGoogleは、新しいテクノロジーで広告ビジネスをまだ成長させられることを証明しようとしている。「広告プラットフォームに関する我々の一般的なアプローチは、広告主のパフォーマンスを向上させるツールの提供を支援したいということだ。なぜなら、広告主はパフォーマンスが向上したと判断すると、我々のプラットフォームにより多くを費やすことを選択し、それは同様に我々をも助けることになるからだ」と、メタでマネタイズチームの製品開発をリードするジョン・ヘグマン氏は述べた。

広告事業の復調

Facebook(フェイスブック)の親会社であるメタは、3月期末の広告収入が4.1%増の281億ドル(約3兆8300億円)となり、約1年ぶりの増収を記録したが、これは同社の広告事業が引き続き改善したことによるものだ。アルファベット(Alphabet)傘下のGoogleの広告収入は1%減の545億ドル(約7兆4300億円)だったが、検索広告事業は、1.7%増の403億ドル(約5兆4300億円)でした。

「これらの変更により、我々のモデルは、フィード、リール、ストーリーといった複数のサーフェスにわたって、どのような特性がアプリのパフォーマンスを向上させる可能性があるかをよりよく学習することができる」とヘグマン氏は付け加えた。メタは5月9日、リールを収益化するための広告をテストしていると述べた

一方、Googleは、SGE機能によってコアとなる検索体験が強化されると述べた。消費者向けショッピングの製品担当シニアディレクターであるリリアン・リンコン氏は、「我々は常に、検索がすでに行っていることに加えて、役に立つ解決策を生み出すことに重点を置いている。これはその代表的な例だ」と述べている。

Googleは、小売業者は、消費者が「より会話的な体験をすることを好む」ことを知るべきであり、「これは複雑なジャーニーをする消費者を支援する本当に素晴らしい方法だ」と述べた。Googleは5月10日水曜日にサーチラボへの登録を開始し、SGEへのアクセスは数週間以内に開始するとした。

流動的なデジタル広告業界

デジタル広告業界は、ここ数年流動的であり、それがAmazonのようなリテールメディアプラットフォームに飛びつく勢いを与えている。Appleは2021年のiOS 14更新で、ソフトウェアのプライバシー設定を大幅に変更し、広告主がアプリ間での行動を追跡することを許可するかどうかの選択肢をiPhoneユーザーに与えた。このアップグレードにより、FacebookやInstagramなどの広告プラットフォームは、iOS 14.5へのアップグレード前には、パーソナライズされた広告を配信するために利用できるデータが少なかったため、打撃を受けた。メタの幹部は、AppleのApp Tracking Transparency(ATT)機能の費用は、2022年に100億ドル(約1兆3600億円)になると述べていた。

「AppleのApp Tracking Transparencyに対する我々の対応は、人々の選択を尊重することを可能にするプライバシー強化技術の構築に焦点を当ててきたが、同時に、広告主に正確な測定と強力な配信を提供し続けてきた」とメタのヘグマン氏は述べている。「Advantage+の作業、AIサンドボックス、ジェネレーティブAIツールは、iOSを含む複数の異なるプラットフォームで役に立つが、それ以外でも同様に役に立つだろう」と同氏は付け加えた。

これらの変更により、メタのアルゴリズムは今後も強化されていくだろう。しかし、Advantage+の成功は、今のところ、美容製品など一部のカテゴリーに限られていることに注意する必要がある。米モダンリテールが以前報じたように、小規模なD2Cブランドは、メタのAdvantage+広告による大きな上昇を実感していない。

[原文:As retail media continues to grow, Meta & Google announce new AI-powered ad products]

Vidhi Choudhary(翻訳・編集:戸田美子)
Image via Meta

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