ファーフェッチ、ラグジュアリーな バーチャル試着 を訴求

DIGIDAY

バーチャル試着は、ラグジュアリーの小売業者にとって重要な提案となりつつあるが、それに大きく乗り出しているのがファーフェッチ(Farfetch)だ。

世界的なオンラインファッションマーケットプレイスであるファーフェッチは、最近、バーチャル試着を提供することでコンバージョンとエンゲージメントをどのように改善できるかをテストした。その結果、ラグジュアリーの顧客は、店舗に出向いて商品を試着するよりも、購入までの道のりの早い段階でバーチャル試着を利用していることがわかった。さらに店舗に入るよりも店舗のウィンドウに表示されるQRコードからバーチャル試着に参加したいと希望している。

ファーフェッチは2018年以降、バーチャル試着技術に多額の投資を行ってきた。2020年には、ベラルーシのソフトウェア会社ワナ(WANNA)と提携してバーチャル試着を提供しており、商業的に成功したツールであることが証明された。現在は高級時計、靴、ジュエリー、メイクアップでバーチャル試着を提供、将来的にはバッグやプレタポルテにもこの技術を導入する。現在、10万点以上の商品のうち、1000点以上でバーチャル試着ができる。試着のオプションは、商品ページの画像に「Try On」と表示される。

ファーフェッチのプロダクトイノベーション・シニアディレクターのキャロル・ヒルサム氏は「スナップ(Snap)のようなプラットフォームと(ファーフェッチの)ARは、明らかに異なる体験だと考えている」と述べている。「スナップのようなフィルター体験は、楽しいエンターテインメント作品にかなり近い。私たちのARは、ショッピング体験にどのような意味を持つのかという点にもっと焦点を絞っている」。

バーチャル試着の影響を検証

2022年、ファーフェッチはイノベーションに特化したアクセラレータープログラム、ドリーム・アッセンブリー(Dream Assembly)の勝者であるキュリー(Curie)を起用した。3D資産作成の自動化に特化したソフトウェア企業であるキュリーの技術が、将来の技術アップグレードのために検討されている。ファーフェッチは、バーチャル試着への投資については公表を避けたが、ヒルサム氏は、同社は今のところ意図的に限定的な提供にとどめていると述べている。

「拡張可能かつ持続可能な方法で3Dアセットを作成し、それを収容するまでのすべての過程を実行するには、本当に包括的で複数の技術に精通したアプローチが必要だ」とヒルサム氏は言う。「そして、この3Dビューのアイデアに沿ってアセットを表示できるフロントエンドツールを用意し、ウェブブラウザとアプリの両方で表示できるようにして、その上でバーチャル試着体験ができるようにしなくてはならない」。

「かなり実物にそっくりな試用で物理的な体験を強調して再現することで、顧客はその体験が店頭で(何かを)試着するのと似ていると確信できる」。

バーチャル試着がビジネスに与える影響を検証するため、ファーフェッチが狙いを定めたのは腕時計のカテゴリーだった。今年行った14週間の分析期間中、ファーフェッチは、バーチャル試着がない同価格帯の腕時計と比較して、ワナの機能を搭載した腕時計のサイト訪問数が47%増加したことを確認した。バーチャル試着機能を搭載した商品は、検索結果ページで呼び出される。「カートに入れる」が22%、「ウィシュリストへの追加」は81%増加した。だがファーフェッチは、腕時計のバーチャル試着分析は、同社が通常行っている大規模なA/Bテストの対象ではなかった点を強調している。しかもサンプル数が少ないため、実証された結果ではなく、あくまで傾向を示したものだ。

「人々が非常に簡単にバーチャル試着に関与し、すぐに理解して、ほぼ直感的にデジタルアセットを操作する方法を知ることができるとわかった」とヒルサム氏。「特にラグジュアリーの若い買い物客に当てはまる。この世代はデジタルアセットやデジタルでものごとに関わるという発想にかなり慣れている」。

AR技術とバーチャル試着は多くのタッチポイントで機能する

試着したジュエリーの動きを可能にしたり、他のアイテムの試着を提案したりするなど、テクノロジーと顧客体験にわずかな変化を加えたことが、エンゲージメントを向上させた。時計ブランドIWCシャフハウゼン(IWC Schaffhausen)のロンドンでの屋外広告や店舗のウィンドウでは、IWCのAR試着対応商品へのQRコードのリンクを紹介し、顧客が街中で試着できるようにしている。

ワナのCEOであるセルゲイ・アルハンゲルスキー氏は、「顧客を店舗に呼び込むのが目的」と話す。ファーフェッチの前に、同社の最初の顧客はグッチ(Gucci)だった。また、IWCシャフハウゼンとは直接提携している。「長年にわたって発見した重要な点は、このARテクノロジーとバーチャル試着は、さまざまな多くのタッチポイントで機能するということ」、つまり、人々はあらゆるチャネルでこれらを利用するという意味だ。

アルハンゲルスキー氏は、バーチャル試着は認知度向上にも役立つと言う。その新しさを考えて、消費者はこのツールを人との交流やソーシャルメディア上で共有することが多い。また、アプリやウェブサイトに組み込むことで、バーチャル試着は既存の買い物客の興味を引く。同氏はワナとブランドとの仕事でのデータを引用し、本来興味のなかった商品も含め、通常よりも多くの商品を閲覧してもらえると述べた。

B2B業務にも役立つバーチャル試着

ヒルサム氏は、店内で買い物をする人たちのために「当初は店内にあるもの以外にもカタログを拡張しようと力を入れていた」と話す。「だが人々は店舗で販売されている商品も(バーチャルで)試着し、その体験を十分に信頼して、実際の商品の試着をやめていることがわかった」。ファーフェッチは、自社サイトで販売している一部のブランドの店舗で、この腕時計体験をテストしている。

購入プロセスの早い段階でこの機能を利用した人もいた。「購入パイプラインの初期段階をサポートする」とヒルサム氏。「50点の腕時計やバッグを(店舗で)試す代わりに、バーチャル試着だけでショートリストに入れることができる」。

バーチャル試着は、B2B業務にも役立つとアルハンゲルスキー氏は言う。「私たちが提携しているあるラグジュアリーなスニーカーブランドは、当社のテクノロジーを使って卸売パートナーに商品を紹介している」と、同氏は述べている。

[原文:Farfetch is making a case for luxury virtual try-on]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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