新車を長時間運転することが健康上のリスクをもたらすとの研究結果

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車好きな人の中には、新車の香りに包まれてドライブすることほど素晴らしい瞬間はないと思う人も少なくないはず。しかし、新車の車内に長時間いると、安全基準を超える化学物質にさらされるリスクがあることが、アメリカと中国の研究により判明しました。

Observation, prediction, and risk assessment of volatile organic compounds in a vehicle cabin environment – ScienceDirect
https://doi.org/10.1016/j.xcrp.2023.101375


Driving a Brand New Car Could Come at a Cost to Your Health : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/driving-a-brand-new-car-could-come-at-a-cost-to-your-health


新車の車内には、プラスチックや模造皮革、フェルトなど揮発性有機化合物(VOS)を放出する素材が使用されていますが、住宅の室内などの住環境におけるVOSの影響は盛んに研究されている一方、車内という小さな空間でVOSにさらされた際の健康リスクについては、あまり研究が進んでいません。

今回、ハーバード公衆衛生大学院のPetros Koutrakis氏や北京工科大学のHaimei Wang氏らの研究チームは、炎天下に置かれた新車の車内では、安全基準値を超える発がん性化学物質が検出されることを突き止めました。

例えば、殺菌剤や消毒剤、ガスコンロなどから出るホルムアルデヒドは、中国の安全基準を35%上回るレベルだったとのこと。さらに、発がん性物質であるアセトアルデヒドに至っては、安全基準を61%も上回っていました。

また、塗料やタバコなどに含まれる発がん性物質のベンゼンは、1日の乗車時間が短い助手席の同乗者へのリスクは比較的低レベルだったものの、乗車時間が長いドライバーへの影響は危険なレベルに達していました。


実験には、製造から1カ月以内の新車である、プラグインハイブリッド車の中型SUVが用いられました。研究チームはこの車両を、12日間屋外に置いて日光にさらしてから、車内の空気サンプルをガスクロマトグラフィー質量分析法で分析しました。

化学物質の健康リスクを評価する上では、1日に11時間車を運転するタクシードライバーと、1日に1時間30分車に乗る乗客を想定し、測定された化学物質を経皮摂取あるいは吸引した場合の影響が調べられました。VOSによる影響のほとんどは呼吸によるものだったとのこと。

その結果が以下。合計20種類の化学物質を分析した結果、特に殺菌剤や消毒剤などにも含まれるホルムアルデヒド(Formaldehyde)、発がん性物質であるアセトアルデヒド(Acetaldehyde)、吸入すると吐き気や頭痛を引き起こす2-エチルヘキサノール(2-Ethylhexanol)が多く放出されていることが分かりました。


これらのうちベンゼン(左)、ホルムアルデヒド(中央)、アセトアルデヒド(右)における、ドライバー(Driver)と乗客(Passenger)の「推定障害発がんリスク」を検証した結果、ベンゼンの乗客への影響以外の全てが「潜在的なリスクあり」とされる基準の10−6(赤線)を上回っていることが確かめられました。


この実験では他にも、VOSの放出は車内の温度ではなく車内にある素材の表面温度によることなども分かりました。

今回の研究に直接携わっていないオーストラリア・RMIT大学のオリバー・ジョーンズ教授は、科学系メディア・Science Media Centreの取材に対し「私も含めて、多くの人は新車のにおいが好きですが、以前から新車の車内の化学物質にはあまりよくないものもあることが分かっています。車内のプラスチックや接着剤などから出るアセトアルデヒド、ベンゼン、ホルムアルデヒド、ヘキサナール、スチレンといった物質の多くは、発がん性物質に指定されています。それらが存在するからといって必ずしも問題だとは限りませんが、体に取り込まれる量によっては有害になります。新しく発表された研究では、そこが焦点となりました」とコメントしました。

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