書き出し小説大賞 259回秀作発表

デイリーポータルZ

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

GWですね。ゴリラの脇毛、ごめんね和田アキ子、グレートわかめ……など、毎年いろんな略前の言葉を提案してきましたが、今年は『ゴリラの惑星』でお願いします。

それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご案内しましょう!

書き出し自由部門

白線の外側に君は立っていた。

もんぜん

その前とその後が知りたい、正統派書き出し。

口笛のキーを下げて様子をうかがう。

suzukishika

新緑の下、喪服の女が三人、あぐらをかいていた。

タカタカコッタ

窓ガラスに半調で写り込んだ君の彩度をいじる。

ハングリィ

用語の使い方で語り手の職業まで想像させる。

このところ、野生の関係代名詞による修飾被害が相次いで報告されています。

いちもくれん

月の裏側で暮らし、人々の夢を盗む。

santa

ついに観賞魚は破裂した。

ナックルボール

いったん広告です

あなたがもっとスケベなら、あの島は沈まなかったのに。

正夢の3人目

知らない女と彼女がキスしてる。怒りよりニヤニヤが止まらない。

人馬一体勘

この人がいれば島は沈まなかったかもしれない。

それでもくらげは若返る。まどろみ、揺蕩い、傷つきながら。

さくさく

ぬるま日だ。

モンゴノグノム

くもり、休日、予定なし。

視界には揺れる笹の葉。軋む竹の音。鉄パイプで殴られた感触。今は、耳かきがしたい。

なかもりばなな

虹の根元に居た妖精は、この宝がどんな汚い手を使って集められたかを説明してくれた。

カズタカ

心の余裕を求めて酒を飲む。道端のアスファルトの隙間から生えているたんぽぽに気づかずに。

葱山紫蘇子

今年還暦のおっさんだが、未だロフトのある部屋に憧れる。

prefab

罵倒し合う男女を乗せたスワンボートが私達を追い抜いた。

虚月木頭

仲のいいカップルより仲の悪いカップルのスワンボートの方が速い。

自転車のカゴに乗せられたプードルと俺だけが駐輪場にいる。

井沢

納豆が光の中を降下する。

みよおぶ

⏩ 書き出し規定部門・モチーフ『モブ』

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