議員は不人気な商売なり:無投票当選者が続出しているその理由

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統一地方選後半戦の話題の一つが無投票当選者が続出している点です。市議レベルでは14市237人が無投票当選を果たしました。東京都中央区の区長戦は東京の区長選としては29年ぶりの無投票当選が決まっています。更に18日に告示となった町村長、町村議では町村長の56%、町村議の33%が無投票当選となっています。地方議員の価値が問われています。

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何故議員になりたくないのか、いろいろ理由はあるのでしょう。ちらっとネット記事を見ると選挙の時のポスターが嫌だとか、給与が安いなどいろいろ掲げていますが、私は責任ある仕事は誰もやりたくなくなったということではないかと思います。つまり、矢面にたつ仕事は面倒くさい、これに尽きると考えています。

今回はたまたま地方議員というところに焦点が当たっていますが、なり手がないポジションは世の中いくらでもあります。マンションの管理組合の役員などは不人気の好例でしょう。かつては自分たちの財産を守るために管理組合でしっかり活動するという正義感ある方も多かったのです。今は住民の意見が一致することなどなく、時としてやりにくい住民と対峙しなくてはいけません。こんなの、やってられん、と言うのが関の山でしょう。

会社の組合活動はどうでしょうか?組合専従に対して昔は一定の評価があったのです。特に組合委員長になれば将来、幹部になれる道が開けるという会社もありました。何故かといえば人心を捉えることができるから、というのが理由だった記憶がありますが、今はもちろんそんな甘い時代ではありません。

とすれば議員などは最も嫌な商売です。地方議会は地味な決議が多く、地元の人の声を丹念に拾っていくことも重要です。国会議員は当選すれば「永田町のひと」になれますが、地方議員にそのような特権はありません。農家や漁業従事者を回り、商店に挨拶に行く、冠婚葬祭では葬儀ばかりで議員という名の小間使いのようなものです。議員から見れば有権者はお客様です。平身低頭で笑顔で手を振り続けます。国会議員なら当選したら秘書に黒塗りの車もあるかもしれないけれど地方議員にそんな贅沢はありません。

ところでバイデン大統領がなかなか出馬表明をしません。本人はするつもり、と言っているのでタイミングを見ているだけなのかもしれませんが、もともとは23年初頭には表明するとしていたものがずれ込んでいます。真相は分かりません。表向きは民主党内に有力対抗馬がいないから急ぐ必要がない、とされています。前回の大統領選の時には20人以上が大統領選に名乗りを上げ、大乱立だったのに今回は打って変わって盛り上がらない感じです。それともバイデン氏に遠慮をしているのでしょうか?

同様にアメリカ共和党もまだ動きが鈍い気がします。トランプ氏人気に押されていることはありますが、出馬表明済みが4名、近々に手を上げそうな議員がフロリダのロン デサンティス氏やマイク ペンス氏など数名ですが、トランプ対ほかの候補という構図で今一つパッとしません。

この構図は日本の総裁も同じです。岸田首相はいよいよ足場を固めてきたな、という印象があります。最新の世論調査が朝日新聞系のANNで発表されていますが、岸田氏を支持するが前回から10.2ポイントも上昇しているのです。これは岸田氏の評価の見直しもあるのでしょうけれどほかに有力な候補がいないという点が更に後押ししていることもあるとみています。

私は会社の社長をやり、NPOの会長をやり、母校の役員もやっています。他にも様々なシーンでリーダーシップを見せなくてはいけないことは多々あります。やりながら思うことは周りとの温度差です。トップが舞台の上でサル芸をしているのではないか、と思うこともあるのです。それぐらい今、周りが覚めてしまっています。

私が考える理由は皆さん、裕福になったのではないか、という点です。裕福とは金銭的ではなく、日々の生活に適度に満足し、特段変化を求めないという意味です。苦しくないから改善させる必要もない訳です。私はこのブログを16年ぐらい続けていますが、何を好んで皆さんのご批判を毎日浴びているのか、お前はマゾか、と言われてもおかしくないですよね。尋常な精神の持ち主でこのレベルのコメントを見たら3日で萎えて止めると思います。ということは舞台に立つより観戦者して好きなことを言っていた方が楽に決まっています。当たり前です。それでも昔は「俺も、私も」という人はいたのです。今は「80歳になって大統領なんて忙しいし、いろいろ言われるし、したくないよねー、余生はのんびり好きにさせてもらうよ」が99.9%の発想だと思います。

議員や役員といった社会的意義を背景にした仕事は今後、もっとなり手がいなくなるとみています。不足気味とされる社外取締役も同様に見つけられなくなるでしょう。仮に今の倍の報酬になってもやりたがらないと思います。それは一方で、社会を支える重要な支えをなくすことです。最終的には皆さんの日々の生活に跳ね返ってくるのです。

皆さんのマンションの管理がどれだけ酷くなっても、お住まいの地域の環境がどれだけ悪くなっても文句は言えなくなるのでしょう。そして選挙によらない議員の増大ですから議員の資質は低下せざるを得ないともいえそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年4月19日の記事より転載させていただきました。

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