【アップグレード後の性能が知りたい!】安くなってきたからSSDをアップグレードしたい!PCIe 4.0のSSDを“3.0の旧環境”で使っても意味はある?

PC Watch

PCIe 3.0までの対応となるCoffee Lake世代の自作PC(Intel Z390マザーボード)。こいつにPCIe 4.0対応のNVMe SSDを増設してみる

 本連載2回目のお題はSSDのアップグレードだ。PCI Express 3.0の環境に、PCI Express 4.0 x4対応のNVMe SSDを増設することに意義があるのかなどを確認してみたい。

 2023年、SSDの価格は下落傾向が続いている。これを機会にSSDの換装や増設を考えている人は多いだろう。そうした旧環境ユーザーの参考になれば幸いだ。

 さて、PCI Express 3.0(以下PCIe 3.0)までしか対応していない旧世代の環境に、PCIe 4.0対応のNVMe SSDを取り付けても問題はないのだろうか?

 たとえば、Coffee Lake世代(第8世代CoreのCPUとZ390チップセット搭載マザーの組み合わせ)のM.2スロットはPCIe 3.0 x4までの対応だが、そこにWD_BLACK SN770のようなPCIe 4.0 x4対応の人気NVMe SSDを増設しても動作するのかということだ。

 答えを言えば、PCI Expressには下位互換があるため、PCIe 4.0対応のSSDを取り付けてもPCIe 3.0接続になるだけで問題なく動作する。

PCIe 4.0 ハイエンドSSD

PCIe 4.0対応のハイエンドSSDとして用意したのがWestern Digital「WD_BLACK SN850X NVMe SSD WDS100T2X0E」(1TB)。実売価格は1万7,000円前後

 ただし、PCIe 3.0 x4は実効速度が約4,000MB/s、PCIe 4.0 x4は実効速度が約8,000MB/sと最大転送速度が大きく異なる。

 PCIe 4.0対応のハイエンドSSDは最大速度が7,000MB/sを超えるものが中心となっており、PCIe 3.0接続ではその速度を生かしきれない。PCIe 3.0 SSDの速度が最大3,500MB/s前後なのは、インターフェイスの限界に到達しているからだ。

 となれば、PCIe 3.0までの環境ならPCIe 3.0 x4のSSDを利用したほうがよいのではと思うところ。しかし、PCIe 4.0 SSDを使うメリットはいくつかある。

PCIe 4.0 エントリーSSD

PCIe 4.0対応のエントリーSSDとして用意したのは低価格&高性能で人気のWestern Digital「WD_BLACK SN770 NVMe WDS100T3X0E」(1TB)。実売価格は1万2,000円前後

 PCIe 4.0 SSDのほうが搭載されているコントローラとNANDの世代が進んでいることが多く、基本性能が高いのだ。

 PCIe 3.0環境では最大速度こそ生かせないが、そこまでの速度が出ないランダムアクセス性能は十分に発揮できる。

 また、最新世代のコントローラは微細化が進んでいるため発熱が小さくなっている。そして最大速度が制限されるPCIe 3.0環境なら動作温度はさらに低くなるため、Mini-ITXケースのような風通しの悪い小型筐体で使用した場合に大きな意味が出てくるかもしれない。

PCIe 3.0 ハイエンドSSD

比較用としてPCIe 3.0対応で旧世代のハイエンドSSDであるWestern Digital「WD Black NVMe SSD WDS500G2X0C」(500GB)を用意した。2021年発売当時の実売価格は1万円前後

ベンチマークで性能を比較

 そこで、今回はPCIe 3.0までの対応となるCoffee Lake世代の自作PCに、PCIe 4.0対応のSSDを増設した場合の性能と温度をチェックしてみる。

 比較用としてPCIe 3.0対応の旧世代ハイエンドSSDも用意した。使用したSSDと検証環境は以下の通りだ。また、PCIe 4.0環境での性能も見るためRaptor Lake世代の環境も用意している。

使用したSSDのスペック
WD_BLACK SN850X NVMe SSD WD_BLACK SN770 NVMe WD Black NVMe SSD
型番 WDS100T2X0E WDS100T3X0E WDS500G2X0C
容量 1TB 500GB
フォームファクタ M.2 2280
インターフェイス PCIe 4.0 x4 PCIe3.0 x4
プロトコル NVMe
NANDフラッシュメモリ Western Digital製(詳細非公開)
コントローラ Western Digital製(詳細非公開)
シーケンシャルリード 7,300MB/s 5,150MB/s 3,400MB/s
シーケンシャルライト 6,300MB/s 4,900MB/s 2,500MB/s
総書き込み容量(TBW) 600TB 600TB 300TB
検証環境
PCIe 3.0 SSDのシステム PCIe 4.0 SSDのシステム
CPU Core i5-8600K
(6コア6スレッド)
Core i9-13900K
(24コア32スレッド)
マザーボード MSI MPG Z390 GAMING PLUS MSI MPG Z790 CARBON WIFI
メモリ DDR4-3600 16GB×2
※DDR4-2666で動作
DDR5-5600 16GB×2
ビデオカード GeForce RTX 3070
OS Windows 11 Pro(22H2)

SSDのヒートシンクは条件を統一するため、CFD販売の「HSN-TITAN」を使用した。テストはすべてこのヒートシンクを装着した状態で実行している

CrystalDiskMark

 まずは、SSDの速度を測定する定番ベンチマーク「CrystalDiskMark」の結果から見てみよう。

 シーケンシャルリードとライトに関してはPCIe 3.0環境だとインターフェイスの限界から3,500MB/s前後で頭打ちになる。

 それでも旧世代のWD BlackよりはSN850X、SN770とも高速だが注目はOSやアプリの起動や処理のレスポンスのよさにつながりやすいランダムアクセスの速度だ。WD Blackよりもかなり速度が出ており、最新世代コントローラの性能の高さが見て取れる。

PCMark 10-Full System Drive Benchmark

 次は、Microsoft Officeやゲーム、AdobeのPhotoshopやIllustratorといったクリエイティブ系アプリの処理をシミュレーションして使用感のよさを測定する「PCMark 10-Full System Drive Benchmark」をチェックしよう。

 PCIe 3.0環境でもWD Blackに対して、2倍以上のスコアを出している。PCIe 4.0環境に比べるとスコアは低くなるとは言え、実アプリにおける処理性能は十分高く、PCIe 3.0環境でも最新世代のPCIe 4.0 SSDを使う意味は十分あると言ってよいだろう。

3DMark-Storage Benchmark

 続いて、ゲームの起動やロードに加え、ゲームデータのコピー、録画しながらのプレイなどゲームに関する幅広い処理をシミュレーションする「3DMark-Storage Benchmark」を試す。

 このベンチマークはスコアが2,500以上で「Very Good」という判定、ゲーム用SSDとして優秀と言える。

 WD Blackはそこに到達できないが、SN850XとSN770はPCIe 3.0環境でも2,500以上を出しており、ゲームのインストール先として増設するのもアリだ。

 ちなみに、SN850XとSN770はPCIe 4.0環境なら「Great」判定になる3,000以上のスコアに到達できる。

SSDの温度

 SSDの温度もチェックしてみよう。

 CrystalDiskMarkを3回連続で実行したときの温度を「HWiNFO Pro」で測定した。温度は「Drive Temperature」の値だ。

 CrystalDiskMark実行前を「アイドル時」、実行時の最高温度を「最大」、3回実行時の温度推移から平均値を計算したものを「平均」としている。

 注目はPCIe 3.0環境でのSN850XとSN770の温度だろう。PCIe 4.0環境に比べて最大速度が落ちる分、温度もかなり低くなる。

 中でもSN770は旧世代のWD Blackよりもかなり高い性能を持ちながら、PCIe 3.0環境での温度は平均で5.1℃も低くなっている。最新世代のコントローラが高性能かつ低発熱なのがよく分かる結果だ。

 PCIe 3.0環境では、最新世代のPCIe 4.0対応SSDは最高性能こそ出せないが、旧世代のハイエンドPCIe 3.0対応SSDよりもあらゆる面で高い性能を発揮でき、SN770のようにより低い温度で動作する場合もある。

 SN770はエントリークラスの価格ながら、ハイエンドクラスに匹敵する性能を持つことで大ヒットした製品だが、そのよさはPCIe 3.0環境でも変わらない。

 SN770の価格はPCIe 3.0のSSDと製品と同程度ため、PCIe 3.0環境での換装、増設用のSSDとしてもオススメだ。SN850Xは、PCIe 3.0環境で使うには価格、シーケンシャル性能から考えてもちょっともったいないと言える。

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