Netflix 広告事業、バイヤーはCPMの高さに不満を漏らす:「まだ広告モデルの初期段階にあり、十分ではない」

DIGIDAY

Netflixが広告サポート付きのプランを提供開始して以来、最初の1四半期が終了した。その成果はおおよそ成功だとする報道が多く出てきている。

しかし米DIGIDAYの取材に応じたメディアバイヤーたちによると、55ドル(約7300円)のCPMはバイヤーたちにとってはまだ高過ぎるもので、広告サポート付きの加入者ベースの成長が遅すぎることにもバイヤーたちは不満を表明しているようだ。

広告を出す価値はあるのか?

取材に応じてくれた関係者のなかには、メディアエージェンシーにおける広告投資領域でハイクラスの幹部として勤務する人材が4人いたが、まず、彼ら全員がNetflixの方向性について楽観的な見解を示していることは特筆すべきだろう。彼らは同社が成功することを望んでいる。

混沌としたCTV市場におけるクライアントの資金投入先の選択肢として、競争力のあるオプションが増えることにはメリットがあり、また有料会員の視聴者が広告フリーの壁の背後へと失われないためにも、Netflixの広告事業に成功してもらうことには意義がある。

しかし、2022年11月3日にNetflixが広告サポート付きプランをローンチした際に提供した広告プロダクト内容には、エージェンシー幹部や彼らのクライアントたちは、物足りなさを感じたようだ。ある大手エージェンシーグループの広告投資責任者は、加入者が非常に少ない(広告サポート付きのプランは約100万人の加入者)にもかかわらず、いくつかのクライアントがそのローンチに参加する強い意欲を示したことに言及した。しかし、当の幹部は、Netflixが55ドルのCPM(当初は65ドル[約8630円]だった)をそこから引き下げなかった点や、ローンチに参加した広告主に価値を提供していない点に失望したと言う。

この幹部は「その後、実際にチームにアンケートを取って、ローンチ後にNetflixで広告を出す必要性を感じるクライアントがどれだけいるかを調べた。その結果、ゼロだった」と述べている。

「多くのクライアントが価値がないと指摘し、その時点で手を引いた」とこの人物は述べた。彼は、NetflixのCPMは45〜50ドル(約5900〜6600円)の範囲が適正価格だろうと考える。「価格が原因で手を引いたクライアントはもちろんNetflixに戻って来ていない。しかしそれ以外でも、ローンチには参加せず、いま現在Netflixで広告を出したいと言ってくるクライアントもいない」。

いまだ発展途上の段階に

別の大手メディアエージェンシーグループのアクティベーション担当トップも、広告主に対してNetflixの補償対応が続いていることに言及した。「加入者数が低いため、売った広告を配信できないでおり、Netflixは広告主に文字通り返金している。彼らは高すぎる価格で提供を過少評価し、皆を怒らせている」と語った。

最初の幹部はまた、Netflixの広告販売部門もさらに洗練される必要があると指摘した。「彼らはまだ広告モデルの初期段階にあり、ターゲティングがほかのストリーミングプロバイダーと比べて十分ではない」。

Netflixの広告ビジネスの技術面も詳細に批判・評論の対象となっている。これはNetflixだけが特別に問題視されているわけではない。「広告主からの測定可能な成果を求める声が高まる中、多くのAVOD/OTT企業が、自社の加入者動向をどのようにバランスし、最適化するか、に関して同様の課題に直面している」と、モロコ・エンタープライズ(Moloco Enterprise)のヘッドであるヘルマン・ヤン氏は語った。同社はAVODプロバイダーに対し、動的価格設定を持つ機械学習ソリューションに移行するよう促している。

そうは言っても、Netflixはスナップ(Snap)からジェレミ・ゴーマン氏とピーター・ネイラー氏の2人を昨年8月(ローンチ契約がすでに確保できた後の契約だろうと推測される)に引き抜いており、このチームが整えば、メディアエージェンシーたちはNetflixが持つポテンシャルを無視できないだろう、と前述のアクティベーション担当幹部は認めた。この流れは今すでに起きつつあるようだ。

「いずれNetflixは問題を解決するだろう。(広告主は)Netflixに参加するのが遅れたくはない」と同氏は説明した。

今後の販売計画は?

別の大手メディアエージェンシー・ネットワークの幹部も、Netflixは最終的には広告を買わざるを得ないプラットフォームになるだろうと同意したが、今はまだそこに達していないようだ。「消費者の生活の中でNetflixが占める時間と空間を考慮すると、その限定的なリーチはプレミアム価格になるだろう」とこの人物は言った。「Netflixは量より質に賭けている。少し長期的なアプローチだ」。

メディア・エージェンシーにとっては若干不可解に感じられる同社とマイクロソフト(Microsoft)の契約が、今後どうなるのかは、まだ分からないままだ。その点からもゴーマン氏とネイラー氏が今後明らかにするだろう、アップフロントを含めた2023年の残りの販売計画に注目が集まる。

Netflixとしては、適切な位置にいると信じているようだ。「私たちは広告ビジネスの成長とパフォーマンスに引き続き興奮しており、クライアントの目標を達成するための最高のチームを構築していることに自信を持っている」と同社からの声明で述べられた。「グローバル展開を続ける中で、業界の進化を継続的に見極め、永続的な広告ビジネスを築くために最適な立場を確保することを継続していくつもりだ」。

熱心な支持者も

メディアエージェンシー業界でNetflixの熱心な支持者の一人が、メディア・モンクス(Media.Monks)のブランド投資部門責任者であるマット・クレイマー氏だ。「(Netflixが)最初からすべてを完璧に成功させることを期待するのは不公平だ」とクレイマー氏は述べ、彼のチームはNetflixの広告ローンチがどのような結果を生むかについて調査と考察をしっかりと行なった結果、失望はなかったと言った。「Netflixが広告サポートプランの登録者を増やすにつれて、供給と需要がもっと均衡になり、CPMにもそれが反映されるだろう」。

クレイマー氏によれば、Netflixの能力はローンチ以降急激に向上している。「彼らは素晴らしいチーム、素晴らしいメンバーを組織し、ローンチから多くのことを学んでいる」と彼は言った。

「今ではより多くのデータがあり、AVOD部門のビジネスを速く成長させる手法についての理解も深まっている。だから、彼らの予測も、抱える人材も、最初のころよりもはるかに素晴らしい」。

人材については、リンクトイン(LinkedIn)の検索結果から、Netflixは1月以降いくつかのセールスディレクターのポジションを採用していることがわかる。元ヴィーヴォ(Vevo)の国内セールス部門シニア・バイスプレジデントのキンゼイ・オズバーグ・タンベリーノ氏、最近までTwitterで働いていたダグ・ブロードマン氏、Google/YouTubeからのヴィクトリア・モリス氏、最近はアモビー(Amobee)で働いていたが以前にはバイアコム(Viacom)で長年のセールス経験を持つヴァレリー・ビシャック氏、そして最近はディズニー・アドセールス(Disney Ad Sales)で働いていたマイケーラ・ジョヴェンゴ氏がそこに含まれている。

[原文:Netflix’s CPM still under media buyers’ skin months into its disjointed push into advertising

Michael Bürgi(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)

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