新しいタイプの美容出版物が登場し、美容に関する報道をインパクトのある視点を持ったものへと刷新する可能性がありそうだ。2013年に創刊された年2回発行のファッション誌「システム(System)」は、2022年12月、年2回発行の新たな美容出版物「システムビューティ(System Beauty)」を発表した。
新しいタイプの美容出版物が登場し、美容に関する報道をインパクトのある視点を持ったものへと刷新する可能性がありそうだ。
2013年に創刊された年2回発行のファッション誌「システム(System)」は、2022年12月、年2回発行の新たな美容出版物「システムビューティ(System Beauty)」を発表した。また、1月には「ビジネス・オブ・ファッション(Business of Fashion)」が2018年4月に初めて登場した「ビジネス・オブ・ビューティ(Business of Beauty)」のバーティカルのリニューアルを行っており、2月上旬には「ハイスノバイエティ(Highsnobiety)」が美容への進出を発表している。最近では、3月上旬に「エアメイル(Air Mail)」が、独立したデジタルバーティカルの「エアメイル・ルック(Air Mail Look)」で美容に関する報道を拡大すると公表している。
Advertisement
美容と文化に関する報道の空白地帯
こうしたローンチの背景には、おそらく皮肉なことに、これまで閉鎖や統合、方向転換、その他のコスト削減戦略などを繰り返してきたメディア業界の循環的な性質がある。「WWD」は米国を拠点とする50誌の分析を行い、2022年にはそのうちの52%で印刷頻度が2019年よりも低下しており、さらに10社が印刷業務を完全に停止していることを明らかにした。同誌の指摘によると、すべてがパンデミックに直接関連しているわけではなく、一部は2020年3月以前に発生していて、紙媒体の衰退はCovid-19によってはるかに上回った。「WWD」自体も2015年に日刊の印刷出版を中止している。「ラッキー(Lucky)」、「ナイロンガイズ( Nylon Guys)」、「メンズフィットネス(Men’s Fitness)」といったいくつかの有名な出版物は2015年以降に廃刊した。そうこうしているうちに、米国の1000億ドル(約13.2兆円)規模の美容業界の、特に美容と文化が交差する点(この記事を読んでいる人なら誰でも知っていることだが、それはおそろしいスピードで変化している)に関する報道に穴が空いてしまった。そしていま、出版社はそのホワイトスペースのチャンスに気づいている。
「『ハイスノバイエティ』は、美容とは歯ブラシのようにシンプルで、文化のように複雑だということを理解している」と同誌の編集長ウィラ・ベネット氏は言う。「7カ月前に編集長に就任してから、編集チームと私は多くの時間を費やして、グローバルな若者スタイルのプラットフォームにとって、どのような拡張が理にかなっているか話し合ってきた。そうした議論を経て全員の意見が一致したのは、正しいと思える方法で美容をカバーしている人が誰もいないということ。私たちがパーソナルスタイルを真に支持するのであれば、『ハイスノバイエティ・ビューティ』のローンチは必然的だった」。
「ハイスノバイエティ」のスタイルエディターだったアレクサンドラ・ポーリー氏が、初の美容エディターに任命された。追加採用の有無については、ベネット氏は言及していない。「ハイスノバイエティ」は2005年にグローバルなデジタルファッションおよびライフスタイルメディアブランドとして創業し、2022年にドイツのeコマース大手ザランド(Zalando)に買収されている。2019年には、ファッションとライフスタイルのマルチブランドオンライン小売業のハイスノバイエティショップ(Highsnobiety Shop)をローンチした。
アフィリエイトコマースはメディア業界にとって大きなチャンス
慢性的な資金不足に陥っているメディア業界にとっても、アフィリエイトコマースは大きなチャンスであり、美容は完璧なショッピングのネタとなる。Digidayによれば、2020年には135のパブリッシャーのうち43%が、アフィリエイトコマースは自社の収益源ではないと回答していたが、その数は2021年の初めには約34%に減少している。そして、あらゆる規模のパブリッシャーが、理論上簡単に稼げるこの戦略を受け入れている。Digidayの記事よると、2021年に当時のメレディス(Meredith)で現ドットダッシュ・メレディス(Dotdash Meredith)が、2020年度第2四半期決算でeコマース事業から前年比26%増の2770万ドル(約36.6億円)を得たと報告している。メレディスは「リアルシンプル(Real Simple)」、「ベターホームズ&ガーデンズ(Better Homes & Gardens)」、「バーディ(Byrdie)」、「インスタイル(InStyle)」といった出版物を所有している。Glossy自体は、2022年8月にポップショップ(Pop Shop)を介したアフィリエイトコマースを導入している。
「美容はつねに、人々に行動したいと思わせる何かだ。だから、美容の記事を読むと、そこに書かれているものを買いたくなる」。そう話したのは、「エアメイル・ルック」の編集者リンダ・ウェルズ氏だ。「出版物にとって追加収入を得るすばらしい方法だ。だが記事にする製品を選ぶ際に、編集の判断と決定権を失わないようにしなくてはならない」。
美容を文化や人々の行動と結びつけた報道を目指す
メディアと美容のベテランであるウェルズ氏は、元「ヴァニティフェア(Vanity Fair)」編集長のグレイドン・カーター氏が2019年に創刊したデジタル週刊誌「エアメイル」にて、2021年から執筆を行っている。Axios(アクシオス)によると、この出版物はまだ利益を上げていないが、2023年には1500万ドル(約19.8億円)以上の年間収益をもたらすという。「エアメイル」の購読料は年間80ドル(約1万円)だが、いまのところ「ルック」は「エアメイル」の広告収入に貢献するサイト上で無料のままだ。収益全体の42%を占める「エアメイル」の広告の大半は、ラグジュアリーの広告主からの提供で、美容とはうまく連携している。「エアメイル・ルック」は挑発的でおもしろいストーリーの融合に焦点を当てつつ、サービス志向の記事も織り交ぜている。ウェルズ氏は、美容関連の報道に対する追加採用は積極的に行っていない。
「(私が始めたときは)典型的な女性誌で読まれるような記事は少なくしたいと思っていた」とウェルズ氏は語る。「どの場合でも、美容だけを孤立して扱うのではなく、文化的な基準、文化的な習慣、そして人々の行動と結びつけたいと考えていた」。
[原文:Beauty industry coverage is undergoing a renaissance]
EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)
※登録ボタンをクリックすると規約に同意されたものとします