H-E-Bやターゲットも参入:食料品店が大学生のための店舗をオープンする理由

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食料品店が、学生を取り込もうと、大学のキャンパスに目を向けている。

スーパーマーケット・チェーンのH-E-Bとテキサス大学オースティン校は1月に提携し、大学生とキャンパスの職員を対象に、食料品の当日配達を行うことにしたと同校のウェブサイトは伝えている。この提携は、H-E-Bが2022年11月、サム・ヒューストン州立大学と食料品配達の提携を結んでから、わずか数カ月のできごとだ。ターゲット(Target)は最近、チャールストン大学から徒歩圏内に初の小型店舗をオープンしたばかりで、小売大手が近年、キャンパス近くに店舗をオープンするケースが増えている、そのひとつとなっている。

大学生の購買力は年配者よりも低いものの、多くの食料品店にとって長期的な投資となり得る。専門家によると、早い段階から買い物客との関係を構築することで、小売業者は忠実でデジタルに精通した顧客基盤を確立することができる。小売業者の中には、大学そのものと提携し、宅配ハブを設置するところもあれば、キャンパスの近くに店舗をオープンすることを選択するところもある。

「大学生は、Z世代と呼ばれる注目すべき消費者層であり、これらの小売企業は時間をかけてそのロイヤルティを獲得していくことになるだろう」と、マーケティング企業のカンター(Kantar)で小売インサイト部門責任者を務めるレイチェル・ダルトン氏は述べている。

若くテクノロジーに精通した消費者

バブソン大学のマーケティング、コマース、電子ビジネスの教授であるドルヴァ・グレワル氏は、大学生は食料品の買い物にアプリやオンライン配送サービスを使うのに非常に慣れている、と述べている。学生は、食料品の買い物習慣を身につけ始めたばかりで、それは、食料品を入手する新しい方法を試すことにとても前向きであることを意味すると、同氏は説明している。

「試験的なプログラムを導入すれば、学生はもっと積極的に意見を述べるようになるだろう」とグレワル氏は述べている。「実験場としては、とてもいいことだと思う」。

H-E-Bの場合、テキサス大学オースティン校の学生は、青果からクリーニング製品まで、オンラインで提供しているすべての商品をH-E-Bアプリ、または、heb.comで購入することができる。また、買い物客は配達時間や場所を選択することが可能だ。H-E-Bは2021年にも、食料品の配達でテキサスA&M大学(Texas A&M)と提携したことがある。H-E-Bにコメントを求めたが、すぐに返答はなかった。

「H-E-Bは1976年以来、テキサス大学の学術プログラムや研究の誇り高いスポンサーであり、幸運にも今日、当社で働く何百人ものロングホーンがいる」と、H-E-Bでセントラルテキサスのマーケティングディレクターを務めるローラ・エステス氏は大学の発表で述べている。「我々のパートナーシップは、長年にわたり、両組織の誇りの源となっている。この精神に基づき、テキサス大学オースティン校のコミュニティでH-E-Bの学内配送を開始した。元ロングホーンとして、この特典がすべての学生に広く利用されるようになることを願っている」。

H-E-Bは、サム・ヒューストン州立大学とテキサスA&M大学で、キャンパス内に専用の配達ゾーンを設け、簡単に受け取れるようにしている。10月にケンタッキー大学と提携したクローガー(Kroger)も、同じ戦略を採用した。ケンタッキー大学は、同大学の競技場「クローガーフィールド」の駐車場オレンジロットの南西の角を、オンライン食料品注文の受け取り場所とした。

1日を通じた往来

キャンパスには何千人もの学生が居住しており、カンターのダルトン氏は、食料品店は大学をターゲットにすることで、多くの買い物客を抱え、より多くの市場シェアを獲得する機会があると述べている。調査会社エデュケーション・データ・イニシアティブの研究者によると、H-E-Bの大学提携先が多いテキサス州では、大学生の平均支出額が1カ月あたり約181ドル(約2万4500円)にのぼるという。同社の試算では、学生の食料品購入費は平均250ドル(約3万3800円)で、平均的な個人は約356ドル(約4万8000円)だ。

ダルトン氏は、大学生の食料品購入額は労働者階級よりも少ないものの、この層をターゲットにすることは小売業者全体のブランディングと認知度向上に有益であると述べている。

「彼らは、おそらく支出額が全体的に低いと思われる。彼らは、毎週大量に食料品を買うわけではない」と同氏は話した。「しかし、この特定の世代や買い物客に食い込もうとする食料品店にとって、これは実にユニークな機会だ。というのも、買い物かご全体の売上に関して彼らが見ているのは、目先の結果だけでなく、つながりを作ることができた場合のより長期的な結果だ」。

しかし、買い物かごの大きさには欠けるが、人の往来で補うことができる。大学生のスケジュールはさまざまなので、近隣の食料品店では、より安定した買い物客が来店する可能性があると、グレワル氏は推測している。

また、「大学の近くであれば、郊外の食料品店よりはるかに幅広い時間帯で来店があるのは間違いない。夜更かしを学生もいれば、早起きする学生も多くいる」と述べている。

学生向けの店舗設計

ターゲットは、大学生のライフスタイルに合うように、これらの店舗を特別に設計した。南カリフォルニア大学、ボストン大学、ノースカロライナ大学チャペルヒル校など、キャンパスに近い店舗は、素早く便利に移動できるように作られている。2018年には、大学キャンパス内やその近くに10店舗の小型店舗をオープンした。デイリー・ペンシルバニアン紙は11月、ターゲットがペンシルバニア大学の近くに出店する計画であると報じた。

ターゲットと同じく、トレーダー・ジョーズも10月、カレッジパーク(College Park)に店舗をオープンしたばかりだ。開店日には、近くにあるメリーランド大学の大学生を含む300人の客が列を作ったと、ハイアッツビル・ワイヤー(The Hyattsville Wire)は報じている。

[原文:Why grocers like H-E-B and Target are vying for college students’ loyalty
]

Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Target

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