ゲーム内 以外でゲームと広告を並べるには、どうすればいいのか:5000万ドルの売り上げをあげたオーバーウルフの場合

DIGIDAY

ブランドやマーケターたちは、ビデオゲームと並んで広告を出すためには多額の費用を惜しまない。特にPCや家庭用ゲーム機でプレイされる、人気のプレミアムゲームの場合はそうだ。

オーバーウルフ(Overwolf)は、様々なゲームごとに開発されたモディフィケーション(拡張パック、以下MOD)をプレイヤーが入手するためのプラットフォームを運営している企業だ。米DIGIDAYに独占で公開してくれた同社の数字によると、オーバーウルフは、プラットフォームに広告を統合したことで、昨年の広告売上は5000万ドル(約67億円)を超え、2021年から2022年の間に広告収入は倍増した。

MODのランチャーアプリを活用

オーバーウルフはウェブ上で最大のゲームMODプラットフォームを提供している。毎月3500万人のユーザーが同社のMODプラットフォームであるカースフォージ(CurseForge)にアクセスし、「グランド・セフト・オート(Grand Theft Auto)」、「ワールド・オブ・ウォークラフト(World of Warcraft)」、「ザ・シムズ(The Sims)」などの人気ゲームのMODをダウンロードしている。

これらのMODを使ってプレイするには、プレイヤーはオーバーウルフの「ランチャーアプリ」と呼ばれる種類のアプリを操作しなければならない。同社はこのアプリをP&GやHuluといったブランドの広告枠として活用している。

つまり、オーバーウルフはブランドがプレミアムゲームと並んで広告を出す方法を、ゲーム内広告以外に作り出したことになる。アプリ上でゲームの横に並んで表示される広告なので、ゲーム開発者と直接提携してゲームに組み込む必要はない。バナー広告は同社のランチャーアプリの余白に表示され、同社はブランドイベントやその他のアクティベーションについてプレイヤーに通知するゲーム内ポップアップを実装することもできる。

ゲーム体験全体はオーバーウルフによって管理されている。カースフォージで配布されている「MODパック」群の開発にパブリッシャーやゲーム開発者自身は関与していないのと同様である。

注目度の高さに比例しないゲーム内広告の売上

電通ゲーミングのディレクターであるドン・マクリーン氏は、「オーバーウルフの最先端の性能は、当社のマーケティングの課題に見事にマッチしており、ターゲットとするゲームユーザーにリーチを広げることができた」と述べている。

ビデオゲームは世界中で最も人気のある娯楽の1つに成長したが、すべてのゲーム広告事業がオーバーウルフほどの恩恵を受けているわけではない。

ゲームを使った広告には、ゲーム内の広告看板やポスターなど自然な場所を介してゲーム中に配置する広告として「ゲーム内広告」が存在する。著名なゲーム内広告会社ビッドスタック(Bidstack)のCROであるジュード・オコナー氏によると、ゲーム内広告業界全体の昨年の売上高は推定2000万ドル(約27億円)にすぎなかった。これはオーバーウルフの広告売上の半分以下であり、トレードデスク(The Trade Desk)が2022年第3四半期に報告した3億9500万ドル(約520億円)超の売上高よりもはるかに少ない。

ゲーム内広告会社プレイヤーワン(PlayerWON)の社長であるデイブ・マデン氏は、「私たちは今、テクノロジーやデジタル、広告などあらゆる分野で非常に盛り上がっていた時期から、ある種の巻き戻しを行っている」と述べた上で、「素晴らしいアイデアのように聞こえても、実際にブランドがどれだけ興奮しているかを確認できていたか分からない」と語った。

主な問題点は、ゲーム内広告会社が、コアなゲーマーの間で広く人気を得るような質の高いプレミアムゲームの在庫を大規模にはまだ確保していないことである。現時点では、アンズ(Anzu)やビッドスタック(Bidstack)のようなゲーム内広告会社の在庫のほとんどは、無料で遊べるPCゲームやモバイルゲームの中にある。

「私はアンズで2年間を過ごし、プレミアムゲーム、コンソールゲームという展望を持った上で参加したが、それは実現しなかった」と、アンズの元セールスディレクターで、先月ブランドパートナーシップのディレクターとしてオーバーウルフに加わったマット・ジャブロン氏は述べた。「私が顧客から受ける異論・反対で一番大きいのは、在庫の質、つまりプレミアムゲーム(での広告が足りないこと)だ。誰もが「フォートナイト(Fortnite)」を、誰もが「コール・オブ・デューティ(Call of Duty)」を求めている。モバイル、カジュアル、ハイパー・カジュアルの広告は、ありふれており価値の大きくない広告である」。

重要なのはゲーム内であることではない

2022年のオーバーウルフの爆発的な広告売上は、確かに同社の広告在庫を証明するものであったが、マーケターたちが持つプレミアムコンソールの広告枠に対しての需要を真に満足させたいのであれば、同社はさらに進化する必要がある。現在のところ、プラットフォームはPCゲームに限定されているが、プレミアム・コンソール広告市場に照準を合わせている。

「プレイステーションの広告代理店側で働いていたことがある。もちろん、(マーケターたち)が常に興味を持っていたことでもある」とジャブロン氏のブランドパートナーシップの共同ディレクターであるクリスティーナ・グラッシュキン氏は述べた。グラッシュキン氏もまた最近オーバーウルフに雇われた人材で、以前はストリーム・エレメンツ(StreamElements)のブランド・パートナーシップ担当VPを務めていた。

「私が見てきたところでは、最近のトレンドはゲーム内でブランディングを行うことではなく、実際には最も熱心な視聴者にどこからリーチできるのか、どのように彼らを引き込むことができるのかということだと思う」。

[原文:How Overwolf scored $50M in ad sales by serving ads alongside premium games

Alexander Lee(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)

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