ツクルバ、家の売り買いを身近にする「ウルカモ」–サービス開始から1年を振り返る

CNET Japan

 ツクルバが2022年2月に提供を開始した、家を売りたい人と買いたい人のマッチングサービス「ウルカモ」がリリースから1周年を迎えた。「企画からリリースまでの期間は約3カ月」「リリース後もユーザーの声を聞きながら機能を追加」と、MVP(Minimum Viable Product)の形でローンチしたウルカモは、1年をかけて、よりユーザーに寄り添ったサービスへと進化した。

 ユーザーと一緒に作ってきたウルカモは1年を経てどんなサービスへと成長したのか、また、不動産業界における唯一無二のサービスをなぜ生み出すことができたのかなどについて、ツクルバ 執行役員サプライサイド事業部事業部長の山田悠太郎氏と同事業部事業開発部部長の黒田励氏に聞いた。


ツクルバ 執行役員サプライサイド事業部事業部長の山田悠太郎氏(右)と同事業部事業開発部部長の黒田励氏(左)

不動産売買を変えたいという思いをサービスにした「ウルカモ」

――ウルカモはリリース当初から新しいサービスとして注目を集めましたね。

山田氏:売却検討者は売り出す前に買い手の存在が見え、購入検討者は売り出し前の住まいを知れるというのがサービス提供時に訴求していたウルカモの特徴です。これまでの家の売買は、売ることを決めた人と買う気のある人を仲介事業者が間に入ってマッチングさせるビジネス。それをウルカモは、「売ろうかな」とか「買おうかな」という潜在層まで広げられたと思っています。

黒田氏:リリース時はMVPという形でローンチしたため、企画からリリースまでは約3カ月というスピード開発だったんです。そのため、1年かけて機能を追加し、サービスを改善してきました。1月にはようやく検索機能も追加されて、不動産サービスとして当たり前の形になってきたかなと思っています。現在、会員登録は3400名超で、物件投稿も280件以上。広告による集客はしていないので、純粋にこんなサービスがほしいと思っていた人を集められていると思っています。

――機能追加や改善については、かなり丹念にユーザーの声を聞かれたようですね。

山田氏:ユーザーの方に話を聞いてみると、私たちが想定もしていなかったような発見があるんですね。ウルカモというサービスのコンセプトについては、初期段階からかなり高い評価をいただいていました。

 しかし、当初、投稿した物件には、「スキ」や「買うかも」などのスタンプがついたり、コメントが書き込まれたりすることで、購入希望者の興味度合いがわかるという形にしていたのですが、物件を投稿したお客様から「それだとリアリティがない」と。そこで、お客様同士が直接やりとりできるダイレクトメッセージ(DM)機能を追加しました。

黒田氏:スタンプを用意することで、買い主の購入したいという思いが売り主に伝わり、ちょっと迷っていてもスタンプによって心を動かされるのではないかと想定していたのですが、スタンプだけだと「ちょっと気になっている」のか「本当に買いたい」と思っているのか熱量が伝わりづらかった。DMを入れることによって、「内見にいきたい」「周辺学区の情報を教えてほしい」など具体的な質問が来るようになって、リアリティのある売買意向のやり取りができるようになったと思います。これによって、売り主と買い主のやりとりの頻度も増え、プロダクト上で実取引の手前の部分、つまり内見まで持ってこられるようになりました。

――社内の不動産営業職との棲み分けはどうしているのでしょうか。

黒田氏:社内のコミュニケーションは大変スムーズです。売却担当の営業スタッフが、訪問査定に伺ったお客様のうち、売却検討フェイズにいる方にウルカモのことを紹介したり、投稿を促したり、ウルカモの使い勝手をヒアリングしたりしています。不動産の仲介業は物件を売り買いして得る手数料にフォーカスが行きがちですが、売り主の悩みを知り、課題解決をしていきたいという想いを共有できているので、チームとして協力しやすいです。

山田氏:職種によらずスタッフは全員より良いサービスを作るという思いで取り組んでいます。ビジネス的には短期の売上ももちろん大事ですし、1年先、3年先を見据えた取り組みにも力を割いていく必要がある。そのためにも不動産営業も巻き込みお客様の声を吸い上げる。ツクルバでは、企画職はサービスだけつくり、営業担当者は営業だけするといった縦割りの組織ではなく、お互いがフィードバックを共有しながら、社内が一丸となってサービスを作り上げています。そうでないとお客様に選ばれるサービスはつくれません。

――オンラインとリアルのバランスも大事ですね。

山田氏:不動産は高額商材ですから「あの営業担当者の人だから任せる」という、人と人のつながりが重視されます。オンラインで実務を効率化し、オフラインで人が後押しする、これが一番いい状態が生まれるバランスだと思っています。

――従来型の不動産仲介業がある中で、ユーザーにとってウルカモを使うメリットはどこでしょうか。

黒田氏:売り主にとっては、スピードですね。通常、家の売買には査定、メディア掲載など集客活動、内見対応など3カ月程度がかかります。ウルカモであれば、ウェブサイト上で内見の約束をするところまでいける可能性があり、その場合、買い主候補を抱えた状態で売りに出せることになります。実際に、売り出しから20日程度で契約まで結びついた例もあり、成約までの期間が短縮される可能性が高いです。

山田氏:加えて、家を売りたい人の流入が増えるので、自然と物件のボリュームも増える。物件の獲得は今までお付き合いのあるお客様や、お客様からのご紹介などに流入経路は限られていましたが、ウルカモをスタートすることで、全く新しい流入経路を増やせたのは、私たちの大きな武器になっていると思います。

 買う側のお客様にとっても、ほしい物件が見つからないということはあるんですね。今までは不動産会社から「新しい物件が売りにだされたら連絡する」と待つしかなかったものが、ウルカモの登場により、自分から能動的に探せるようになった。新しい選択肢を提案できるようになりました。

散らばりかけたチームの思いを一つにしたビジョンの作成

――新サービスとして順調に推移した1年のように感じます。

黒田氏:実はそうでもなくて。MVPでスタートしたため、アップデートを繰り返してきたサービスなのですが、開始から半年くらいたったころ、サービスが向かうべき方向性が見えづらくなってしまったタイミングがありました。デザイナー、企画、営業など、それぞれが考える方向性がバラバラになりそうだったので、一度徹底的にディスカッションしてみようと。

 全員集まって、それぞれが抱える課題や思いをホワイトボードにどんどん書き出していったんです。それを受けてウルカモの目指す姿として「共創的な不動産取引の仕組みをつくる。そのために、体験価値をアップデートし続ける。」というビジョンを策定しました。考えに考え抜いて、ウルカモで一番やりたいことを言葉に落とし込んでいったのですが、それが「共創的」という言葉でした。これができたときにこれからの方向性が定まった気がします。

山田氏:ビジョン作成については最後に黒田に決めてもらったんですが、自分の言葉で表現できたことが大きかったと思います。ここからチームが一つになり、信頼関係が強まった感じがしました。


ビジョン

バリュー

――2年目の取り組みについて教えてください。

黒田氏:繰り返しになりますが、この1年はお客様の声をとにかくたくさん聞いてきました。ある意味お客様に励まされ続けた1年だったかなと。ありがたいことに「こんな機能がほしい」「こうしたほういい」と多くの意見をいただけたので、これは2年目も引き続きやっていきたいと思っています。

 もともとウルカモは売却ユーザーの課題解決から発想したサービスで、1年目は特に売却検討者の声をたくさん聞いてきました。2年目はより意識的に購入検討者の声を聞き、購入体験もアップデートしていきたいと思っています。
アメリカには自ら能動的に家探しをする「ハウスハンティング」という言葉があると聞きます。ウルカモは、売り出し前のここにしかない物件に出会えて、売却検討者に直接DMでコンタクトできるという点で、ハウスハンティング的な家探しができるサービスだと思います。そんな新しい住まい探し体験を広めていきたいですね。

 不動産取引の新しい形を作る、この実現に近づきつつあると感じているので、2年目も引き続きがんばっていきたいと思います。

山田氏:ウルカモは新サービスだからといって浮足立つわけでもなく、攻めないわけでもない。いいバランスでサービスを運営できたと思っています。ビジネス的には着実に歩めた1年だったと思います。2年目以降は社内でのシナジーもさらに作りつつ、規模を大きくしていきたいですね。

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