クルマのシステム破りのチャレンジがTikTokで流行って盗難爆増のKia。
今や「アメリカでもっとも盗まれやすいクルマ」といえばKia(起亜)という状態です。
特に狙われているのがKiaとHyundai(現代自動車。Kiaのグループ会社でもある)のエンジンイモビライザー(盗難防止装置)が装備されていない車種で、とうとう米大手保険会社のState FarmとProgressiveの2社が「もう保険でカバーしません!」と言いはじめて朝の全国ニュースになっていました。
「Kiaチャレンジ」と「Kia Boyz」
補償の対象から除外する理由は「盗むのが簡単すぎるから」。
最近の車はたいていスマートキーの暗証コードと車のエンジンイモビライザーのコードが一致しないとエンジンがかからない安全仕様になっているのですが、2社の一部の車種にはコスト削減優先でそれが装備されていません。
それに目ざとく気づいたミルウォーキーの「Kia Boyz」と名乗る不良少年らが「ハンドルの付け根のカバーを破って充電用USBケーブルとドライバーを使えば、いとも簡単にエンジンがかかってしまう 」ことに気づいてシステム破りのチュートリアル動画を公開。
悪乗りしたTikTokerたちが我も我もと他人様の車をハックする動画を公開しはじめて、「Kiaチャレンジ」という社会現象となったのが運の尽きでした。
震源地のミルウォーキーでは車両の盗難が2020年の4,507台から2021年に1万477台に増え、その67%がKiaかHyundaiという異常事態に発展。やがてKia Boyzの模倣犯が全米に飛び火したというわけです。
全体の被害数は不明ですが、全米第2の人口を擁するシカゴ都市圏のクック郡保安局が昨年8月11日に発した警告を見ると、
ここ数か月全米各都市でKiaおよびHyundaiの車両の盗難が急増している。当郡においても7月1日からすでに642件の盗難が通報されており、昨年同期の74台から767%も増えている。
とあり、被害のすさまじさが伺えます。
下の動画に登場するのは2回連続で狙われたニューオーリンズのKiaオーナーです。
人の車を盗んでおいて”Kiaボーイズ”っていきがってんの、どうかしてる。TikTokでは盗み方教える動画がアルゴリズムで上位にいってるなんて、ほんと信じられない。
と激おこです。これにはクック郡保安局も同感で「まったくクレイジーだ。TikTokに削除要請した」と言ってます。
まあ、今はWebを検索するだけで、やり方が文章と写真でくわしく出てきますので、動画が消えても手遅れって気もしますけどね…。
どんな車が狙われてるの?
気になる車種ですが、メディアによっては「2015~19年式」と報じているところもあれば「2011~2022年式」と報じているところもあって判然としません。
いちおう、犯人たちは「ボタンではなく鍵穴のある車種」という大雑把な見分け方をしているようです。
Hyundaiは「ホットワイヤーできない車種がターゲット」と発表していますが、それだけの条件だったら昔の車みんな盗めるわけでして、なんでことさらに韓国車が狙われるのか謎。
まあ、最近は追いつき追い越せでよく売れてるので、「コスト優先で安全装備を怠った」という話を広めて廉価モデルに飛びつく人たちのマインドを凍り付かせるという、手の込んだ営業妨害なのかもしれません。
それでも売れる韓国車
そんなKiaとHyundaiではありますが、秋口になっても失速は見られず、昨年10月には米国内で記録破りの売れ行きでした。
Kiaは5万8276台売れて前年同期比11.9%増。TikTokerがいくら嫌がらせしても売れるものはしょうがないですね。
保険のカバーは心配ですけど、Hyundaiは昨年、Kiaは今年のモデルから安全装備も万全にしてますし、盗難されやすい車種についても盗難予防キットを170ドル(約2万2500円)+サービス料300ドル(約4万円)で配布中です。
また、セントルイスのディーラーさんとかはBluetoothの簡易イモビライザーシステムをオンラインで99ドル(約1万3100円)で売っています(それを取り付ければキーのボタンを押さないとエンジンがかからなくなる)ので、打つ手がないわけじゃありません。
ちなみにミルウォーキーの盗難車の数は今年に入ってすでに5,666台で、うち59%はKiaかHyundaiでした。こちらも失速は見られず、いばらの道は当分続きそうです。
Source: Good Morning America/YouTube