Twitterの代替となり得るプロトコルNostrを採用したアプリ「Damus」が中国のApp Storeから公開2日後に即削除される

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APIの有料化や突然発生したアカウントの大量凍結で不安を抱えたTwitterユーザーの中には、Twitterアカウントが凍結された時に備えてInstagramなどのアカウントを開設したり、代替となるTwitterに似たアプリを模索したりする動きが見られます。そんな中で注目を集めている分散型SNSプロトコル・Nostrを採用したアプリ「Damus」が、AppleのアプリストアであるApp Storeに登場してからわずか2日で、中国のApp Storeから締め出されてしまったことが明らかとなりました。

Damus pulled from Apple’s App Store in China after two days | TechCrunch
https://techcrunch.com/2023/02/02/damus-pulled-from-apples-app-store-in-china-after-two-days/

Apple yanks Twitter-like app from the App Store citing Chinese demands | iMore
https://www.imore.com/apps/social-apps/apple-yanks-twitter-like-app-from-the-app-store-citing-chinese-demands

Apple pulled Damus from the App Store in China; absurd grounds
https://9to5mac.com/2023/02/03/apple-pulled-damus-from-the-app-store-in-china-after-ridiculous-government-claim/

Nostrは検閲に強いグローバルSNSを構築するために開発された分散型SNSプロトコルであり、Twitterの創業者であるジャック・ドーシー氏が開発資金を援助したことでも知られます。Nostrは従来のソーシャルメディアプロトコルのように中央サーバーに依存していないのが特徴です。その代わりに、すべてのユーザーは好きな「リレー」サーバーに参加し、自分の投稿を複数のリレーを通じて公開したり、リレーに投稿されたコンテンツを閲覧したりできます。このシステムにより、ユーザーは特定のリレーが検閲されてしまったとしても、別のリレーを通じてコンテンツを投稿することが可能です。

そして、Nostrをプロトコルとして実装したアプリの1つが、テキスト送信に特化したシンプルなTwitterのようなアプリ「Damus」です。プロトコルの「Nostr」とアプリの「Damus」を組み合わせると「NostrDamus」となり、予言者として知られる「ノストラダムス(Nostradamus)」の名前を暗示したネーミングとなっています。

なお、Twitterは2022年12月に「競合となるSNSのアカウントを宣伝することを主目的とした利用を禁止する」というポリシーを発表した際、大手SNSのFacebookやInstagram、Twitterの代替プラットフォームとして人気上昇中のMastodonと並べてNostrの名前を挙げており、アプリのリリース前からNostrを警戒していることがうかがえます。

TwitterがFacebook・Instagram・Mastodon・Truth Social・Tribel・Nostr・Postの自アカウント宣伝ツイートを削除しアカBANができるようポリシー改定するも即撤回 – GIGAZINE


web3インフラストラクチャーのスタートアップ・ByteTrade LabのCOOを務めるFrank Hu氏は、Damusはユーザーが参加したいリレーを自由に選択できるシステムであり、リレーごとにさまざまな特色が現れ、リレー間でのユーザー獲得競争も発生するだろうと主張。「リレーの運営者はインフルエンサーやポルノスターのファンをターゲットにして、有料または無料、検閲ありまたは検閲なしのさまざまなコミュニティを構築できます」と、Fu氏は述べています。

Damusは分散型SNSであるため、プラットフォームに参加する人物やコンテンツを統制する中央当局が存在しません。一方でAppleは、サービスに対してコンテンツにフラグを立てられるようにすることを求めているため、Damusのアプリ公開に向けた承認プロセスは難航したとのこと。

そして2023年2月1日、ようやくAppleのアプリストアであるApp StoreでDamusがリリースされました。ドーシー氏はTwitterでこのことに触れ、「オープンプロトコルのマイルストーン……NostrはDamusアプリと共に、AppleのApp Storeで正式に公開されました」とツイートしました。


ところが、App StoreでDamusが公開されてからわずか2日後に、Damusは中国サイバースペース管理局(CAC)の申し立てを受けて中国のApp Storeから削除されてしまいました。Appleからの通知には、「私たちはCACからの要求により、あなたのアプリケーションがApp Store審査ガイドラインに準拠していない中国で違法とされるコンテンツを含んでいるため、中国のApp Storeから削除されることをお知らせいたします」と記されています。


テクノロジー系メディアの9to5macは、「Damusには違法なコンテンツが含まれている」というAppleの説明について、「Dmusや他のNostrクライアントが違法なコンテンツを含んでいるという主張はまったくナンセンスです。このアプリにコンテンツは一切含まれていません。これは、テロ組織のウェブサイトにアクセスするために使われる可能性があるからSafariを禁止するようなものです」と指摘。Damusはあくまでもコンテンツを配信するクライアントとして機能するだけだと述べています。

記事作成時点では、すでに中国国内でインストールされたDamusは使用することが可能だそうで、検閲システムに引っかかることなくコンテンツの閲覧や投稿が可能だとのこと。Fu氏によるとすでにDamusには約300ものリレーがあり、すべてのリレーをシャットダウンするのは非常に困難だとのことです。

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