食虫植物ウツボカズラの一種は虫ではなく動物のうんちを食べる「生きた便器」へと進化している

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by Badaruddin Hipni

ウツボカズラなどの食虫植物は、昆虫を捕食することで窒素分などの栄養素が乏しい土壌でも繁殖する能力を獲得しています。さらに、昆虫を捕まえにくい高山に生息するウツボカズラの一種は、昆虫ではなく動物の排せつ物を食べることで効果的に栄養を摂取していることが新たな研究で判明しました。

Capture of mammal excreta by Nepenthes is an effective heterotrophic nutrition strategy | Annals of Botany | Oxford Academic
https://doi.org/10.1093/aob/mcac134

Carnivorous plants have turned to capturing mammal droppings – Scimex
https://www.scimex.org/newsfeed/carnivorous-plants-have-turned-to-capturing-mammal-droppings

Some carnivorous plants evolved to eat poop instead of bugs. And they’re better off for it. | Live Science
https://www.livescience.com/poop-eating-pitcher-plants-nutrients

オーストラリア・ビクトリア州王立植物園の植物学者であるアラステア・ロビンソン氏らが今回の研究に着手したのは、マレーシアのボルネオ島に生息するツパイという小動物が、ウツボカズラの一種であるNepenthes lowiiが持つ捕虫器で頻繁に排せつをしていることを突き止めた2009年の研究がきっかけです。

その後の観察により、この種のウツボカズラはツパイだけでなく鳥やネズミ、コウモリなどの動物のフンも餌にしていることが分かりましたが、動物の排せつ物と昆虫とでは植物が得られる栄養素がどれだけ違うのかの比較は行われてきませんでした。

そこでロビンソン氏らは、ボルネオ島の高山に生息し、動物の排せつ物を食べていることが分かっているウツボカズラ6種とそれらの雑種4種、合計10種から組織サンプルを採取して、低い地域に生息する近縁種の食虫植物や、普通の植物と比較しました。

by Alastair Robinson

その結果、ウツボカズラのサンプルは近隣の植物に比べて、窒素の放射性同位体である「窒素15」の濃度が有意に高いことが確かめられたほか、動物の排せつ物を食べているウツボカズラは昆虫を食べているウツボカズラよりさらに窒素15のレベルが高いことが分かりました。

ロビンソン氏は発表の中で、「ウツボカズラ属の植物の中には、肉食から動物のフンを食べるように進化した種がいくつかあります。今回の研究で、哺乳類のフンを捕獲する種は他のウツボカズラ属に比べて、窒素の捕獲量が2倍以上多いことが分かりました。標高2200メートルを超えるような熱帯の山では、餌となる昆虫が少ないので、動物のフンのような栄養価の高い窒素源を集めることで、栄養的なリターンを最大化しているのでしょう」と話しました。

一般的な食虫植物のウツボカズラは、甘い蜜の香りで昆虫をおびき寄せ、内側がつるつるした袋状の捕虫器に落として消化します。動物の排せつ物を食べるウツボカズラも甘い蜜で小動物を誘い出しますが、だますのではなく実際に蜜を食べさせます。しかし、蜜を食べるのには時間がかかるので、動物は長い間捕虫器にまたがらざるを得ず、結果として蜜の見返りにフンを与える事になるというわけです。

by Clarke et al. 2009

研究チームは、標高の高い場所に生息するウツボカズラほど、必要な栄養素を得るために選択的かつ機知に富んだ食事をしなければならないのだろうと、記しました。

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