選挙をもっと深く知るために:三浦博史『地方選挙実践マニュアル』

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岸田内閣の支持率が低迷する中で、G7サミット閉幕後の政局に注目が集まっている。その成否を左右するのが、今春の統一地方選挙である。全国の知事選、県議選、市議選、市町村議選での結果次第では内閣の基盤が揺らぎかねない、今年最注目の選挙である。

評者自身も候補予定者として日々政治活動に専念する中で、参考書として活用するのが本書である。多くの候補予定者にとって、自分自身の現在位置が分かるとともに次に何をしなければいけないのか丁寧に説明が為されている。

しかし、単なる候補予定者向けのマニュアル本としてではなく、今年最も重要な選挙を外野から楽しむための案内本としても活用できるのが本書の特徴だ。

例えば、読者がお住いの地区で目にする候補予定者のことを考えてほしい。読者は日々駅前や街中に貼られたポスターで見かける彼らのことを、どの程度深く理解しているだろうか。候補者の話に足を止め、経歴や政策を確認しているだろうか?

本書ではメラビアンの法則として、多くの人は外見や好感力で無意識のうちに人を判断していることが紹介されている。従って、戦略的な候補者は立ち居振る舞いを含めた総合的な意味での外見力を磨いて有権者に接していると、読者は意識して各候補者を観察してはどうだろうか。

選挙史に残る効果的な宣伝にも注目したい。誹謗中傷や怪文書の類は論外として、事実に基づいた所謂ネガティブキャンペーンは選挙戦を盛り上げるとともに、勝敗を左右する決定打となりうる。

そこで著者は、1964年のアメリカ大統領選の勝敗を決定づけた伝説のCMを紹介する。YouTubeでも視聴可能なので、是非本書と併せて確認いただきたい。

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その上で、筆者が今春の統一地方選候補者に注意を促すのは、スマートフォンによって候補者の隠された一面がさらけ出されるスキャンダルである。たしかに、アメリカ大統領選挙と日本の地方選挙ではスケールが大きく異なる。しかし、たとえ断片のみの切り取りであったとしても、「事実」に基づいた批判は敵陣営のみならず身内からも発生しうることがSNS選挙の特徴だ。

各政党や各候補予定者で、選挙戦略は様々だ。また選挙時点での内閣支持率や各政党支持率も重要な要素である。その上で選挙史や最新の選挙動向を頭に入れておくと、4月9日と23日の選挙速報は面白さが倍加する。

政治とは「まつりごと」である。各政党の戦略や各候補予定者の生き様を、楽しく観戦してはどうだろうか。

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