スマートホーム普及の鍵「Matter」をアクセルラボCTOが解説–「スマートホームは当たり前の時代に」

CNET Japan

 スマートホームサービス「SpaceCore(スペースコア)」を展開するアクセルラボは1月26日、スマートホーム業界の最新動向について説明会を実施した。あわせて、東京都新宿区にオープンした「アクセルラボショールーム」を公開した。

「アクセルラボショールーム」内には約30のデバイスが設置されている
「アクセルラボショールーム」内には約30のデバイスが設置されている
「アクセルラボショールーム」入り口には、スマートロックやスマート宅配ボックスなどが並ぶ
「アクセルラボショールーム」入り口には、スマートロックやスマート宅配ボックスなどが並ぶ

 SpaceCoreは、スマートロックやスマート宅配ボックスなど、IoT化した住宅設備やスマート家電により生活を便利にするスマートホームサービス。IoT機器をつなぎ合わせるソフトウェアの開発に特化していることが特徴で、現在約250社、2万1000戸に導入が進んでいるという。

 アクセルラボショールームでは、約50平方メートルの広さにリビング、ダイニング、キッチンとベッドルームを設け、スマート家電リモコンや屋内カメラ、ドア・窓センサーなど、約30のデバイスを設置。専用アプリを使って、帰宅時、お出かけ時、就寝時などシーンに応じた設定をすることで、お出かけ時はエアコン、テレビ、照明などがすべてオフになり、ロボット掃除機が稼働するなど、アプリでの操作から、機器を連携して動かせる。

 説明会では、アクセルラボ 取締役 CTOの青木継孝氏が、スマートホームの統一規格である「Matter」について解説。「米国では25年ほど前にスマートホームが登場しており、2026年には半数の家庭がスマートホーム化すると言われている。日本においてスマートホーム化されているのは10数%という数字だが、今後3年で4割程度まで普及すると見込まれており、スマートホームは当たり前の時代に近づいている」と現状について話した。

アクセルラボ 取締役 CTOの青木継孝氏
アクセルラボ 取締役 CTOの青木継孝氏

 Matterは、バラバラだったスマートホームの規格を統一し、どのプラットフォームでも使えるようにする共通規格。「今までは使っているプラットフォームを意識してデバイスを購入しないといけなかったため利便性が低かったが、Matterにより便利にスマートホームが使えるようになる」(青木氏)とメリットを説明する。

 青木氏によるとMatterの特徴は、(1)オープンソースの規格であり誰でも自由に仕様を参照し開発することができる、(2)BluetoothやZigBee、Z-Waveといったスマートホームプロトコルとの互換性を持っているため、既存のさまざまなデバイスと接続できる、(3)セキュリティに配慮して設計されているため、デバイス間の通信の安全性が確保される、(4)BluetoothやQRコードを用いて、スマートフォンで簡単にデバイスを接続できるため、スマートホームの利用や設定が容易になる、の4点。

 「Matterの登場により、スマートホームデバイスは標準化の方向に進む。ただ、いきなりすべてのデバイスがMatter対応にはならず、少しずつ数が増え、機種を増やしていく試みになる」(青木氏)の普及度合いについて話した。

 2023年1月の時点で、550種類の製品がMatterの認証を取得しており、150種類が取得待ちの状態とのこと。2022年の11月には190種類程度だったとのことで、約3カ月で4倍近くに増えた計算になる。

 Matter規格は、CSA(Connectivity Standards Alliance)が規格を推進しており、これは、無線技術ZigBeeを管理するZigBeeアライアンスが2021年5月に名称変更したもの。現在、Matter規格を推進するCSAメンバーシップを募っており、スマートホーム関連業界の大手企業が多数参画。その数は550以上にのぼる。

 「CSAメンバーシップには種類があり、上位の『Promoter』には29社が名を連ねているが日本企業はゼロ。その次の『Participant』は274社が参加しており、日本企業は9社入っている。この中にアクセルラボも参画している。9社中の半数はスタートアップが占めており、Matterの普及はスタートアップが牽引していくと言えるのではないか」(青木氏)とコメントした。

 アクセルラボでは、ハードウェアは作らず、ソフトウェアに特化してスマートホームを推進してきた。しかし青木氏は「Matter対応のためゲートウェイだけは開発しようと方針を転換した。これにより、自社のサービスに必要な連携デバイスを迅速に拡大できるとともに、海外のクラウドを介さず国内のクラウドのみで管理する事により、動画データやログデータの管理など日本国内でのスマートホーム展開における信頼性を確保できる」(青木氏)とメリットを強調する。

Matterによりスマートホームはどう変わるのか
Matterによりスマートホームはどう変わるのか

 青木氏は「Matterですべての接続問題が解決するのかといったらそうではない。ガス給湯器や炊飯器など、ローカルなデバイスは標準化されない可能性がある。加えて、標準化されるのは基本的な操作のみとなり、指紋認証やICカード対応といった機器固有の機能や設定は個別のアプリなどで設定しなくてはならない可能性がある。しかしこれらのケースもオリジナルゲートウェイとクラウドにより対応できる」とした。

 アクセルラボでは、Matter準拠のIoTゲートウェイとクラウドを開発し、連携デバイスを拡大していく計画。「Matterにより、スマートホームは利便性から、課題を解決するサービスへ進化する。アクセルラボはIoTプラットフォームとスマートホームサービスを自社開発し進化を続ける」(青木氏)とまとめた。

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