法改正するつもりもない防衛省、自衛隊は無人機や無人車輌の調達を中止すべき

アゴラ 言論プラットフォーム

vadimrysev/iStock

先日防衛省で情報通信課からレクチャーを受けました。恐らく、大臣会見で無線や無人機の周波数帯や法規制について質問したからでしょう。

ですが、彼らの持ってきた資料は「国家防衛戦略について」のコピーだけで言われたらから仕方なくレクしました感が漂っていました。

で、無線機の周波数帯が他国と違っても問題ない。

そうであれば、なんで他国は違う周波数帯を使っているのでしょうか。実際問題として現場の隊員が米軍の無線機と露骨に違うといっているのに。

また無人機に関して他国は5GHzを使っているのに、我が国だけ2.4GHzを使用しているのを改めるかと聞いても答えられない。

スキャンイーグルも自衛隊向けは2.4GHzにスペックダウンされているが、墜落事故がおきるのは周波数帯とは関係ない、プログラムの問題だと。

そしてイージス艦のイージスレーダーは沖合50海里に出ないと使用できないが、アショアでこれを使うこと、50海里内でイージス艦がこれを使うことは電波法違反ではないか。イエス・ノーで答えられる質問にも答えられない。

一体何のためのレクだったのでしょうか。こういう話ならばやらない方がお互い時間の無駄にならないと思います。

自衛隊を縛るドローン規制の時代錯誤「自撮り棒にカメラを付けて走った方が速い」

自衛隊を縛るドローン規制の時代錯誤「自撮り棒にカメラを付けて走った方が速い」(ダイヤモンド・オンライン) – Yahoo!ニュース
 ドローンの本格導入にかじを切り始めた自衛隊だが、厳しい規制によって有事でもまともに飛ばせないのが実情だ。「飛距離が海外製と比べて20分の1」「ドローン本体を目視しての操縦を強いられる」「ドローンが

ドローンの本格導入にかじを切り始めた自衛隊だが、厳しい規制によって有事でもまともに飛ばせないのが実情だ。「飛距離が海外製と比べて20分の1」「ドローン本体を目視しての操縦を強いられる」「ドローンが操縦不能になる場合がある」

本記事で取り上げるのはこれとは別、総務省の管轄する“ある規制”である。この規制によって、何が起こるかといえば、防衛や災害対応を担う自衛隊のドローンが、有事でも数百mしか飛ばせない、あるいはドローンが操縦不能になり墜落の危機にさらされる、ドローン本体を目視しての操縦を強いられる、などだ。複数の現役陸上自衛官がこれを証言している。

このような実態があるにもかかわらず、なぜ広く話題にも問題にもならなかったのか。これまで自衛隊のドローン運用に関する一部の専門家の過去のコメントを拾う限り、どうやら自衛隊もウクライナ軍と同じような運用ができる、自衛隊は遅れていないと思い込んでいた節がある。

基本的に防衛省や自衛隊は法令を現実に合わせるために、法改正することを嫌がります。で、現場ではその規制にあわせて「やったフリ」をしているだけです。なんのために防衛庁から昇格して「政策官庁」である防衛省に格上げしたのでしょう。やる気がないから内閣の外局の防衛庁に戻したほうがいいです。

恐らく兵器の専門家といえども、民生用ドローンの知識はカタログ程度で、操縦の経験も少ない、あるいは経験がないことから、規制とその影響を考慮できなかったと思われる。彼らは自衛隊が外部向けに広報の一環として示すドローンを飛ばす姿だけを見て「やってる」と判断していたのだ。

これはぼくらのように兵器の見本市に顔を出していれば馬鹿にでも分かる話です。そういうポジションの人間が見本市やコンファレンスにいかずに、自衛隊内部で「俺たち最高!」をオ○ニーをしているからこうなるのです。

だが、実態は「数百mの距離であれば、ドローンを飛ばすより自撮り棒にカメラを付けて走った方が速い!」と現役の陸上自衛官に言わしめるほど、がんじがらめに規制し、自衛官の身動きを取れなくしている。

浜田防衛大臣はこの現実をご存知でしょうか。恐らく「なんの問題もありません」とレクを受けているのではないでしょうか。

本記事で取り上げる規制は、それとは別のもの。総務省の管轄する電波法である。電波法はドローンとそれを操縦するコントローラーを結ぶ電波に関する規制と、電波を使用する機器に対する電波法に基づく基準認証(技術基準適合証明、いわゆる技適)という総務省管轄の無線通信全般に関する法律だ。

この適用範囲はドローンだけでなく無線機、携帯電話、スマートフォン、Wi-Fiといった通信機器全般に及んでいるが、これが日本をデジタル後進国にするがんとなっている。

まさにそうです。電波に関しては利権だらけです。だから官僚だけでは解決できない問題も多い。ですが政治家は利権が大事だったり、無関心できました。

かつては日本はラジコン機の最先端で農薬散布の無人機利用も早期に実現していました。要は無能な政治と、ことなかれ主義の官僚組織が経済成長の芽をつんできたわけです。

電波法のドローン規制の内容を見ていこう。日本では世界でもまれなことにドローン操縦で無条件に使用できる電波の周波数は主に2.4GHz(ギガヘルツ)帯に限られている。世界でこんなにも制限をかけているところはない。

無線技士免許の取得や操縦ライセンス取得などさまざまな条件をクリアすれば5.7GHz帯や5.8GHz帯といった伝送容量と速度にたけた、いわゆる5GHz帯の周波数を使用する産業用機体などの利用も可能ではあるが、それにはコストや手間がかかる。

現在、自衛隊が所有している小型ドローンは災害用と位置付けてはいるが、一般向けに市販されている民生用の機体が主で、利用可能な電波は2.4GHz帯の周波数に限られている。

欧米や中国など多くの国では主に5.8GHzを含む5GHz帯を使用する機種が標準的で、このパワフルな通信環境を生かしたドローン利用が盛んとなっている。だが、たとえ海外メーカー製で外観が同じ機種でも、日本で販売する際には電波法によって使用する電波の仕様を2.4GHz帯の周波数に改められ技適を受けた日本仕様となる。

だからスキャンイーグルも日本向けにスペックダウンしたわけです。その分値段も上がっているはずです。能力を低くして値段を上げている。

この仕様変更で生じた費用は必然的に販売価格に上乗せされることにより、海外販売価格に比べて3割から、まれに10倍以上の価格で販売されることが常態化している。日本の電波法によるドローンの電波の仕様の事情だけで見ても、民生利用とともに自衛隊のドローン導入コストが割高になっているのはご理解いただけるだろう。

つまり自衛隊では多額の税金を使ってクズを導入しているわけです。先のレクでぼくが報じた東日本大震災でFFOSやFFRSが飛ばなかったのは周波数帯にも問題があったのではないか、という質問にも明確な回答はありませんでした。

常識的に考えれば、長距離で目視外で操縦するこれらの無人機が周波数帯の問題を受けないわけがありません。防衛省は魔法でも使えるのでしょうか?

技術的な観点から見ると、前述した通り日本では2.4GHz帯の電波を使用するのはドローンだけに限らず多くの人が日常的に使用するスマホ、WiFi、Bluetooth機器なども同じ、あるいは近い周波数の電波が使用されている。この影響で電子機器同士の電波の干渉や障害が発生しやすい実態がある。

2.4GHz帯は機動性が高く途切れにくいという特性もあり、入り組んだ構造の室内等では有効とされているが、屋外での使用が主になるドローンに関して言えば、5.8GHz帯をはじめとする5GHz帯に比べて伝送容量も少なく伝送速度も遅い。そのため、ドローンのカメラから手元のコントローラーに送信される映像にも遅延が発生するので、映像を見ながらの操縦にもリスクが伴うなど、デメリットが多い。

これを放置して無人機や無人車輌、無人艇を大人買いすることは防衛費を溝に捨てることに等しいわけです。溝に金を捨てるために防衛費を2倍して、借金で軍拡するとか、増税で軍拡するとか大騒ぎしています。

軍拡前にタダでできる法改正があるのに、それをやろうとしません。自民党国防部会とか清和会って馬鹿なんですか?

さらに電波の強弱によって影響を受けるのは、ドローンの飛距離だ。この点は前述した海外メーカーの現地仕様と日本仕様を比較すれば明らかで、2022年に米陸軍が短距離偵察用ドローンRQ-28Aとして正式採用した米Skydio社の機体では、米国仕様が最大6kmと表記しているのに対し、同型機種の日本仕様の国内販売を行うNTT-eドローンのウェブサイトには電波法の規制を併記した上で飛行距離を300m程度(推奨値)と記載されている。

なんと6km飛ぶドローンが、日本では20分の1になっているのだから笑えない。ただ、他のメーカーの中には、電波障害のほとんどない開けた場所における最大飛行距離の数kmを飛行可能距離として記載するなど基準も曖昧だ。

筆者の2.4GHz帯の機体操縦経験では、電波干渉がほとんどない山岳地帯では500m以上の距離を飛ばせたのに対して、WiFiルーターが複数設置された都内にある大学の室内では数mの至近距離にもかかわらず、操縦不能になるといったこともあった。操縦不能になれば、当然だが、墜落する危険がある。このような状態が自衛隊の現場で起きていることは、複数の現役陸上自衛官への取材でも明らかになっている。

最も印象に残っている自衛官のコメントは「ドローンの電源をONにして離陸準備するのにも電波障害で手間取ることがある。数百mの距離であれば、自撮り棒にカメラを着けて走った方が速い!」である。ここまで言わしめるほどに自衛隊のドローン運用に対して電波法が障害になっているのだ。これでは災害対応どころか、同盟国との連携や訓練、ましてやウクライナ軍のような活用は夢のまた夢である。

一体何のために米英仏豪軍と共同訓練をやっているのでしょう?単にやっているフリするだけのためならば、訓練費用がもったいないので共同訓練は全廃するだけです。

昨年の8月末から数件発生した中国本土から数キロの距離にある台湾の金門島にドローンが飛来する事案が発生したが、この飛距離を飛ばせるのも中国のドローンが5GHz帯の電波を使用しているからこその結果であることは間違いない。

筆者はその危機的かつ一刻の猶予もない状況を認識するからこそ、時に批判されながらも技術的な根拠やドローンの操縦、実験などの経験や結果に基づき可能な限り誤った言説を否定し、自衛隊のドローン運用に対する規制緩和および規制除外の声を挙げて、理解を求めてきた。

その理由は単純で、災害が多い日本では誰もが被災者になる可能性があり、国民保護の観点からも数百mしか飛べないことと数キロ飛べることとの違いによって助かる命も助からない可能性が高いと考えるからである。言い換えれば航空法、小型無人機等飛行禁止法、電波法といった規制が、ドローンを活用した自衛隊による災害対応や人名救助の妨げになっている現状がある。

まさにこういうことがFFOSやFFRSが東日本大震災で飛ばなかった原因ではないでしょうか。防衛省はこれらに関する報告書を公開すべきだと思います。

こうした言説が幸いしてか、22年の年末に公表された安保3文書(「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の総称)における「国家防衛戦略」の項目「III 我が国の防衛の基本方針~1 我が国自身の防衛体制の強化(2) 国全体の防衛体制の強化」には「民生用の周波数利用と自衛隊の指揮統制や情報収集活動等のための周波数利用を両立させ、自衛隊が安定的かつ柔軟な電波利用を確保できるよう、関係省庁と緊密に連携する。」という記述がなされた。

しかし、いつまでに、何をするのか、具体的な記述はない。これが規制緩和の糸口になるか、それとも単なる記述だけで終わるのかによって自衛隊のドローン運用の将来が決まるだけでなく、日本の防衛や災害対応など我々国民の生命すら左右する重要事項と言っても過言ではない。

今回のレクを受けた限り防衛省や自衛隊には何もやる気がないでしょう。多額の予算を投じてわざわざ性能を低下させて高額にしたクズ無人機を調達します。まるで中国のために我が国を疲弊させ、自衛隊を弱体化させようとしているとしか思えません。

これだけおかしな規制があるわけですが、在日米軍には適応されません。電波障害が起こるなどの問題があれば在日米軍も規制すべきですが。それはありません。同じ電波でも米軍が使うのは「いい電波」で自衛隊が使うと「毒電波」になるのでしょうか。

宗主国には無いも言えないのでしょうか。こういう「同盟国」を米国は本当に信用しているのでしょうか。大変疑問に思います。

【本日の市ケ谷の噂】
陸自の看護官は卒後すぐ、防衛医大ではなく、患者の少ない陸自の自衛隊病院で研修とな
るため不満が多く退職も多い、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2023年1月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。