NASAの次世代宇宙望遠鏡、2040年代の運用を目指します

GIZMODO

NASAの担当者は先日開催されたアメリカ天文学会の集まりの場で、次世代型宇宙望遠鏡Habitable Worlds Observatory(ハビタブル・ワールド・オブザーバトリー、以下HWO)についての情報を明らかにしました。

この総会の中でNASAの科学ミッション局宇宙物理学局長のMark Clampin氏が、早ければ2040年代に運用される同望遠鏡に関する詳細をいくつか語ってくれたのです。

地球以外に住める星を探す

次世代宇宙望遠鏡の必要性は、業界の専門家数百名がその分野での向こう10年の目標を定めた報告書、全米科学アカデミーによる天文学・宇宙物理学のディケーダル・サーヴェイ(10年ごとの調査)の中で説明されています。

2021年末に公表されたディケーダル・サーヴェイでの提言事項のひとつが、地球以外の生命居住可能な世界をその目的専用に設計された望遠鏡を使って探すことでした。

報告書で提案されたのは、可視光・紫外線・近赤外線の波長域を撮像する口径6m級の望遠鏡を備えた110億ドル(約1兆4000億円)の天文台です(ハッブル宇宙望遠鏡は主に可視光と紫外線、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は中赤外線と近赤外線の波長域で観測)。

ディケーダル・サーヴェイの執筆者らは、HWOを新グレートオブザーバトリー計画の第1弾、つまり次世代の宇宙望遠鏡の基軸として提案したのです。

Scienceが伝えているように、サーヴェイが提言した太陽系外惑星に焦点を合わせた宇宙望遠鏡は、かつてNASAが計画していたHabExLUVOIRという2つ望遠鏡コンセプトの中間に位置するものです。

太陽系外惑星は定期的に発見されていますが、私たちの知る生命に適した条件を持つ世界を探すとなると難しくなります。

ウェッブ宇宙望遠鏡は系外惑星を発見しており、大気組成のある面を明らかにし、他の望遠鏡(ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡のような開発中のものでさえ)も地球以外の世界に目を向けています。

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ウェッブ宇宙望遠鏡が発見したばかりの系外惑星「LHS 475 b」と、その主星のイラスト
Illustration: NASA, ESA, CSA, L. Hustak (STScI)

地球外生命体の探索はNASAの目標

運用中や構想段階にある他の望遠鏡と違って、計画されたHWOは生命を育めるかもしれない条件を持つ世界、いわゆるゴルディロックス惑星を対象に観測します。

地球外生命体の探索というのは、NASAの飽くなき目標です。火星にいる探査車パーサヴィアランスがかつて水の流れる河川デルタだった地帯で岩石サンプルの収集などをしているのは、火星に古代微生物の生命の痕跡があるかどうかを知るためです(科学者たちはその一帯が地球の最初の生命が誕生した環境と似ていたと、信じています)。

火星以外だと、今後の探査機は木星の衛星エウロパの地下海か土星の衛星タイタンのメタンの海で生命の兆候を探し回ることを期待されています。

しかしそれらは、あくまで太陽系内にある(地球と比べて過酷な)目的地。トランジット系外惑星探索衛星(TESS)とケプラー宇宙望遠鏡といったミッションは数千個の系外惑星を検出していましたが、それが地球類似型惑星だという割合はほとんどゼロに等しいのです。

ウェッブ望遠鏡と同じく、HWOは地球から100万マイル(約160万km)離れていて比較的少量の燃料消費で留まることができる第2ラグランジュ点(L2点)から観測する予定(燃料を節約すれば、ミッションの寿命を引き延ばせます)。

HWOは整備と改修を行なえる設計になるだろうとClampin氏が述べていたとScienceには書かれており、ウェッブ宇宙望遠鏡とは異なる点です。そうなれば、HWOはNASAの宇宙望遠鏡の中でより恒久的な存在感を示せるかもしれません。

修理と改修はロボットが担当

ご存知のとおり、ハッブル宇宙望遠鏡は宇宙での32年に及ぶ運用期間において数々の機械トラブルなどに見舞われたため、人間が幾度となく地球低軌道上で修理を行なってきました。

HWOの修理と改修は、ロボットが実施することになります(地球からは100万マイル離れているので人間が修理に向かうには遠すぎますからね…)。『スター・ウォーズ』のドロイドのような感じでしょうか。

SpaceNewsによると、NASAは近々この新望遠鏡のための科学・テクノロジー・アーキテクチャー精査チーム(Science, Technology, Architecture Review Team、START)に携わる人々の推薦を始める模様。開発の最初のフェーズは2029年を予定しています。

11月にはClampin氏がアメリカ議会下院の小委員会に、ウェッブ望遠鏡は微小隕石衝突を14回も受けたと伝えています。微小隕石とは、非常に小さくて高速な隕石の破片で望遠鏡の鏡を損傷しかねません。

彼はNASAのチームが「今後の衝突を避けられるよう運用を一部変更」したと述べ、今後の衝突のリスクを減らすため同望遠鏡の位置はわずかに変えられたのでした。

鏡セグメントのひとつは微小隕石衝突によって損傷してしまいましたが、チームの分析によって同望遠鏡は「長年にわたって光学性能要件を満たせるはず」だと判明しています。

天文学コミュニティにとって何より重要なのは、新たな宇宙望遠鏡の予算と開発スケジュールが順調に進むこと。ウェッブ宇宙望遠鏡の計画は年単位で遅れ予算も大幅にオーバーしていました。

2035年のHWO打ち上げという前倒しの開発スケジュールを求めている科学者たちもいると、SpaceNewsは報じています。

前倒しとまでいかなくても、予定どおり順調に開発が進んでくれることを祈るばかりです。

Source: National Academies, Science, NASA JPL, NASA Goddard, NASA Exoplanets, TESS at MIT, NASA, SpaceNews, Quartz,

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