広がる「ChatGPT」の波紋 ほか【中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」2023/1/11~1/18】

INTERNET Watch

1. 画像生成AIは芸術市場に損害を与えるか?

 多くの人がいずれは法廷に持ち込まれると思っていた事案だ。米国の弁護士マシュー・バトリック氏が3人のイラストレーターとともに画像生成AIに関わる企業、Stable Diffusionを開発する英Stability AI、アート投稿サイト・コミュニティを運営する米deviantART、画像生成サービスを提供しているMidjourneyを提訴したと報じられている(ITmedia)。その趣旨は「無許可で著作物を大量に学習したAIが芸術市場に永続的な損害を与える」ということだ。この問題を司法がどのように解釈するのか、今後の注目点だ。

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  • イラストレーターが画像生成AI企業を提訴 「芸術市場に永続的な損害を与える」として[ITmedia

2. 広がる「ChatGPT」の波紋

 対話型AIチャットサービス「ChatGPT」の話題は盛り上がり見せている。「テキストを入力すると自然な応答かつ複雑な質問や繰り返しの質問にも詳しく答えてくれる」というサービスで、「学生の課題レポートでもかなりレベルの回答を返す」「プログラミングコードも生成できる」など、さまざまな応用が考えられている(Impress Watch)。

 そのようななか、開発したOpneAIはAPI公開に向けた準備が進む。APIが公開されれば、ChatGPTを組み込んだアプリケーションが登場することになるだろう。さらに、マイクロソフトもクラウドサービス上で利用できる「Azure OpenAI Service」を一般公開し、この上でChatGPTに対応すると発表したとも報じられている。

 一方で、Scientific Americanによれば「科学者は、ChatGPTと人間が書いた研究論文の要旨を区別できるわけではない」という(lifehacker)。記事によれば「シカゴにあるノースウェスタン大学のCatherine Gao氏を中心としたグループは、ChatGPTで研究論文の要旨の偽物を作成し、科学者がそれらを見つけられるかどうかをテスト」した。結果として「ChatGPTは信頼できる科学的要約を書いている」とコメントしている。まだまだ開発途上であり、AIがさらなる学習を重ね、精度が上がれば、より高い質の回答を得られるようになるのか。

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  • 自然な対話AIモデル「ChatGPT」、APIやAzure対応で環境整備進む[Impress Watch
  • ChatGPTが論文要旨を作成。研究者の32%は「本物」と判断してしまった[lifehacker

3. コインベースが日本撤退を発表

 米コインベース社は日本市場から撤退することを発表した。コインベースは世界最大規模の暗号資産取引所として、2021年8月に日本でのサービスを開始していた。「市場環境の変化により、現在の日本での事業の全面的な見直しと既存顧客との取引停止という難しい決断を下した」というのがその理由(Impress Watch)。大手が撤退するということは、もはや暗号資産取引のブームは去ったということか。

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  • コインベースが日本撤退、1年半で[Impress Watch

4. 「GYAO!」がサービス終了を発表

 Zホールディングス、ヤフー、GYAOが無料動画配信サービス「GYAO!」を3月31日17時で終了すると発表した。「GYAO!ストア」「トレンドニュース」も同時にサービスを終了する。「前身にあたるサービス『GyaO』は2005年に登場しており、20年近いサービスの歴史」がある古参のサービスだが、ついに幕を下ろす。数々の動画配信サービスが群雄割拠するなか、同じ土俵ではなく「縦型のショート動画サービスを強化すべく、コミュニケーションアプリ『LINE』内の動画プラットフォーム『LINE VOOM』に注力する」としている(ケータイWatch)。

 なお、「“購入済み”の商品が視聴できなくなる」ということは、コンテンツ配信系サービスの事業継続性における課題が改めて浮き彫りになっている。

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5. 「オリジネーター・プロファイル(OP)技術研究組合」設立

 インターネット上で信頼性のあるコンテンツ作成者などを識別する技術「オリジネーター・プロファイル(Originator Profile=OP)」の実用化を目指す団体「オリジネーター・プロファイル(OP)技術研究組合」が設立された。参加するのは朝日新聞社、WebDINO JAPAN、産経新聞社、ジャパンタイムズ、中日新聞社、日本テレビ放送網、News Corp、fluct、毎日新聞社、Momentum、読売新聞東京本社の11社である。今後、「慶応義塾大学サイバー文明研究センターの監修のもと、国内の主要広告会社とも連携して、日本国内におけるOPの仕様策定と試験実装を進める。そして、W3C(World Wide Web Consortium)などにも提案を行いウェブ標準化を目指す」とし、今後の社会実装のための取り組みを進めるということだ(INTERNET Watch)。

 このオリジネーター・プロファイルは「従来のウェブでは、発信者などの情報を検証する技術的な手段がなかった」という課題に対して、「信頼できる発信者を識別することで、情報や広告の信頼性を高めることができる」としている。これを実現するため、「コンテンツ作成者や組織・企業名といった基本情報に加え、企業姿勢、編集方針、報道責任、編集ガイドライン、プライバシーポリシーといった信頼性に関する情報も含めて、第三者による確認ののち署名付きで付与する」技術である。

 こうした技術が実現し、広く利用されるようになれば、いまのインターネット上のコンテンツをめぐる課題のいくつかが解決され、情報基盤として、大きな進化を遂げることになるだろう。

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  • 信頼できる発信者を識別する技術の実用化・ウェブ標準化を目指す「オリジネーター・プロファイル(OP)技術研究組合」設立 村井純・慶應大教授が理事長に[INTERNET Watch

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