チョコレートには「カドミウムや鉛が基準値以上に含まれている」との調査報告、専門家らが有害物質の低減策を提唱

GIGAZINE
2023年01月15日 20時00分



企業の社会的責任を追求する非営利団体・As You Sowと、アメリカの製菓業界が組織するNational Confectioners Association(NCA)が共同で、チョコレートに含まれるカドミウムと鉛を減少させる長期的な取り組みを発表しました。背景には、一般に出回っている多くのチョコレート菓子に、警告が必要なほどの濃度のカドミウムや鉛が含まれていたとの調査結果があります。

Research Reveals Ways Lead and Cadmium in Chocolate May be Reduced – NCA
https://candyusa.com/news/research-reveals-ways-lead-and-cadmium-in-chocolate-may-be-reduced/

New Report Details Simple, Safe, and Low-Cost Solutions to Reduce Levels of Lead and Cadmium in Chocolate — As You Sow
https://www.asyousow.org/blog/2022/8/17/new-report-explains-simple-safe-and-low-cost-solutions-to-reduce-levels-of-lead-and-cadmium-in-chocolate

チョコレートにはカカオポリフェノールなどの栄養素が豊富なほか、認知機能を向上させる効果があるとの研究結果も報告されているため、特にカカオの含有量が高く砂糖が少ないダークチョコレートは体にいい食品とされています。しかし、As You Sowが2014年に実施した試験の結果、469銘柄のチョコレート菓子のうち285銘柄で、カリフォルニア州法により生殖機能障害を引き起こすとして警告表示が規定されている水準である「Maximum Allowable Dose Levels(MADL:生殖毒性物質の最大許容用量レベル)を超過するカドミウムや鉛が含まれていることが判明しました。

MADLを上回っていた銘柄の中には、スターバックスやゴディバなど日本人にもなじみ深いブランドが含まれています。

Toxic Chocolate — As You Sow
https://www.asyousow.org/environmental-health/toxic-enforcement/toxic-chocolate


カドミウムは腎臓や肝臓、骨などに損傷を与えるほか、生殖能力への悪影響である生殖毒性があることが知られています。また、鉛は学習障害や神経障害に関連しており、重要な発達段階にある子どもの脳は特にその影響が大きいことが懸念されます。そのため、カリフォルニア州ではこうした有害物質の含有量について消費者が知った上で意志決定を行えるようにすることを目的とした「プロポジション65」が制定されており、前述のMADLもこの法律に基づいたものです。

特に高カカオをうたったチョコレートについては、日本の国民生活センターも「すぐに健康被害を及ぼすような量ではないが、銘柄によりカドミウム含量の差が大きかった。適切な品質管理等が引き続き望まれる」との調査結果を(PDFファイル)報告したことがあります。

こうした懸念や前述の調査結果を受けて、As You SowとNCAは4人の専門家からなる学際委員会を組織し、3年間をかけてチョコレートやココアに含まれる有害物質の汚染源やその低減方法を調査しました。

その調査結果によると、チョコレートやココアのカドミウムはカカオが栽培されている熱帯地方の土壌が由来とのこと。カカオの木の根から取り込まれたカドミウムは、カカオ豆の中心部であり、チョコレートやココアの原料である胚乳(カカオニブ)に沈着します。特に、カカオの名産地である中南米やカリブ海地域では風味が豊かなカカオが収穫される一方、土壌中のカドミウム量が高くなる傾向があります。


そのため、味を落とさずにカドミウムの含有量を減らす方法として、短期的にはカドミウム量が少ないカカオ豆と多いカカオ豆をブレンドすることで対応し、長期的には土壌改良やカカオの遺伝子改良を行う必要があると、専門家らは結論付けました。

一方、鉛は根から取り込まれることはありませんが、土壌やほこり、発電所由来の堆積物に含まれる鉛が原料となるカカオに付着することで、チョコレートに混入します。特に、カカオの実から取り出したカカオ豆には「baba」と呼ばれる粘着質のカカオパルプ、つまりカカオの果肉がついているため、カカオ豆を現地の野外で発酵させたり乾燥させたりする段階で鉛が付着しやすいとのこと。


こうした点から専門家は、チョコレート製造業者がすでに行っているカカオ豆の洗浄、焙煎(ばいせん)、外皮の除去といった各工程での汚染物質除去を最適化するとともに、収穫工程での土の付着や空気への接触を可能な限り抑えることで、最終製品中の鉛レベルを下げることができると指摘しました。

今回提言されたカドミウムおよび鉛対策を実施することで、鉛の含有量は1年間で大きく削減されると期待されています。一方、土壌改良や新しい農法の導入などが必要になるため、カドミウムの低減は長期的な課題になります。

As You Sowの社長兼最高顧問であるダニエル・フジェール氏は「専門委員会が行った調査は、チョコレート製品中の鉛とカドミウムを削減するための現実的な方法を明らかにする上で重要なものでした。3年に及ぶこの研究に資金提供を行ったチョコレート業界の協力的な姿勢に感謝するとともに、取り組みを実施段階に移行させて、カドミウムと鉛の含有量を低くすべく業界と協力していけるのを楽しみにしています」とコメントしました。

また、NCAの広報担当ヴァイス・プレジデントであるクリストファー・ギンドルスペルガー氏は、「当協会とチョコレート業界のメンバーは、プロポジション65に関するAs You Sowとの合意に基づいて資金提供した専門委員会の調査結果を歓迎しています。引き続き消費者においしいチョコレートを食べてもらうべく、製品の品質と安全性の保証が可能かつ実現性のある対策を実施するため、今後も協力を続けていきたいと思います」と話しました。

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