セキュリティ企業が広告予算の90%を アドレッサブル広告 に費やす理由:「より効率的に、インプレッションの無駄をなくし、より販売促進できる」

DIGIDAY

創業25年の車載用セキュリティシステム企業であるオンスター(OnStar)は、広告予算の90%以上をデジタルの「アドレッサブル」メディアに費やしている。ここでのアドレッサブルとは、ユーザーを特定することができるという意味だ。同社は、この戦略によって顧客のターゲティングをより効果的にし、2023年のマーケティング戦略に必要な情報をより拡充できると期待している。

「我々は多くの消費者が誰であるかを把握しており、リーチと頻度という点での目標をできる限り厳密に達成したいと考えている」と、同社の親会社であるゼネラル・モーターズ(General Motors)のデジタルビジネスチームにおけるマーケティング責任者、ローラ・ソーントン氏は述べている。

2022年はオーディオのストリーミングに支出

オンスターはこの1年間で、ストリーミング、オーディオ、ソーシャルメディア、CTVにおけるアドレッサブルメディアへの取り組みを強化してきた。とくにコネクテッドテレビは、サードパーティーのクッキーがデジタル広告のエコシステムから姿を消しつつあるなか、業界全体のトレンドとなっている(この点に関してはこちらこちらの記事で詳細が書かれている)。オンスターは、ターゲット・オーディエンスを作り上げるため、独自のメディア・ターゲティングツールと自社データを組み合わせて利用している。

同社の2022年の支出の大部分は、ブランデッドポッドキャストや既存の番組内に挿入する形のインストリームポッドキャスト広告など、オーディオのストリーミングに充てられた。2021年は、オンスターのアドレッサブル・メディア支出は予算の約60%を占めたが、2022年は90%と大幅に増加している(ソーントン氏はそれ以上の詳細を明らかにしなかった)。

同氏は、「マーケター全員が、アドレッサブル広告支出の正しい組み合わせがどのようなものかを知ろうとしているというのが現実だろう」と述べた。「2022年はアドレッサブル広告に本格的に取り組み、その結果に応じて、よりよい2023年のプランニングを立てよう、と社内で語っていた」。

パスマティックス(Pathmatics)によると、オンスターの2021年の広告費は350万ドル強(約4億6943万円)だったが、2022年は12月中旬までで330万ドル(約4億4260万円)以上を広告に費やしている。一方、カンター(Kantar)によると、同社は2022年1月から6月までに280万ドル(約3億7554万円)以上を広告に費やしたという。2021年の同時期には、同社は310万ドル(約4億1575万円)以上を広告に費やしており、今年の支出が昨年と大きく異なることが分かる(カンターはパスマティックスのようにソーシャルメディアへの支出を追跡していない)。

アドレッサブルメディアはさらに重要な位置付けになる傾向

MMIエージェンシー(MMI Agency)のメディア担当グループディレクターであるデーヴィッド・マースキー氏によると、オンスターが採用しているようなアドレッサブルメディア主導の戦略は、より多くの情報にアクセスできるようにするだけでなく、テレビやラジオなど通常はターゲットを絞ることが困難なチャネル内で、よりターゲットを絞ったメディアを可能にするという。

「このアプローチをとることで、ブランドはより効率的になり、理想的には、メディアのインプレッションの無駄を少なくして、より多くの販売を促進することができる」と同氏はEメールで述べた。

データに執着する広告業界全体で、広告主が顧客のターゲティングを改善しようとするなか、アドレッサブル・メディアの重要性が増している。この傾向は、ターゲティングが改善され、コストが削減されるにつれて、今後も続くと専門家たちは予想している。「クッキーのデータがなくなれば、メディア支出が適切な視聴者に届くためにはアドレッサブル・メディアはさらに重要になる」と、データおよびデジタルマーケティング企業ストライプ・セオリー(Stripe Theory)の創業者でCEOのクレイグ・コローネンバーガー氏はDIGIDAYへのEメールで述べた。

ソーントン氏によると、今年の戦略から得られた教訓は、オンスターの今年のマーケティング戦略に活用されるという。2023年はメディアミックスを拡大する計画があり、デジタルでのアドレッサブルへの本格的な取り組みを継続しながらも、リニアテレビやそのほかのより伝統的なメディアチャンネルのためのスペースを作ると彼女は付け加えた。「今後の展開に期待してほしい。それが予算の観点からのものなのか、単に楽しいことなのかは今はあまり伝えられないが、来年はもっと存在感を発揮するだろう」。

[原文:Why OnStar spends 90% of its ad budget on addressable digital media

Kimeko McCoy(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)

Source