ファストファッションのリーダーたちが競争激化に直面:業績不振のH&M、勢いを維持するザラとシーイン

DIGIDAY

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スウェーデンの小売業者であるH&Mは、ファストファッションのザラ(Zara)やオンライン専業ブランドのシーイン(Shein)のような競合から圧力を受け続けている。

H&Mが2022年12月15日木曜日、第4四半期の正味売上高が前年同期比10%増の625億スウェーデンクローナ(約8000億円)に達したと発表したあと、同社の株価は7%以上も下落した。プレスリリースによると、この売上高は現地通貨では昨年の同時期から「横ばい」だという。

ファストファッションの分野は、低価格なトレンドファッションを求める買い物客を引きつけるブランドが増え、飽和しつつある。H&Mの業績が一部のアナリストの予想を下回った一方、競合であるザラやシーインは、マクロ経済の逆風にもかかわらず勢いを維持している。

ファストファッションの浮き沈み

世界的に家計の支出が見直される動きがあり、H&Mは業績を上げることに苦しんでいる。H&Mは12月、インフレの進行やロシアによるウクライナ戦争に関連するコスト増大によって、ヨーロッパの主要小売業者として初めてスタッフのレイオフを行った。同社は、9月に発表した20億スウェーデンクローナ(約255億円)を節約するための広範な計画の一環として、1500人の従業員を解雇した。

2月には、ロシア、ウクライナ、ベラルーシの145店舗を閉店した。本四半期でロシアとベラルーシでのグループ企業の運営を「清算」し、11月30日に最後の店舗を閉店したと発表した。ヨーロッパ以外では、中国で、新型コロナウイルス感染拡大により25〜50店舗を一時的に閉鎖した。

このあいだにも、H&Mの世界のライバルは成長の兆しを見せている。ザラを所有するアパレルメーカーのインディテックス(Inditex)は、2022年12月14日水曜日の決算発表で、2022年度9カ月間(2〜10月)の純利益が24%増の31億ユーロ(約4370億円)になったと明らかにした。シーインは、評価額が1000億ドル(約13兆3000億円)となり、ファッション界の世界的大企業に上り詰めた。さらに10月には、アパレルブランドのユニクロを所有する持株会社ファーストリテイリングが、2021年9月から2022年8月の収益が2兆3000億円(156億ドル)と、前年同期に比べて7.9%増加したことを明らかにした。

H&Mの競合が困難に直面していないというわけではない。インディテックスの売上は、第3四半期に11%上昇したが、それ以前の期間に比べると伸びが鈍化している。同社はアパレルブランドのプルアンドベア(Pull & Bear)、ストラディバリウス(Stradivarius)、ベルシュカ(Bershka)も所有しているが、2021年10月31日時点で37億ドル(約4920億円)であった在庫品額が、2022年10月31日時点で47億ドル(約6250億円)に達した。

価格戦略の違い

それでも、ほかのアパレル企業が在庫を減らすために値引きをしているなか、インディテックスのキャピタルマーケットディレクターであるマルコス・ロペス氏は12月14日水曜日の決算発表で、同社は「最新ファッションを定価で販売することを重視している」と述べていて、「当社はブラックフライデーなどのイベントにはほとんど参加しない」と説明している。

一方、H&Mはブラックフライデーとサイバーマンデーで全品30%オフのセールを行い、女性用トップスは8ドル(約1060円)、男性用シャツは5ドル(約660円)から販売した。

マクロ経済の影響を受けて、インディテックスは2022年、1ケタ台半ばの値上げに踏み切った。しかし、コンサルティング会社のジェーン・ハリ&アソシエイツ(Jane Hali & Associates)でシニアリサーチアナリストを務めるジェシカ・ラミレス氏は、同社は売れ筋のカテゴリーの商品を戦略的に値上げしているのであり、必ずしも買い物客を追い出しているわけではないと、米モダンリテールに話した。

「アパレルとフットウェアは全般的に、どれも値上がりしている」と同氏はいう。「ほかと比べれば、これでもおそらく、まだ最低価格帯だ」。

また、インディテックスの2番目に大きな市場が米国であることも、同社の状況が比較的良い理由になっているという。「ほかの地域で起きていることに比べれば、米国はまだうまくいっている」とラミレス氏は述べている。

今後の見通し

インディテックスCEOのオスカー・ガルシア・マセイラス氏は14日水曜日の決算発表で、米国での成長について、「2022年の現時点までのアメリカでの業績は非常に満足のいくものだ」と楽観的に語っていた。

H&Mとインディテックスの2社の店舗床面積も違ってきている。H&Mは以前、2022年の終わりまでに、120店舗を開店し、240店舗を閉店すると発表した。一方インディテックスは、決算発表によると、過去9カ月間に30の市場で新店舗をオープンした。

結局のところ、インディテックスもH&Mもファストファッション小売業者ではあるが、「ザラは、店舗内に魅力的な商品を再び並べはじめた」とラミレス氏はいう。「H&Mを見ても、それほどの魅力は感じられないと思う」。

「インフレが起き、消費者が支出に慎重になっている間に、H&Mの価格帯に多くのライバルが集まってしまった」と同氏は付け加えた。「商品が良くなければ、いくら安くても消費者は買わない。低価格であることだけを問題にするのであれば、小売業者がすぐにできることはいくらでもある」。

[原文:Fast-fashion leaders like H&M and Zara face increased competition]

Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via H&M

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