【山田祥平のRe:config.sys】シニアこそパソコンを毛嫌いするとソンをする

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 CESが米ラスベガスで始まった。集まってくるニュースを片っ端から読んで、興味深く吟味しているところだが、仮に現地に行っていたとしたら、そんな悠長なことはできるはずもないと負け惜しみ……。

2年間かけて四国遍路を結願

 なんだかんだで正月も終わり、世の中は通常ムードに戻りつつある。とは言え、今年はカレンダーの関係で、正月と日常の境界が曖昧だ。本格的な日常は1月10日からといったところだろうか。いずれにしても、ハイブリッドな働き方ができていれば、一般的な「正月休み」というのはそろそろ死語になろうとしているのかもしれない。

 日常的に信心深いわけでもなんでもないが、この2年間、日常的に東京にいなくても仕事ができるのをいいことに、以前からやってみたかった四国八十八カ所霊場めぐりにチャレンジした。いわゆるお遍路だ。スタンプラリーみたいなもので、八十八カ所のお寺を1番から88番まですべてお参りすると、人間が抱える88の煩悩が消え、望みが叶うとされている。

 この八十八カ所を、

  • シーズン1 徳島(阿波国) 発心の道場 23か寺
    2021年6月9日~6月15日(6泊7日)
  • シーズン2 高知(土佐国) 修行の道場 16か寺
    2021年10月26日~10月30日(4泊5日)
  • シーズン3 愛媛(伊予国) 菩薩の道場 26か寺
    2022年4月22日~4月30日(8泊9日)
  • シーズン4 香川(讃岐国) 涅槃の道場 23か寺
    2022年10月29日(土)~11月5日(土)(6泊7日)

と4回に分け、合計28日間で結願した。1~88を国ごとに順に回るのを一国打ちというが、厳密にそうしたわけでもない。ルーティングの関係で順序が前後したりもした。

 強者は全行程をクルマを使って1週間未満で結願するそうだが、観光しながら、そして、歩いたり、レンタカーを駆ったり、バスや電車などの公共交通機関を使ったりしながらゆっくりと巡った。

 格好にしても、金剛杖は持たず、すげ笠もかぶらず、白衣も着ない普段着だ。歩き道中はイヤフォンをつけて、TeamsやZoomで開催される発表会や記者会見などのプレスイベントにも参加したし、宿に戻れば原稿も書いた。

 このあとは、和歌山の高野山を訪ね、奥の院の弘法大師に結願の報告をすれば全行程が完了する。88番の大窪寺のあとに、最初に行った1番の霊山寺を訪ねて循環巡礼を完成させるのが本当のようだが、そこはカンベンしてもらい、春になって暖かくなった頃に高野山を訪ねようと思っている。

シニアこそフル享受できるITの恩恵

 なんだかんだで、この旅は、Googleマップがなければ成立しなかっただろう。難しいことをしたわけではない。もちろんクルマにはカーナビがあるので、それを使えばいいのだが、徒歩や公共交通機関での移動には、スマホが役に立つ。

 あらかじめ、88の寺をマップ上で確認して保存、個々の寺のリストを作って地図へのリンクを設定、タップすれば地図が表示されて、現在地からのルートが決まり、順に訪問できるようにした。

 あとでタイムラインを見ても、巡礼中の移動経路はすべて保存されている。これらの準備作業はPCで済ませ、移動時にはスマホを使う。それだけのことだが、これだけで移動の心理的負担は皆無だった。

 リストはMicrosoft Wordで作った文書で、OneDriveに保存しておき、スマホでそれを参照しながら、立ち寄った観光施設や食事した飲食店などを追記していった。このメモ文書とGoogleマップのタイムラインを並べれば、歩いた行程の詳細が手に取るように分かる。

 さらに、スマホやカメラで撮影した写真にはGPSによる位置情報が付加されている。タイムラインを見ながら、その日時に撮影した写真を見れば、それがどこでどのようにして撮った写真なのかもすぐに分かる。いわば旅程が終わったあとに完成する旅のしおりだ。本当は、写真をこのリストに貼り付けれるべきなのだが、それは先の楽しみにとっておこう……。

 自分自身、もう若くはない。これからの旅にはITは欠かすことができない存在だと強く実感できたのもお遍路の成果だと思う。頭では分かっていても、身をもって体験すれば、その有り難みは倍になる。

 欲を言えば、これらの情報を統合するUXがあればいいなとも思う。予定は未来のための日記であり、場所と写真と日時がコトといっしょにまとめられば記録になる。

 Googleのサービスを活用しながら再認識したのは、ITが高齢者にとって希望の光だということだ。ITを活用できれば、かつての高齢者では考えられなかったほどの幅広い行動ができる。ITの恩恵をフルに享受できるのは、実は、シニア層なのかもしれないと思えるくらいだ。

 ただ、そのためには、年配の方々も、IT機器を抵抗なく使ってもらわなければならない。PCを毛嫌い、食わずギライしていると絶対にソンをする。デバイスを使うことに抵抗がなくなれば、若い人たちの手を煩わせることもずっと少なくなるはずだ。

 活動量計としてのスマートウォッチなどは、シニア層にこそ率先して使ってもらいたい。それに、ビジネスの道具としてのPCは暮らしの道具としても重宝することを再確認してほしい。リタイアしたかつてのビジネスマンは、シニアとして、もう一度暮らしのためにPCを使ってほしい。

新年にあたって

 そんなことを考えながら、ゆっくりできた、いいお正月だったが、のんびりムードもそろそろおしまいだ。

 今年はどんなことにチャレンジしようかと、いろいろ考えているところだが、てんでばらばらで進化を続けている今のITサービス、デバイスが、もっとインテグレードされた世界に突入してもらうことへの提案ができればいいな、などとも考えている。

 今のままでは、日々生産され蓄積される情報が、あまりにも散漫としていて整理するのがたいへんだ。この整理というのがもっともやっかいなのだから、このままでいいはずがない。人間は行動に専念するだけで、あとはITに任せられ、それをあとで参照できるというのが理想的だ。

 そして、その参照に役立つのが表示デバイスだ。そのバリエーションは豊富であればあるほどいい。そういう意味では、今年のCESは表示デバイスお披露目のイベントなのかと思うくらいに、魅力的なデバイスが登場しているようだ。実際に手にして使ってみるのが楽しみだ。

 さて、2023年。どうか、今年もご愛読くださいますように。

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