麺状のものを盛るが麺ではなくスイーツである、しぼりたてモンブランを食べた

デイリーポータルZ

数年前からSNSやスイーツ系の話題で見かけるようになった、従来の持ち帰りのケーキとは違う、店で食べるタイプのモンブラン。

大きなお皿にモンブランペーストが細くランダムに、そして高く盛られているのがキャッチーで気になっていた。

流行の最盛期からは少し経ったように思うが、あれはどういうものなんだろう。一度食べておきたい。

 有名だけど食べたことがないものを食べる 

忙しく生きていると、つい同じものばかりを食べがちだと思う。

食べ慣れたものは愛おしいけれど、たまには未知に出会い口を驚かせたいものだ。思えば、長く生きてはいても案外「有名なのに食べたことがないもの」だってある。

そういうものを、ライターパリッコ、拙攻、そして編集部古賀の3人がそれぞれに食べてくることにしました。

記事は、編集部・古賀がしぼりたてモンブランを選んだ経緯のあと、実食レポートに続きます!

しぼりたてモンブランをまだ食べていない

パリッコ:
古賀さんは何を食べるか、候補ありますか?

古賀:
「ここ数年話題だけれどまだ食べたことがない」もので何かないかなと考えてまして。
店で食べる豪華なモンブランってありますよね。ジャンルとしては「しぼりたてモンブラン」と言われることが多いみたいなんですが。
こういうのですね。

 

パリッコ:
ありますね!

拙攻:
ああー、細いやつですね。 

古賀:
情報としてここ数年でかなり見かけたな~~!という既視感だけが育ってて、2020年にはあのタイプのモンブランから発想した記事まで書いたんですよ(↓)。でも食べたことなくて。

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しぼりたてモンブランをみて、モンブランって目をつけるとかわいいよなと思いやってみた記事「モンブランに目をつけるとかわいい」

古賀:
ここ数年のことだからこそ「食べたことがない」という気持ちがむしろ強いというか。

パリッコ:
僕も食べたことないっす。

拙攻:
ないです!

古賀:
これまでのモンブランがなにか明らかにエスカレートした感じが良くて。かき氷がまさにそうですよね。独自に進化していっちゃう。

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かき氷はついていかれない趣味の領域に旅立ちもうずいぶんたつ。
写真は記事「冬でもかき氷を食べに行く八木くんについていったら洗礼を受けました。冬こそかき氷だ!」より

ほぼ蕎麦ですね

パリッコ:
このタイプのモンブランって、これなんですよね。ほぼ一緒。

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「おれはそばなら無限に食べられる」より味奈登庵の富士盛り

古賀:
うっわ、完全に一致。

拙攻:
わはは。

パリッコ:
確かに、このモンブランを食べかた間違えて箸ですすりこむ古賀さんはみてみたいです。

古賀:
タイトルが先に決まりましたね。「しぼりたてモンブランをそばとして食う」。

どんどん無知が集まる

パリッコ:
これもりんご飴と一緒で、構造がわからないですよね。フォークを入れるとどうなるのか。

古賀:
ほんと!芯はどうなっているのか。

拙攻:
かきわけていった先が全然わからないですね。

パリッコ:
レベルの低い会話(笑)。

古賀:
普通は英知を集結させるものなのに、どんどん無知が集まってくるのなんなんですかね(笑)。話せば話すほどもやが濃くなっていく。

パリッコ:
でもそういう意味では今回の企画には合ってますよね。

拙攻:
流行りものだと今食べておかないともしかしたら……というのもありますもんね。

古賀:
たしかに……。そしたら急いで行ってきます!

パリッコ・拙攻:
いってらっしゃい~!
 

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あれは本当に、いったいなんなのか

皿の上に細く細くランダムにマロンペーストを絞り出し、山のように盛る高級モンブラン文化。

スイーツとして通常指向するであろう可愛らしさを恣意的に忘却したような佇まい。結果視覚情報として受け取られるのが「なんか大盛りの蕎麦みたいだな」なのだから、斬新といわずしてなんと言おう。

従来のモンブランに比べた圧倒的躍動感をいまこそ味わいたい。

大地の息吹を感じさせる原始の自然体としてのあのフォルムが眼前に迫ると思うと気持ちもおのずと猛々しい。

……いかん、盛り上がりすぎて期待を朗々と語ってしまった。

いっとき拡大し今も全国的に提供店があるようだが、編集部の近辺では自由が丘の「栗歩と芋こ」、そして渋谷の「サブリナ」というお店で食べられることが分かった。

奮えてまず向かったのは自由が丘。

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意外な場所にあって見つけたときは声が出た。この小道の先にある

平日の午前中、開店からすこしたった時間におとずれた「栗歩と芋こ」だったが、すでにお客さんでいっぱいで少し待ってから案内された。今もみゃくみゃくと支持されているんだなあ。

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持ち帰りも人気らしく、メニューながめているお客さんがたくさんいた

高さのひみつは……さくさくに焼いたメレンゲ……!

いただきまするは、この店最高級の品、一日十食限定の「極」だ。

飲み物とセットで2420円。思い切っていってやった。モノだけではないコト消費がここに極まる。

石川県産の能登栗が使われ、なんとマロンクリーム部分は砂糖不使用なのが特徴だそうだ。

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きた! うわ~、見たことある、これだ、これこれ

全身でモンブランを感じるべくあえて界隈の事情を調べずに無の状態で来ている。

まず知りたかったのは「なんでこんな高さが出せるんっすか」という点だ。

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こたえは真ん中の丸いやつメレンゲにありそう

どうやらこれについては固さのある焼いたメレンゲを芯にしている、というのが解のようだ。

後ほどうかがう「サブリナ」でも同様だったから、この手の森モンブランのひとつの様式と思われる。

さらに、味わいの前にさらにもう一つお伝えしたいことがあり、それは皿が石だということだ。

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それはそれは丸く平たい石。

これが、モンブランの迫力に負けず劣らずの存在感を漂わせる。

栗ご飯を思わせるマロンクリーム

石に気を取られないように注意しつつ食べてみよう。

砂糖不使用とうたわれる栗のペースト部分だが、なるほど完全に栗なのだった。

いわゆるモンブランの味ではない、これは茹でてむいた、うまい栗の味だ。

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スライスされた栗も実直に、ただただ、うまい栗

そうだ、菓子化しない栗というのはこんな味だったよなと、味覚としてはむしろ栗ご飯に近い。

そこをスイーツたらしめるのが中央のメレンゲであり、クリーム、そしてスポンジで、特にメレンゲは口に入れた瞬間は淡泊に感じられるのだけど、口内で溶かされるごとに倍々に甘くなっていく。

無糖のマロンクリームが割り材のような役割を果たし、口の中で味がじわじわ調合されておもしろかった。

マロンクリームを無糖で作るメニューはこの「極」だけのようだから、味わいとしては種類ごとに新しい発見があるのだろう。

マロンクリームの量が調整できる

なるほどこういうことになっているのかと、髭をなぜなぜ続いては渋谷の「サブリナ」へ。

商業施設であるヒカリエのレストラン街にあるお店で、クラムチャウダーやパスタとならんで「生搾りモンブラン」を売りにしている。

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ヒカリエの妖精、ホッペさんが寝ていた。かわいいね、かわいいね

こちらもモンブランのメニューは複数あり、しかもメニューによってスモールとレギュラーが用意されいるようだ。

聞いてみると搾りだすモンブランの量が違うとのこと。

そんなに搾んなくてもいいですよ、という人のためにスモールがある。世の中にはさまざまな需要と供給があるのだなと思わされる。

ここはストレートに生搾りモンブランのレギュラーをお願いした。値段は1650円。飲み物は別料金だから、おおむね先ほどと同じくらいの価格と思っていい。

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これは……

うなったのは、皿が石だったことだ。

レポート冒頭で、この手のモンブランのかもすプリミティブについてはふれた。まるで人口のものではないかのような、この形として自然界に生み出されたような植物的なフォルムが特徴である。

その、自然のようである、ということが、土台をもできるだけ自然に近いものを人に選ばせるんだろうか。

2連発で石にのってやってきたのは感慨だった。

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有機性が全体で演出されている

そばに例えてしっくりきてしまった

構成要因はメニューに明示されており、マロンクリーム、ケレーム・フェッテ、アイスクリーム、ムラングとある。

ケレーム・フェッテというのは甘くないホイップクリームのこと。ムラングはなんだろう? と思って調べたところ「メレンゲ」であった。なんでちょっとアハ体験みたいな気持ちになるんだ。

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スプーンですくうとつーっと束になってついてくる

「栗歩と芋こ」のものに比べると、マロンクリームの部分がスムーズにしぼりだされており波打ちに束感がある。

無糖のマロンクリームと、クリームとして加工されたマロンクリームの違いと思われ、つまりそれは……ああ、十割そばと二八そばの違いみたいなものかもしれない。

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野趣と洗練

せっかくのモンブラン、そばのことは忘れて食べに来たつもりだったが、まさか相似点が見つかってしまった。

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ムラングは最下部の土台として使われていた

素直に、あまくておいしい 

味はスイーツとしてとてもバランスよく、品があった。持ち帰りで食べるケーキ屋さんのモンブランにはできない、アイスクリーム入りなのも素直にうれしい。

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そういえば、両店ともカトラリーのナイフがメスっぽかった

何度もさわいで本当に恐縮なのだけど、食べ終わると石が残る。

森のようなモンブラン。伐採のあとに残るのは石の大地であった。

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趣味性の高い食ジャンル

食べ物として、栗を楽しむためのメニューだというのは真面目に伝わった。

値段的にも趣向としても、趣味性の高い食だと思う。

いい波が来たからサーフボードを持って海にかけていく、あふれる思いをトランペットに吹き付ける、花を生けあたらしい美を創造する、どこかで誰かにそんな日があるように、私は今日、森をかきわけモンブランで栗のうまみを堪能したということだろう。

こういうお楽しみが、世界にはたくさんたくさん、あるのだ。

次は「一蘭・未経験の会」でお会いしましょう

古賀:
みなさま、おつかれさまでした。

パリッコ:
おつかれさまでした! 楽しかったです。

拙攻:
ありがとうございました! 言い忘れていたのを思い出したんですが、実は私は一蘭にもいったことないのでそのうち行きたいと思います。

パリッコ:
一蘭行ったことない!

古賀:
私もないです!

拙攻:
全員!

パリッコ:
「味集中カウンター」という言葉だけ知ってる。

古賀:
紙に細かくオーダーを書くんでしたっけ。これは今年こそみんなで行きましょう。

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こういう店らしいことは知っている……
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こういう……(写真はこちらの記事より)

パリッコ:
3人で行っても味集中カウンターなんすよね。

拙攻:
それぞれ集中して食べるんですね。

古賀:
ははは。そこからどこかへ移動してじっくり感想戦するという。
そしたら、次回は一蘭の記事でお会いしましょう! と、きれいにまとまりました。読者のみなさま、ご覧いただきありがとうございます。2023年もよろしくおねがいします。

パリッコ・拙攻:
よろしくおねがいします~!

 有名だけど食べたことがないものを食べる 

忙しく生きていると、つい同じものばかりを食べがちだと思う。

食べ慣れたものは愛おしいけれど、たまには未知に出会い口を驚かせたいものだ。思えば、長く生きてはいても案外「有名なのに食べたことがないもの」だってある。

そういうものを、ライターパリッコ、拙攻、そして編集部古賀の3人がそれぞれに食べてくることにしました。

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