今年も山が人気だったみたい!
アスリートのためのソーシャルネットワークサービスを提供するStravaが、世界で1億人、日本では100万人以上のユーザーがStrava上に投稿した過去1年間のアクティビティの記録を集計・分析した「Year In Sport 2022」を発表しました。
総合的な調査結果として見えてきたのは、依然として続いているオフロードスポーツの人気ぶりや、通勤トレンドの変化、そしてテクノロジーを介して仲間とつながる「コネクテッドフィットネス」の習慣化でした。
まずは世界的な傾向から見ていきましょう。
人気No.1はアルペンスキー
今年最も伸びたスポーツタイプはアルペンスキーでした。世界的に最も成長したスポーツを見ると、スキー場やジム、プールなど、コロナ禍での自粛期間中に閉鎖されていた場所に戻りたいという欲求が表れているようです。
ちなみに2021年に最も伸びたスポーツタイプはウォーキングだったんですね。去年の世界的な傾向としては、屋外でのウォーキングが2.0倍、ハイキングが1.7倍増加し、徒歩のアクティビティに人気が集まりました。
オフロードスポーツブーム
また、今年はより多くのアスリートがオフロードに挑戦した年でもありました。Stravaユーザー1億人のうち、実に52%が2022年になんらかのトレイルアクティビティをアップロードしたそうです。
グラベルバイクやマウンテンバイクなど、サイクリングの新しいトレンドを楽しんだアスリートもいれば、トレイルランニングやウルトラランニングの急増に貢献した人も。55%以上のトレイルアクティビティはグループで行われたそうです。
マラソンを完走した人が増加
コロナ禍での規制が緩和され、スポーツイベントが再開されつつある中、マラソンを完走するランナーの割合が世界的に見て前年からほぼ倍増したそうです。
なかでもオランダでは3.7倍も増加したのだとか!日本は欧米ほどの盛り上がりは見られなかったものの、1.6倍と参加回復の兆しが見られました。
通勤ライドも増加
自転車で通勤する人も増えました。
東京では2019年と比較して通勤ライドが46%増加。パリやベルリンなどの欧米都市と並び、自転車通勤が増えた都市のひとつでした。
ヨーロッパではE-bikeが人気
自転車の中でも特に人気を博したのがE-bikeでした。E-bikeを所持するサイクリストのシェアは、欧米を中心に2021年より26%増加。
スイス、イタリア、オーストリアなど、山岳地域で有名な国での人気が目立つ中、日本ではE-bikeの顕著な普及は見られなかったそうです。もともとママチャリ型の電動アシスト自転車の人気が高い日本ですから、あえてE-bikeに乗り換える人が少ないのかもしれませんね。
日本の男性ランナーはグループ走よりソロ走のほうががんばれる?!
さらに、Stravaでは毎年日本特有の興味深いデータを披露してくれるんですが、今年はこんな傾向が見られたそうです。
まず、ライド・ランニング・ウォーキング・ハイキングのアクティビティにおいて、ひとりぼっちよりも2人以上で行うグループアクティビティでは距離も活動時間も伸びることが判明したそうです。特にサイクリングではその傾向が顕著で、日本のサイクリストが3人以上集まればぼっちに比べて3倍近い距離を走れるとか?!
ところが、日本は主要国の中で唯一、ランニングにおいてこの傾向が該当しなかったそうです。具体的には、18-29歳の若年層および49歳以下の男性は、グループで走ることでむしろ距離も活動時間も短くなる傾向が見られたのだとか。なぜなんでしょうか。
注目ワード「コネクテッドフィットネス」とは?
3年ぶりのリアル開催となった2022年12月12日の「Year In Sport 2022」発表会では、Strava Japanカントリーマネージャーの三島英里さんが3名のパネリストをお迎えして「コネクテッドフィットネス」についてのトークセッションを開催しました。
三島さんによれば、そもそもコネクテッドフィットネスとはいわゆる「スポーツのDX化」で、
ハードウェア、ソフトウェアとコンテンツがすべてつながって、皆さんがスポーツをする中でデバイスやソフトウェアから情報やデータをやり取りして、ひとつのジャーニーが完結する環境のこと
なのだそうです。
スマートウォッチ、スマートフォン用アプリ、ライブストリーミング機能などのフィットネステックが発展してきたおかげで、いまや市民アスリートもリアルとバーチャルを融合した環境でスポーツを楽しめる時代になりつつあるんですね。
みんなが主人公になれる
たとえば、自分の部屋の中に自転車を持ち込んでネットにつなぎ、世界中とオンラインでレースしたり、トレーニングしたりすることができるZwift。インドアバイクでトレーニングするのとはどう違うの?という点について、Zwift Japanシニアカントリーマネージャーの福田暢彦さんは
ネットとつながって、遠くにいる友人や知らないプロと一緒に走れるというところがポイントです。皆さんも経験あるかなと思うんですけど、運動とか習慣を続けていて、ひとりでやっていると続かないな、やめようかなということが結構あるかと思うんですけども、Zwiftは世界中のみんなとつながることで日々モチベーションにつながる
のだと言います。さらに、
掲示板に何か投稿したりとか、自分がこういうことしましたよっていうのを書いてリアクションをもらうっていうのが今までだったんですけど、今実際Zwiftをやっている人たちがどういうコネクションをしているかと言うと、例えばゲームの世界で使われているDiscord(ディスコード)っていう同時チャットアプリをお互いつないで喋りながらトレーニングをするであるとか、自分がZwiftをしているさまをYouTubeで配信する、といったもうちょっと次元が深いところにいって、いまあるゲームにかなり近い方向に進んでいっているのかなと。
今までは誰かが、スーパーヒーローがなにかしら成果を出してるのを見て楽しむというところから、Zwiftというのは、これからのスポーツはみんなが主人公になれるんじゃないかな、というようなことをコネクテッドフィットネスには期待しています
ともおっしゃっています。
ストイックに練習をこなしていた人同士がつながるきっかけに
同じく「コネクテッド=つながる」ことに意義を感じているのが、日本トレイルランニング協会理事をはじめ数々の役職を兼任する株式会社SOTOE代表取締役プロデューサーの千葉達雄さんです。
「トレイルランニングは結構マニアックな種目なので、よりこういうところでつながっていくっていうことが凄く向いているスポーツ」だとした上で、
どういうふうにしたら速くなるかがまだ解明できていないところが多くて、その人たちがどういったところで、どういうペースで、どういうふうにやっているかっていうのは僕自身も凄く興味深い。
たまにとんでもない人もいるんですね。1日の走行距離が200キロとかね、そういう人がいるんですけども、やっぱりそれってモチベーションになるんですよね
と話しています。え、1日で200キロ走るってどゆこと……!
コネクテッドフィットネスを通じて新しいコミュニティが広まり、新しい人とつながることができたと話してくれたのは、カルト的な人気を誇るポッドキャスト番組「Replicant.fm」ファウンダー/ポッドキャスターのKentaroさん。
ランニングを始めた時にStravaのデータっていうのをTwitterとかInstagramでシェアする時に、ただシェアするのだとつまらないなと思って、そこで走る練習っていうハッシュタグみたいなものを付けてシェアしていったんですね。そうすると、「それはなんだ」みたいな感じで結構ソーシャルでも反応してくれ、そこからプロダクトを作っていったり、それを面白がって使ってくれる人がいて、今度はイベントに発展していったり
とバーチャルなつながりがリアルな商品開発やイベント企画に発展していく様子を語ってくれました。
Stravaによれば、日本人にはもともとストイックな気質を持っている方が多く、黙々とトレーニングに励む傾向にあるそうです。あえて多くを語らない玄人たちがコネクテッドフィットネスの世界を通じてつながれば、お互いの練習メニュー、スポーツを始めたきっかけ、おすすめのコース…などなど、様々な情報を分かち合い、仲間意識やモチベーションを高めていけそうです。
2023年ももうすぐそこ。来年も無理せず、楽しむことを忘れずに、スポーツで盛り上がっていきたいですね!