エイリアンが地球に来訪しないのは「知的じゃない」と思われているから

GIGAZINE



宇宙は想像を絶するほど広大なため、地球と同じかそれより優れた文明があってもおかしくはないように思えますが、これまでのところ地球外知的生命体からのコンタクトはおろか、地球外文明が存在する兆候すら確認されていません。この謎に対する答えとして、「宇宙人には地球に知的な生命体がいるようには見えないので、わざわざ連絡をよこさないのではないか」との仮説が提唱されました。

[2211.16505] The Fermi Paradox revisited: Technosignatures and the Contact Era
https://doi.org/10.48550/arXiv.2211.16505

Maybe we don’t see aliens because they’re waiting to hear a signal from us first
https://phys.org/news/2022-12-dont-aliens-theyre.html

「宇宙に地球外文明が存在する確率は高いのに、異星人からの接触は全くない」という矛盾はフェルミのパラドックスと呼ばれており、地球外知性の探索に挑む科学者らの頭を悩ませています。こうした議論に対する答えの1つとして、2022年10月には「太陽の寿命が比較的短いので、太陽系が無価値とみなされている」という新説が登場しています。

地球外生命体が地球に現れないのは「太陽系に訪れる価値がないから」という説 – GIGAZINE


この問題に取り組むエルサレム・ヘブライ大学ラカ物理学研究所のAmri Wandel氏は、プレプリントサーバーのarXivで発表した論文の中で、「地球は宇宙人に興味を持たれていないのではないか」という仮説を提唱しました。

この仮説は、大きく分けて2つの仮定で構成されています。1つ目は、「実は宇宙には生命がありふれており、生物がいるだけではあまり関心を払われない」というもの。近年の観測により、地球のように生命を育むことが可能なハビタブルゾーンの中に位置する惑星が相次いで発見されており、地球外生命体がいるかもしれないと期待を集めています。

宇宙人もこうした惑星の存在に気づくかもしれませんが、全ての候補地に探査機を送るのは、高度な先進文明にとっても大きな負担です。そこで、宇宙人は手始めに、物理的に探査するよりはるかに少ないエネルギーで行える電波でのコンタクトを試みると考えられますが、単細胞生物や原始的な動物しかいない惑星にメッセージを送っても意味はありません。


ここで登場するのが、「宇宙人は知的生命体が存在する証拠が得られれば、それに興味を持つ」という第2の仮定です。もし、生命がいる確率が高い惑星から電波通信とおぼしき信号が届けば、そこに高度な文明が存在する何よりの証拠となります。

理論的には、地球で本格的な電波通信が発明されてから今日までの間に、1万5000個もの惑星系に地球人が発射した電波が届いていると考えられます。しかし、宇宙人が地球人の電波を観測してからメッセージを返信したとしても、それが届くには時間がかかるので、応答が期待できるのは地球から50光年の範囲にある惑星系1300個だけになると、Wandel氏は試算しました。

さらに都合が悪いことに、人類が初期に発した電波は意図的なメッセージではなく、テレビやラジオ放送の電波が偶然宇宙に漏れたに過ぎないため、1光年も離れればノイズと見分けがつかなくなってしまいます。そのため、もし宇宙人が地球からの電波を受信してもそれに気づかず、地球に知的生命体がいるとは思っていない可能性が高いと言えます。

このような問題があることから、Wandel氏は「通信を行える文明が少なくとも数千年は続かない限り、文明が相互通信を行うことは有り得ません」と結論付けました。

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