火星を地球のような環境にする「テラフォーミング」を行うには何が必要なのか?

GIGAZINE
2022年12月14日 07時00分
動画



火星は地球の隣に位置する惑星であるものの、人間が生活するには適した環境ではありません。火星を地球のような環境に変化させる「テラフォーミング」の方法について、科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtがアニメーションで解説しています。

How To Terraform Mars – WITH LASERS – YouTube
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火星は非常に乾燥しており、作物の育成に適した土壌がありません。また、火星の大気は薄く、呼吸をすることが困難で、常に放射線が降り注いでいます。


火星を人類が住むことができる惑星にするには、酸素が約21%、窒素が約79%、二酸化炭素が数%で平均気温が14度、気圧が1バールの地球と同じ大気を作る必要があります。


また、海や川を作り、生物が生息できる豊かな土壌にする必要があります。


大気の生産や土壌の形成は非常に困難ですが、巨大なレーザーを用いることで容易にできるとされています。


火星の地下や極地の氷冠の中に水分が含まれており、浅い海を作るには十分な量があるとされます。


また、火星の鉱物には大量の酸素や二酸化炭素が結合しています。


これらの水分や気体を空気中に放つには、熱分解を行い、太陽と同等の高温で火星の表面を溶かす必要があります。


現在、地球上で最も強力なレーザーは「ELI-NP」で、10ペタワットの出力のビームを約1兆分の1秒照射することができます。


火星の表面を溶かすには、ELI-NPの2倍のパワーを持つレーザーを連続して作動させる必要があり、ELI-NPでは力不足です。


最も簡単な方法として、アメリカの約11倍の大きさの鏡の列を宇宙に形成することで、火星を溶かすのに十分な太陽光を集めて照射する方法が紹介されています。


実際にレーザーが火星の表面に照射されると、表面の8メートルを溶かし、1立方メートルあたり約750kgの酸素と約50kgの二酸化炭素が発生します。


レーザー照射が終了すると、シリコンや鉄などの元素の灰が雪となって降り、地中の水分や極地の氷冠が水蒸気となって雲を形成し惑星全体に雨が降ります。


この雨は大気中の有害なガスや塩素のような有害な元素を取り去る働きがあり、地球よりも塩分濃度が高い海が形成されます。


酸素を含む大気を作るには、約50年間レーザーを照射し続ける必要があるとされています。


しかし、形成された大気はほぼ100%酸素で構成され、呼吸が困難で非常に燃えやすく、人間が生活するには困難です。


地球と同じような大気を作るには、ほぼ100%窒素の大気に覆われた土星の衛星タイタンから火星に窒素を運ぶ必要があります。


窒素の運搬には、タイタンで大気を吸い込み、圧縮して火星へと飛ばす大規模な工場を建設することが必要です。


地球と同様の大気の形成にはテラフォーミングを開始して約100年が必要とされています。


これで大気や海ができあがりましたが、砂漠と同様に生き物が存在せず、新たに生物圏を作り出す必要があります。


まず、海に植物プランクトンを放ち、繁殖させます。


その後、動物性プランクトンや魚類を繁殖させることで海の生態系が完成します。


一方で陸上の生物の繁殖は非常に困難で、植物の繁栄には地表の栄養が必要ですが、火星の地表には栄養はありません。


そこで、火星の泥で窒素固定菌を育て、植物の栄養を作り出す必要があります。


火星が安定した環境になるには、数百年を要し、ようやく人類の住むことのできる環境が整います。


しかし、地球と異なり火星の核には磁場がないため、太陽風宇宙線から身を守ることが困難です。


そこで、原子力発電で動く巨大な超電導リングを火星のはるか前方に設置し、太陽風を横に受け流す方法を紹介しています。


火星のテラフォーミングには膨大な作業と資源が必要で、数百年から数千年を要するとされています。Kurzgesagtは「テラフォーミングは星々に囲まれた我々の未来への第一歩です」と述べています。

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