なんと!暖かくも厳しくもなさそう、平年並みの12月 ~ 気象予報士・増田さんの詳しすぎる天気解説2022.12

デイリーポータルZ

気象予報士、増田雅昭さんに天気について聞く月1回連載。

極寒!など派手な言葉で気を引きたいですが、いまのところ平年並みの12月になりそうです。ただ、完全に安心していいわけではなく、12月なので雪も降ります。

西村さんによる「天気の言葉は辞書にどう書いてあるか」解説もあります。

(構成:デイリーポータルZ編集部・林雄司)

季節が後ろにずれたままの11月でした

林:
11月はあったかかった。最低気温が7.7℃。
増田:
そうですね。下がったとしてもそんなもんかって感じでしたね。
林:
僕らは1.3℃、4.2℃なんて予想しましたが。
西村:
全然寒くならなかった。
増田:
12/6が4.1℃で12/7が3.6℃だったんですけど、それが11月の終わりだと平年通りだから、5日から1週間ぐらい季節が後ろにずれているということですよね。
11月の終わりに雨が続いて空気が冷やされて寒気がやってきた。12月に入って、今になってようやく寒くなった。
こういうふうに雨が降って天気がぐずつく時が季節の変わり目になるんですね。
秋から冬はさざんか梅雨とか言われたりしますけど。
林:
いろんな梅雨がありますね。
増田:
まず、梅の時期の普通の梅雨でしょ。次に有名なのが菜種梅雨ですよね。菜の花が咲く頃、冬から春に変わるタイミングで天気がぐずつく。
秋から冬に変わるタイミングで、1〜2週間ほど晴れが安定して続かない時がさざんか梅雨と言われたりします。
夏から秋にかけての秋雨、これはすすき梅雨とか言われたりします。
一同:へ〜。
増田:
順番に行くと、梅、すすき、さざんか、菜の花。 

季節の間には梅雨がある、の図

 

12月は平年に追いついたり離されたり

増田:
12月に入ってようやく追いついてきたかなというところですけど、またじわじわじわじわと平年と離されていくんです。平年のほうがどんどん下がっていって、ちょっと離されちゃう。また追いついて、またじわじわと離されて平年に追いつくのが今年の12月だと思います。
追いかけっこですね。トータルで見ると12月の平年とそんなに離れないような。
林:
今追いつきました。で、また離される。
増田:
12月そんな感じで進んでいくと思います。

増田:
小刻みな波もありつつ、次にガクッと下がるのが12月の14、15あたりですね。
小林:
その次は?
増田:
そこはまだ読めない。まだわからないけど、しばらくないんですよ。12月下旬に来るんじゃないかと考えておいたほうが良いかなって思いますね。
林:
そうですね。
増田:
そのへんまで行って平年ってなると、それこそ年末年始ってこういう寒さだよねってことですから、いかにも冬の寒さ、冬の天気って感じになってきますね。
林:
結果として平年並の冬になるんですかね?
増田:
極端に平年より高い、暖冬だねっていう感じにはならないでしょうし、逆にすっごい寒い、これまずいよというところは今のところ12月20日ぐらいまではないかな。
もしまずいよってなるとすれば、年末年始です。ちょっと読めない。すごいのがきちゃったら、それはまだ今の時点ではわからないです、ごめんなさいですね。

林:
怖いこと書くとページビューが上がるから、極寒の12月!みたいなことを書きたいところですが、そんなに驚くような12月ではないですね。
増田:
難しいんですよね。今日お伝えしたのはガクッガクッと下がって、だんだん冬らしく12月らしくなっていきますということだけで雪が降ってもおかしくないです。
安心って言ってもダメだし言い方がほんと難しくて。
林:
デイリーポータルは文字が多くてリテラシーが高い読者が多いので、そのへんはわかってもらえると思います。極端に怖がらせないけど、極端に安心することでもない季節だと理解してください。
増田:
文字数大事ですよね。 

天気予報を一言一句逃したくない

林:
他社の天気予報って見られるんですか?
増田:
見られる範囲では見ます。やっぱり僕は天気予報は見るというより聞きますね。すごく音を上げて聞きます。一言一句何を言っているかすごく気になるので。天気予報がついてる空間に自分がいる時に誰かが喋ってると、シーって。で、家の中だったらだんだんボリュームを上げていったりとか、もしくは自分がテレビに近づいていったりとか、聞きたいんですよ。一言一句聞き逃したくない。
林:
NHKのあの人はこういう言い方してるな〜とか。
増田:
こういう言い方なんだ〜って。一瞬聞けなかった時に、そこで面白い言葉とかね、そこを聞き逃したくないので。仕事柄と言うより趣味。なんか面白いこと言ってないかなって。ないですか?
小林:
いや、わかんない。
増田:
全部聞きたいんですよ。
小林:
へ〜!

林:
同じウェザーマップ社内でも?
増田:
全部聞きたい。聞き逃すと何言ってたの気になる〜ってなります。そこですっごい面白いこととか、いいコメント言ってたとか。
林:
天気のコメントってネタ帳とかってあるんですか?
増田:
この仕事始めた時に、いろいろと使えるフレーズをメモっておくと、先々役に立つよって言われて、最初1年目はいろんなフレーズをノートに書いておいたんです(めんどくせーなって思いながら…先輩ごめんなさい)。
そのノートはどこに行ったのかわからなくなってたんですけど、10年以上たったあと引っ越す時にノートを発見して見たら、自分がふだん無意識に使ってるフレーズが載っていてびっくりしましたね。ノートに書くって大事なんだなって思いました。
西村:
ネタ帳があるんだ。
増田:
最初ね。
林:
ネタ帳。ちょっと増やして本にしたらすごいみんな買いそうですよね。気象予報士の説話集。
増田:
やってみますぅ〜?
林:
冬将軍が来たって時はこういうフレーズとか。
増田:
なるほどね。
林:
菜種梅雨、梅雨には4種類。
増田:
これさえマスターすれば、配信できます!みたいな

クイズの結果!

林:
先月のクイズは11月の東京の最低気温でした。予想外の7.7℃という暖かさにいちばん近いのがメロポンさん。

メロポン
予想:5.7℃
明日(2022/11/13)雨の予報が出ていますね。この雨の後「西高東低」のいわゆる冬型の気圧配置になると予想しました。気温の低くなる日もあると思います。ただ、気象庁の1ヶ月予報を見ると、気温は高めのようです。そこで7.0℃位と考えましたが、先月および先々月とも1.3℃ずれていましたので その値を差し引いて5.7℃とさせて頂きます。

増田:
すごいですよね。最後のここがなければ。
西村:
惜しかった。
増田:
7.7 に対して7℃ってすごいですよ。この寄せ切り。ゴルフで言うピンギリギリ。
西村:
こんなに暖かいっていうのもちょっと予想できてなかった。
林:
おめでとうございます!

12月の問題:
東京の12月の最低気温を予想してください(小数点以下1桁まで)
締め切り:12月16日23:59
回答はこちらから

増田:
過去3年の数字です
2021年12月27日 -2.2℃
2020年12月20日 -0.6℃
2019年12月29日 2.2℃
小林:
去年が寒い
林:
私の予想は0.2℃、0℃だと何も予想してないみたいだから0.2にします。
西村:
-1.0℃。ぴったりでバカみたいですが。 

いったん広告です

天気の言葉は辞書にどう書いてあるか

西村:
国語辞典に載っている気象関係の言葉をいろいろ調べていたら面白いなと思って調べてきました。天気予報っていう言葉自体、載っている辞書があまり多くないんですよ。
増田+林+小林:

え?
西村:
小型辞書と言われている、三省堂広辞苑とか新明解とかだいたい載ってないんです。天気予報って。
増田:
ちょっとショック。
西村:
ただ、でっかい辞書。広辞苑とか。あのサイズだと載ってるんですけど。
増田:
②が気になってしょうがない

西村:
そうそう。これですよね。日本国語大辞典はやっぱ書いてあるんですね。
増田:
昔の辞書はこう載ってたと聞いたことがあるんですけど、今も載ってるんですか。
西村:
これって予想や予言、言葉の比喩というか、たとえとして天気予報をそういうふうに使ってるよということなので、天気予報自体が当たらないよというわけではない。
林:
比喩としての使い方

西村:
使うことがあるよと言ってるんだけど、そういうイメージがやっぱりあるんだな。
林:
なんのフォローにもなってない
西村:
「それ天気予報だね」みたいなことって今言わないですよね。だから普通の小型辞書だとそういうのは消えていくと思うんですけど、日本国語大辞典っていうのはそういうふうに使われていたこともありますよっていうアーカイブの意味もあるので、たぶんこれが消えるってことはちょっとないかもしれないですけど…。

西村:
現代国語例解辞典にはこういう表があるんです。

林:
どういう言葉がつながるかが分かる。
増田:
実は空模様って、あまり天気予報では言わないんですね。気象庁のサイトでは~模様の天気×になってる。
西村:
そうなんですか。

気象庁|予報用語 天気(気象庁ホームページより)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/tenki.html

 林:
このページ面白いですね。
増田:
けっこういっぱい増えましたよ。
林:
不安定な天気もダメなんですね。
増田:
「備考、晴れの日と曇りや雨の日が小刻みに変わるような天気経過と混同されるので用いない。」だそうです。

一時とときどきの違い

西村:
一時というのを調べました。三省堂国語辞典だと天気予報の一時の意味が書いてあるんですね。天気予報で一時は連続して降る雨が予報期間の4分の1未満を言う。
増田:
4分の1未満というのがひとつキーワードですね。
西村:
これ面白いですね。
増田:
例えば明日24時間あるうちに、1時間の雨が、3回時間をあけて降ったらそれは一時雨ではなく時々雨。
短い1時間降る雨がトーントーントーンってあったら、降ったりやんだりですよね。その場合一時というよりは一時が何回もあるから、時々。
西村:
時々は雨が断続的に振り、2分の1未満ということですよね。
 

林:
増田さんがテレビで天気を言う時は、一時か時々だけだと混乱させてしまうじゃないですか。そこはなんて言いますか?
増田:
そうですね。何時頃に1回降って、一回やみますけど、何時頃降りますみたいな言い方もするし、「時々」の降ったりやんだり感は共通して認識してくれると思うので、そういうときは「時々降りますね」と言いますね。
西村:
ただ、聞いてなんとなくわかりますよね。一時と時々。
増田:
もちろん我々は定義が頭に入っているんですけど、厳密にそれを適用しているよりも、今日の雨、明日の雨にぴったりだという言葉を使おうとしますね。
林:
時々って言ったけどこれは一時じゃないかというクレームはないですよね。
増田:
ないけれども、一時と言ったのに何時まででも降ってるじゃんという指摘はあります。
西村:
それは予想が外れたということですよね。以上です。読み比べするとちょっと面白いな。国語辞典は。
増田:
深いな。
林:
「時々」「一時」みたいな一般的な言葉の定義がかっちりしているというのが面白いですね。
増田:
でも大変なんですよ。

(編集注:西村さんによる辞書に載っている天気用語解説、この倍あったのですが天気解説記事のおまけとしてはボリュームが増えすぎたのでダイジェストを掲載しました。改めて別記事にしてもらいたいと思います。お楽しみに) 

Source

タイトルとURLをコピーしました