2022年第3四半期の広告費、 CTV はどのような成長を遂げたのか?:「倍増はしているが、その割合はまだまだ小さい」

DIGIDAY

今年の第3四半期、従来型TVの広告市場が縮小するなか、CTV(コネクテッドTV)に注ぎ込まれる広告費は増加した。その背景では、いったい何が起きていたのだろうか?

重要ポイント:

  • 2022年第3四半期、CTVへの広告支出が前年比で増加する一方、従来型TVへの広告支出は減少。
  • CTV広告を購入する広告主の数も前年比で増加。
  • CTVインプレッションの販売に関しては、プログラマティックが直接取引のシェアを奪う。

広告費を奪取するCTV

TVの広告ビジネスにとって、2022年の第3四半期は素晴らしい3カ月間と呼べるものではなかった。しかし、CTVの広告ビジネスにとっては、それほど悪い3カ月間ではなかった。

確かに、Roku(ロク)は広告売上のさらなる減速を報告した。しかし、同CTVプラットフォームのオーナーの広告売上は成長を維持している。一方で、ディズニー(Disney)NBCユニーバーサル(NBCUniversal)およびパラマウント(Paramount)の3社はそれぞれ、従来型TVビジネスの広告売上に関して、対前年比での減少を報告したが、ストリーミングサイドでは増加を報告した。

広告主の支出と価格設定に関するデータをエージェンシーから集めてまとめるリサーチ企業、スタンダード・メディア・インデックス(Standard Media Index:以下、SMI)によると、第3四半期における従来型TVへの広告支出は前年比で23%減少した(メディア全体の広告支出は5%減少)。その一方で、CTVへの広告支出は39%増加したという。

SMIで北米セールスおよびメディアオーナー担当バイスプレジデントを務めるダリック・リー氏は、「CTV全体に増加傾向が見られた。当社がデータをまとめたすべての(広告主の)カテゴリーで、広告支出が増加を示した」と語る。

第3四半期に増加したのはCTVの広告支出だけではない。CTVに支出する広告主の数もまた増加した。アドテクベンダーのビーチフロント(Beachfront)によれば、同四半期にCTVへ出稿したブランドの数は、対前年比で25%の増加を記録したという。

支出増加は、驚くべきことでもない

ビーチフロントのプロダクト担当バイスプレジデントであるアミット・ニガム氏は、「全般的に、前四半期比で見ると、(新規広告主の成長率は)広告支出のそれとほぼ一致している」と話す。

言い換えれば、第3四半期におけるCTV広告支出の増加は、それほど驚くべきことでもない。広告主の多くが広告費をCTVへシフトするようになったのは、ここ数年のことであり、その広告費は、CTVが成熟し、開放されるストリーミングインベントリー(在庫)が増えるにしたがって増加してきた。景気の悪化が広告ビジネスの減速を招くなか、CTVはいまなお成長期の真っ只中にいて、こうした広告主からの恩恵を受ける側にいる。さらにいえば、広告主が得られるコントロールと柔軟性の点でも、大画面で多くのオーディエンスにリーチする能力を提供しながらもCTVは従来型TVを上回っている。このすべてが、いままさに節約に向かっているブランド広告主にとって重要になっている。

UMワールドワイド(UM Worldwide)で米国担当最高市場責任者を務めるステイシー・スチュワート氏は、10月のDIGIDAYポッドキャストで次のように語っている。「クライアントは非常に保守的になっている。今後は、必要に応じてキャンセルできる、柔軟性の高いチャネルへとシフトしていくことも考えられる」

いまだ新興段階にあるというCTVの現状は、IAB(インタラクティブ広告協議会)による「2023年版アウトルック・サーベイ(2023 Outlook Survey)」のなかにも示されている。ブランドおよびエージェンシー関係者の回答によると、2023年のCTV広告支出は前年比で23%増加する見込みとなっており、その数字は他のどのチャネルをも上回っている。

広告費全体に占める割合は小さい

広告ビジネス全体の低迷に反して、CTVへの広告支出は増加している。この事実自体はさして驚くべきことではないかもしれない。しかし、いままさにCTVへと流れている広告費のなかには、驚くべき事実も含まれている。

まず第一に、自動車メーカーは今年、サプライチェーンをめぐるさまざまな問題が起こるなかで、TV広告費をカットしてきた。その一方で、第3四半期にはCTVへの支出を大幅に増やした。SMIによれば、その増加幅は前年の約2倍で、同広告主カテゴリーは同四半期における支出レベルで第2位にランクされたという。ただし、自動車メーカー各社の広告費全体から見れば、CTVが占める割合は依然として小規模だと、リー氏は話す。「もちろん、各社ともに全メディアで広告支出を減らしている」と、同氏は補足する。それを端的に示すのが、同業界のTV広告費は前年比で17%低下しているという事実だ。

「当社の調査から、CTVが成長を遂げたことがわかっている。しかも倍増しており、この事実は大きい。しかし、同業界の広告費全体から見れば、その割合はまだまだ小さい」と、リー氏は語った。

一方、セールスサイドに目を移すと、第3四半期においてCTV広告インプレッションの最大シェアを獲得したのは、2位に圧倒的な差をつけてRokuのCTVプラットフォームだった。Rokuの圧勝の大きな要因としては、RokuのCTVプラットフォームが自社のCTVデバイスに加えて、サードパーティのスマートTVにも組み込まれていることが考えられると、二ガム氏は分析する。

驚くことに、インプレッションのシェアでRokuに続いたのは、従来のCTVプラットフォームではなく、STB(セットトップボックス)、つまり、ケーブルTVボックスや衛星放送ボックスを介してアクセスされる、有料TVプロバイダーのオンデマンドプログラムだった。このカテゴリーはCTVに含めないのが一般的だが、二ガム氏は含めるべきだと主張する。

「インターネット経由でアクセスできることが、CTVの従来の定義だ。であれば、ケーブルや衛星のVODの多くがこれに当てはまる。また、取引の仕方から考えると、STBはむしろプログラマティック市場に属している」と、二ガム氏は語る。

プログラマティックの浸透

プログラマティック市場においては、CTV広告を直接取引とプログラマティックで比較すると、両者のシェアは互角のラインに近づきつつある。

これまでは、CTV広告の70%は、ストリーミング広告セラーへ掲載を申し込むという昔ながらの方法で、直接購入されていた。残りの30%は、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)などのサードパーティを介してプログラマティックで購入されていた。ところが今年の第3四半期、この比率が60対40に変わった。CTV広告の多くは依然として直販が占めてはいるが、「徐々にではあるが、サードパーティに傾きつつある」と、リー氏は語った。

[原文:Future of TV Briefing: How CTV ad spending grew in Q3 2022

Tim Peterson(翻訳:ガリレオ、編集:分島翔平)

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