天体観測への影響が指摘されている通信衛星群 ほか【中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」2022/11/24~12/1】

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1. 「非常時ローミング」の第1次報告書案、総務省がパブリックコメント募集

 今年7月に発生したKDDIの携帯電話通信網における大規模障害を踏まえ、総務省と携帯電話事業者らは今後の対策について検討をしてきた。とりわけ、「自然災害や設備故障などが原因で特定のMNOの携帯電話サービスが使えなくなった場合に、他のMNOのネットワークへの『ローミング』など、緊急通報(110/118/119番)を行う手段を確保する方法について検討する」としている(ITmedia)。しかし、記事では「目標はフルローミングだが、この検討会が通信障害時でも緊急通報を実現する手段を検討するために生まれたという経緯や、MNO各社が『まずは緊急通報を優先して検討すべき』という意見では一致していることから、今後も『まず緊急通報をどうするのか?』という議論が優先されそう」とも解説している。

 そして、総務省は携帯電話の事業者間ローミングについて基本的な方向性を取りまとめた「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会 第1次報告書」を取りまとめ、現在、この案に対する意見(パブリックコメント)を募集している。

 当事者である携帯通信キャリアも独自の対応を開始する。KDDIは「自社の携帯回線が利用できなくなったときにNTTドコモやソフトバンクの回線に切り替わるSIMカードなど、通信障害時の事業継続を可能にする法人顧客向けサービスを12月23日から開始する」と発表している(ITmedia)。

 携帯網の障害は連絡手段が失われるだけでなく、決済にも影響が生じる。また、法人向けでは機器の制御などにも影響が及び、その範囲はますます広がることから、インフラのセーフティネットの整備が急がれる。

ニュースソース

  • データを含めたローミングを目指す――総務省の「非常時ローミング」の第1次報告書案を作成 意見を募集中[ITmedia
  • 非常時の事業者間ローミング検討会、呼び返しなどなしなら前倒しで実現も[ケータイWatch
  • KDDI、障害時に他社回線に切り替わるサービス開始へ IoT向けに[ITmedia

2. 天体観測への影響が指摘されている通信衛星群

 ここのところ、衛星を使ったインターネット通信網、携帯電話の通信網の整備が報じられている。災害発生時、地上基地局に被害が生じた場合の通信路として、また、山岳地帯や海上などの人が少ない地域に対して、さらには途上国や戦時下にある国に対して通信サービスを提供するという観点からも今後はさらに重要視されてくるだろう。

 そのようななか、国際天文学連合が「地上の携帯電話と直接接続できるように開発された新たな大型人工衛星が、夜空の大半の星より明るいことから、天文学者らは、研究と人類の宇宙観にとって脅威になる」と訴えていると報じられている(CNET Japan)。具体的な「軌道上にある問題の物体」として、テキサス州に本拠を置く衛星通信会社AST SpaceMobileが運用する試験衛星「BlueWalker 3」を挙げている。さらに今後は複数の事業者が数百から数千規模の衛星を打ち上げて、上空でのネットワークを構成しようとしていることから、その影響は少なくはない。

 記事によれば「可能性のある影響緩和策についてすでにASTと協議を始めた」とされているが、今後の話し合いがどう進むのかが注目点となるだろう。

ニュースソース

  • スマホと直接通信する大型衛星は「天体観測の脅威」–国際天文学連合が懸念表明[CNET Japan

3. 土砂災害の救助にドローンとスマホの位置情報を活用

 土砂災害などで生き埋めになる事故がしばしば発生し、それが報じられるたびに災害発生時の人命救助の難しさも感じるところだ。

 ソフトバンクは「災害で土砂やがれきに生き埋めになった人のスマートフォンの電波をドローンで探知し、位置を特定する技術」を公開した(ITmedia)。しかも、技術デモにとどまらず、来年以降には商用化を見据えているということだ。

 この技術は「有線で電気を供給しながら飛ぶ2機のドローンが、土砂に埋まったスマホの位置を特定」するというもの。もちろん、堆積した土砂の量など、さまざまな条件はあると思われるが、どんなときでも携帯を手放さないような習慣を身に付けた人は多くなっているので、これまでよりも救助の大きな支援となることが期待できそうだ。

 また、「ドローンからWi-Fiの電波を発射することで、他社の通信回線を利用する遭難者のスマホの位置も特定できるシステム」「山菜採りなどでスマホを身に着けず遭難してしまった人に向けて呼びかけができるスピーカーを搭載したドローンシステム」も併せて紹介されている。

ニュースソース

  • 生き埋めの人をドローンで位置特定 ソフトバンクが技術公開[ITmedia

4. iPhoneの生産にも直接的な影響――ゼロコロナ政策をめぐる中国の政治不安

 一般メディアのニュースでも報じられているように、中国政府のゼロコロナ政策による規制によって中国全土では政治不安が広がっている。こうしたことはアップルのiPhoneの組み立て工場の稼働にも大きな影響を与えていると報じられている(CNET Japan)。記事によれば「鴻海科技集団(Foxconn)で、賃金と不十分な食料配給などに抗議する従業員らが、防護服を着た警備員らと激しく衝突する様子を撮影した、衝撃的な動画がオンラインに拡散した。世界中で約20万人の従業員を擁するFoxconnは、Apple最大のiPhone生産受託業者で、iPhone世界出荷台数のうち約70%を生産している」としている。

 その影響を受け「iPhone 14 Pro」シリーズの年末商戦に向けた在庫確保に苦戦しているというわけだ。これはアップルの業績見通しにも影響を与え、株式市場への影響も生じた。これまでも報じられてきたように、アップルもインドでの生産などを模索して、安定的な生産ラインの構築に踏み出してはいるが、すぐには解決には至らないものとみられる。

ニュースソース

  • 「iPhone 14 Pro」シリーズ、約600万台の生産不足か[CNET Japan

5. マイナンバーカード申請は年内に8100万件に――チケット販売にも適用か

 国のデジタル化政策の象徴ともいえるマイナンバーカードの申請枚数が人口の60%を超え、7568万件に到達したと発表されている。政府では「年内の申請件数目標として運転免許証発行枚数相当の『8,100万件』を掲げてている」という(Impress Watch)。

 さらに、マイナンバーカードの利便性を向上させるために「プロスポーツやコンサートのチケット販売などでも活用できるよう、検討を進めている」(松野官房長官)とも伝えられる。当初、利用範囲は「社会保障、税、災害対策」とされていたが、運転免許証、健康保険証などの公的な証明書に拡大。さらにはチケット販売(不当な転売抑止などが目的か)へと広がるとみられる(NHK)。

ニュースソース

  • マイナンバーカード “チケット販売なども検討” 官房長官[NHK
  • マイナンバーカード申請が6割超え 年内8100万件に[Impress Watch

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