レンジで温めたものは冷めやすい気がする(デジタルリマスター)

デイリーポータルZ

レンジで温めたものは、冷めるのが早い気がする。

いつだかそう気づいて、それ以来なにかものを温めるたびに「あ、やっぱりもう冷めた」と思うようになった。普通に焼いたり蒸したりしたものとは冷め方の種類が違う気がするのだ。

加熱直後はどうかと思うぐらい熱いのに、あれは一体どうしたことだろう。レンジVSレンジ以外の温め方で温度変化を比べてみました。

2007年4月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

レンジカレーVS鍋カレー

レンジは温めの仕組みが他の調理とは違う。温度の上昇、下降にもいろいろ難しいカラクリがありそうだが、まずはとにかくその温度の下降ぶりだけに注目したい。

調査にあたって、まず最初にカレーを選んだ。

少し残ると鍋で温めるよりもレンジにかけた方が楽なのだが、ぬるくなると他のどんな料理よりも寂しいカレー。それだけにレンジアップはどうしても躊躇してしまう。

ちょうど3日前に作ったカレーの残りがタッパーにちょっとだけ入ってる。半分はレンジで、半分は鍋で温めて温度の下がり具合を比べてみよう。

カレーはタッパーに入れると匂いがつくと思いながらいつもうっかり入れちゃいませんか
こんな少量のカレーを鍋にかけるの久しぶりだ

鍋のほうは焦げ付かないように弱火でゆっくり熱していく。少量なのですぐにボゴボゴ沸いてきた。レンジは600Wで2分かけたらラップを外すと湯気が噴き出すほど温まった。それにしてもこの湯気って考えてみればちょっとどうかと思うぐらい危ないですよね!

ちなみに私はレンジで何かあたためるとき、あったまったかどうか皿の裏を触って確かめます。熱くなっていれば加熱完了。何かで聞いた裏技だが便利でげす。

レンジの方は加熱ムラを取るためよく混ぜました

早速結果、ドン。

カレーのあたため比べ 鍋VSレンジ

た、大変だ! これは大事件です。なんと、まったくもってして温度の下降ぶりが同じだったのだ。これは一体どういうことか。「レンジで温めたものは冷めやすい」というのは私の幻想だったのだろうか。

わかったこと
・カレーは鍋温めもレンジアップも同様の温度下降

温度には関係ないけどわかったこと
・3分で両者ともに表面に膜が張り始める
・鍋あたためは水分が飛ぶため、冷めるとどんどんテクスチャが重くなる
・50度を下回ると普通の「カレー」から「ぬるいカレー」であると感じる
・レンジで温めたもののラップを外すときは湯気に注意

温度以外のところばかりに目が行くぐらい、温度にみどころがない。がーん。

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ご飯はどうよ

ここで負けてなるものか。そうだ、さっきは温度のムラをなくすためにレンジ加熱の方は過熱後よくかき混ぜたのだ。あれがいけなかったのかもしれない。

ご飯はどうだろう。冷ご飯というと日本中でもっともレンジアップされている食品ではないか。昔ながらの蒸かす方法と温度の下がり具合を戦わせてみよう。

1膳をせいろで3分、レンジで2分温めた。

せいろの方はしぼったペーパータオルと一緒に、レンジの方は軽く水をスプレーしてからラップをかけた
ご飯のあたため比べ せいろVSレンジ

おお、やはりレンジアップの方に急降下が見られる。レンジは最初すごく熱く、口の中がやけどしそうだ。対してせいろの方は3分だとアッツアツにはならなかった。

わかったこと
・レンジは完了直後が猛烈に熱い
・レンジから取り出して、ラップを外す間にすでにかなり温度が下落していそう

温度には関係ないけどわかったこと
・せいろは普段食べている3分蒸しはそれほど温度は上がっていなかった
・けれど断然おいしい
・お米がきらきらしていて
・ 冷めてもなお美味しい
・レンジの方も普通に美味しいのだが、冷めるとカピカピしてきてしまう

おいしすぎてぽかーん

 

蒸したてのごはん。ほわーん!
一粒一粒がきらきらしてるよ

せいろで温めたご飯の美味しさに驚くための調査みたいになってしまった。

それにしても、際立つのはレンジの終了直後の高温ぶりだ。今回はせいろの方がそれほど熱くならなかったので温度の下降の様子を比べることができなかった。

ならば、次はせいろサイドでも劇的に熱く加熱して戦わせてみよう。

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熱い食べ物といえば あんこだろう

アッツアツ対決にはやっぱり あんこ だ。「なんだこれ」とたじろぐ驚きの熱さ。あの温度下降を測ってみたい。

あんこが熱くなるのは砂糖の沸点が100℃を超えるかららしい。

今回は人形焼で確かめてみよう(あんまんが季節柄売ってなかったのです……)。普段あたためることはないが、熱くしてもおいしそうだ。

そんなわけで人形焼です
よろしくお願いします
温めてくれるのかい?
温めてくれるのかね?

……やけにフォトジェニックな顔つきの人形焼で、気づいたら20枚以上写真を撮っていた。

では温めて測ってみましょう。

90℃まで温める

レンジ、せいろともに、中のあんこが90℃になるまで温度計で測りながら温めた。

レンジは900Wで10秒ずつおそるおそる40秒かけたところで90℃まで上昇したのだが、せいろのほうがなかなか温度が上がらない。結局20分ほど蒸しただろうか。

蒸気でぶよぶよになってしまうかと思ったが大丈夫だった。

あとは体温計のように差して検温
人形焼のあたため比べ せいろVSレンジ

ぼよーん。

結果は、「ほぼ同じように冷めていく」というものだった。やはりレンジで温めたものが冷めやすいというのはまぼろしだったのか。

わかったこと
・レンジもせいろもほぼ同様の温度下降
・レンジから取り出して、ラップを外す間にすでにかなり温度が下落しているようだ

温度には関係ないけどわかったこと
・検温後、もう一度あたためて食べたところ、レンジの方はややあんこが酷使されて限界、という感じでパサついていた
・せいろの方はコンディションをキープ
・レンジは短時間で温度を90℃も上げているので満身創痍にも無理はない
・それにしても、熱いあんこはやっぱり熱い

あつい
あついって!

 

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なんとなく分かってきたぞ

せいろの方はかなり無理をして90℃まであんこの温度を上昇させたわけだが、レンジの方は90℃まで温めるのは楽勝であった。

やはり「レンジで温めたものは冷めやすい」のは「レンジで温めると熱くなりやすい」ということなのかもしれない。

とにかく熱くなるのでちょっとでも冷めると「だいぶ冷めたなあ」と感じてしまうのだ。

まだあきらめきれない

真相が明らかになったっぽくはあるが、何となくまだ納得はいっていない。もう1ラウンドだけいってみよう。

冷静になってみて気づいたのだが、これまでの実験はすべてレンジで温めなおした物VS他の器具で温めなおした物、という対戦カードだ。

が、実際「レンジで温めたものって冷めやすいな」と感じるのは出来たてのものと比べたときなのではないか。

最後に、出来たてとレンジで温め返した物の温度を比べてみよう。

焼きたてのお好み焼きと、いったん冷ましてレンジにかけて温め返したお好み焼きの温度変化を比べたい。

急遽のトライとなったため、具はキャベツとまいたけというイレギュラー
焼き上がったらすかさず検温開始! もう1枚は冷ましてからレンジにかけて検温
お好み焼きの温度比べ 出来たてVSレンジアップ

やはり、レンジであたためると普通のできたてよりも温度が高い。それだけに、温度の下降も急激だ。

わかったこと
・できたてよりも、レンジアップの方が圧倒的に過熱後の温度が高い
・室温を考えると温度の急降下は普通のことか

温度には関係ないけどわかったこと
・焼きたてはパリッとした部分があって美味しい
・レンジ加熱のものも、しんなりしていてそれはそれで美味しい
・ややレンジをかけすぎ、ラップを外すときに火傷しそうになった。注意だ

あつい、熱いってば

結果

・レンジは物の温度を焼きたての状態以上に上げる
・そのため、冷めるのも早い
・温度の下降が早いため、冷めたと感じやすい

ああ、なんということだろう。ものすごく単純な結果でまとまってしまった。みんな、もしかして始まる前から気づいていただろうか。はらはら!

さらに予測で書くと

・レンジで温めたもの、というのは寂しいシチュエーションで食べることが多い
・レンジで温めたものはテレビを見ながらなど、食に集中しないで食べることが多い
・温めの仕組みが違うため、味が他の加熱方法に比べるとやや落ちる場合がある

といったことも、冷めるのが早い説に影響しているのかもしれないです。レンジは悪くなかった。むしろ頑張っていた。悪かった、帰ったら庫内を掃除するからゆるして。

と、いうことなのだが、冒頭で書いた「レンジは冷め方の種類が違う気がする」というのはどうやら本当のことらしい。

レンジは物を温めるという仕組みが他の温め方と全く違い分子に働きかける。温まっているのは食材そのものではなく、食材に含まれる水分だ。それが冷めるということは、熱くなった水分が冷めていくということで、食材が冷めていくこと自体も他の場合とちょっと違う。もしかすると、同じ温度でも、冷たいと感じてしまうのがレンジの性なのかもしれないです。

なにをいっても便利で頼りにしてるレンジだ。これからもよろしくお願いします。

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