オールバーズとワービーパーカーの重要な相違点:D2C先駆者の第3四半期決算を読み解く

DIGIDAY

D2C ブランドのオールバーズ(Allbirds)とワービーパーカー(Warby Parker)は、困難にもかかわらず、この12カ月で収益を伸ばし、新店舗をオープンし、顧客ベースを増やすことに成功したと報告した。オールバーズは業績予想を維持し、ワービーパーカーは会計年度の残りの期間について予想を上方修正した。

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需要の低迷、サプライチェーンの障害、数十年に一度の高インフレなど、この1年間は、市場に飛び込むのが困難な年だった。チャイム(Chime)からインスタカート(Instacart)まで、多くの企業が経済的な不確実性のなかでIPOを遅らせることを選んだ。2021年に手続きを行った企業は、公開企業としての最初の1年間に多少の適応と再計算が必要になった。

D2Cチャネルへの信任投票として、オールバーズ(Allbirds)ワービーパーカー(Warby Parker)は昨秋、数週間の差で株式を公開した。両社は、困難にもかかわらず、この12カ月で収益を伸ばし、新店舗をオープンし、顧客ベースを増やすことに成功したと11月初旬に報告した。オールバーズの収益は前年に比べて16%も急増して7270万ドル(約101億円)に達し、ワービーパーカーは前年比8.6%増の1億4880万ドル(約207億円)に達した。ほかの小売業者は2022年の残り期間の見通しを修正したが、オールバーズは業績予想を維持し、ワービーパーカーは会計年度の残りの期間について予想を上方修正した。

米モダンリテールは、両社の収益について以下のように詳しく分析した。ワービーパーカーが株式を公開したのは2021年9月29日、オールバーズは2021年11月3日だ。

オールバーズの要点

  • フットプリント:オールバーズの米国における実店舗小売チャネルは2021年よりも53%成長した。同社は第3四半期に6つの店舗を米国内に開設し、期間終わりの時点で米国内に38店舗を保有していた。同社の過去1年間の新店舗開設は「過去最高」だったと同社は述べている。
  • 注目の商品:オールバーズは9月に、初の植物由来スニーカーであるプラントペーサー(Plant Pacer)を発売した。そのビーガンレザーは、「従来の牛革よりも炭素排出量が約88%少ない」という。
  • 在庫:オールバーズの在庫は2021年9月30日(9930万ドル、約138億円)から2022年9月30日(1億2650万ドル、約175億円)までに27.4%増加した。
  • レイオフ:オールバーズは2022年8月に従業員の8%(23人)をレイオフした
  • 見通し:共同創設者で共同CEOを務めるジョーイ・ズウィリンガー氏はプレスリリースで、「今年の年末から2023年にかけて、マクロな逆風は続くと考えられるが、当社のブランド、成長戦略、簡素化の取り組みによって、この期間を堅調に乗り越えるだろう」と述べている。同氏は決算説明会で、「ホリデーシーズンを見据えると、2016年の創業以来、外部環境はもっとも促進的になると考えられる。当社は在庫の適切な配分とともに優れた商品ロードマップを保有しており、ホリデー向けの強力なマーケティングキャンペーンも行う」と付け加えている。

ワービーパーカーの要点

  • フットプリント:ワービーパーカーは第3四半期に13店舗を新規オープンし、年末までに40店舗をオープンする計画を進めている。また、前四半期に14の検眼室を店舗に加えた。9月30日の時点で、139店舗で検眼を実施している。同社は年末までにこの数を150に増やすことを目標としている。
  • 注目の商品:ワービーパーカーは最近、2020年秋のコアコレクションを発売し、女優のクロエ・セヴィニー氏、およびシュプリーム(Supreme)の元クリエイティブディレクターであるブレンドン・バベンジン氏という2人のセレブリティとのコラボレーションも開始した。同社は自社の処方の範囲も拡大し、一部の店舗では検眼に網膜撮影を追加できるサービスを有料で提供している。
  • 在庫:ワービーパーカーの在庫は2021年12月31日(5710万ドル、約79億4000万円)から2022年9月30日(7060万ドル、約98億1000万円)までに23.6%増加した。
  • レイオフ:ワービーパーカーは2022年8月に従業員の15%(63人)をレイオフした
  • 見通し:共同創業者で共同CEOを務めるデイブ・ギルボア氏は決算発表で、「我々は、目前のマクロ経済の課題に対処し続け、インフレが激しく消費者への圧力も強いこの期間を、パンデミックの期間を乗り越えて脱したのと同じように、より強固な企業として克服できると考えている」と語っている。ワービーパーカーはeコマースについても楽観的だ。同社は11月、仮想試着ツールが同社のiOSアプリに加えて、ウェブブラウザでも動作するように拡張した。

実績の意味するもの

オールバーズとワービーパーカーでは、いくつかの重要な相違点がある。どちらも2ケタの純損失を報告したが、ワービーパーカーはその金額を減らす方向に向けて、より進展している。ワービーパーカーの第3四半期の純損失は前年比で74%近くも減少し、2380万ドル(約33億1000万円)となった。一方で、オールバーズの第3四半期の純損失は2倍近くになり、2021年の1380万ドル(約19億2000万円)から、2022年には2520万ドル(約35億円)に達した。投資家は、最初の24時間でこの結果に強く反応した。オールバーズの株価は9日に10%以上下落し、ワービーパーカーの株価は10日に15%以上上昇した。

オールバーズがより赤字に沈んでしまった理由はいくつか考えられると、グローバルデータリテール(GlobalData Retail)のマネージングディレクターを務めるニール・サンダース氏は米モダンリテールに語った。「ワービーパーカーのビジネスはより成熟している」と同氏は述べる。「同社は多くの小売店舗を保有し、D2Cビジネスも行っている。顧客を増やすために、若い会社であるオールバーズほど多くの額をマーケティングや施策に費やす必要はない」。

オールバーズが創設されたのは2014年で、ワービーパーカーの創設は2010年だ。またオールバーズは、ワービーパーカーよりも国外収益への依存度が高いと、サンダース氏は指摘する。オールバーズは現在、米国、英国、欧州、ニュージーランド、中国、日本、韓国に小売店舗を保有している。「国外での売上は、為替レートが思わしくないことから大幅に減少している」と、サンダース氏は語る。

コストの観点からも、オールバーズは多くの新店舗をオープンしようとしているが、これらは非常にコスト高だと、同氏は付け加えている。「そして、これらの新店舗からすぐには見返りが得られない。それどころか、これらの新たに開設した店舗からの見返りは鈍っている。このため、オールバーズの収支決算は今年の年末にかけて大幅に悪化していき、収益性に対して多くの懸念が起きることになるだろう」。

また、ワービーパーカーには成長の余地もあると、同氏は語る。その数値は「妥当」だが、売上の伸びは2ケタから1ケタに減速していると、同氏は言及する。「既存顧客からより多くの利益を得るにはどうすればよいか、また、コンタクトレンズや店舗での視力検査など、いくつかのサービスストリームを強化するにはどうすればよいか、非常に注意深く検討する必要がある」と同氏は述べている。

明るい材料として、たとえば前四半期の営業損失が3億7200万ドル(約517億円)に達したウェイフェアー(Wayfair)のようなD2Cプレイヤーに比べて、ワービーパーカーとオールバーズは優位な立場にあると、サンダース氏は説明する。「両社とも十分に差別化されたブランドだ。それぞれの役割がある。収益性はそれほどずば抜けていないとしても、それほどひどいというわけでもない。必要なのは、より困難な環境を切り抜け、ビジネスの運用方法を少し変えるということなのだ」。

[原文:A tale of two DTC pioneers: How Allbirds and Warby Parker’s earnings diverge]

JULIA WALDOW(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Allbirds & Warby Parker


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