ぶどうをレンジでチンするとこの世の終わりのようなプラズマが発火する理由がやっと判明

GIZMODO

2019年2月26日の記事を編集して再掲載しています。

偶然の一致。

電子レンジに絶対入れてはいけないものと言えば、たまごとぶどう。たまごは爆発しますし、ぶどうはテスラコイルみたいな厳かな光を発し、「こ、これは…」と呆然としているとボッと燃えたりします。畑のぶどうなのに。

この奇妙な現象にまじめに取り組む論文が月曜、カナダから高名な科学誌に発表され、たいへん注目を呼んでいます。序文にはこうあり…

ぶどうの球体2個を電子レンジにかけるとプラズマが発光する現象は今や全人類の知るところとなっている。

これで終わりにしてやるぜ、という本気度がうかがえます。さっそく研究班に取材してみたら、モントリオールのコンコルディア大学のPablo Bianucci物理学准教授は、「これまであまりこの領域の研究は行なわれていなかったからね」と実験を行なった動機を神妙に語ってくれました。

一般によくある実験手順

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Video: Pete Yagmin/YouTube
ぶどうで実験する勇気ある夫婦(2013)

YouTubeでおなじみの実験手順は、

1)皮つきのぶどうを2つ、ほんの少しくっつけて置いてチンする

2)数秒で発光する

という単純なものです。プラズマ発火原因についてはネットでは諸説ありますけど、論文では科学的アプローチで実験を行なってみました。

ぶどうの皮が原因ではなかった

まず同形状のぶどうとバスドロップボール(水分をよく吸収する素材のもの)の両方で実験を行ない、弾けてもくっつくように、真ん中が少しくぼんでるお皿に乗っけてレンチンし、経過を撮影してみました。

するとジェルボールでもプラズマがバチバチ光りまくることがわかり(下の動画の1:10~)、一般に原因物質と信じられてきたぶどうの皮はまったく不要であることがたちまちわかりました。成果は米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載中です。

で、本当の原因は?

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Video: Veritasium/YouTube
8年近く前に実験したユーチューバーも論文のニュースを紹介。1:00から出演する右がBianucci准教授で左が共著者Khattack研究員。「YouTubeで見て興味を持ったんだよ」と言ってます

中が液状の球状のものを2つくっつけて電磁場に置くと、球体や半球体の交点に共振が集中し、極めて小さな点に高エネルギーが集中するホットスポットが生まれ、あまりのエネルギー密度に耐え切れなくなって、交点からプラズマが放出される、というのが原因です。ちょっとそれだけでは??かもしれないので、上の動画の説明で補足してみますね。

家庭用の電子レンジの周波数は通常、2.45GHz帯で、波長はだいたい12cm。この波長と同じ長さの物体なら、いろいろ面白い現象が起こることは想像がつくんですが、ぶどうは、そこまで大きくはないですよね。でも、ここで注目なのは、ぶどうの外の波長ではなく、ぶどうの中、です。

屈折率 = 真空中の光速度 ÷ 物質中の光速度なので、ぶどうの屈折率は1.333とかそんなもの。論文共著者のKhattack研究員によると、空中を伝わる周波数よりぶどうを伝わる周波数のほうがずっと遅くなって、「だいたい10分の1になる」んだそうですよ? つまり、ぶどうを通るときの波長は12cmじゃなくて1.2cm

ちょうどぶどうの大きさと…

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Image: PNAS via Veritasium

完全に一致、です。なので、ぶどうを電子レンジに放り込んでチンすると、ぶどうにマイクロ波が入ったら最後…

「直径が波長とほぼ同じボールなので、ここにマイクロ波がトラップされて、出れなくなっちゃう」(Bianucci准教授)

のです!!! ぶどう、おそるべし!

「それってもしかしてトータル・インターナル・リフレクション(全内部反射)みたいなやつですか?」とユーチューバーが聞くと、「そうそう」と准教授はにやり笑ってます。このまま大きくなったらバックトゥーザフューチャーのドク博士になりそうなオーラがありますわね。

…あ、すみません。トラップされるとどうなるかというと、ぶどうの中心に電磁場が集まって、内側から熱されていくんです。で、ぶどうを2個くっつけると、接点に電磁場の中心がひゅんと移動して集中度も倍増し、周辺の空気がイオン化されてプラズマ放出、となるってなわけです。これはぶどうをカットしても、しなくても起こります。ちなみにぶどうの場合、プラズマの中身は主にカリウムとナトリウムでした。

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Image: PNAS via Veritasium

論文の意義

それにしてもいろんな研究がありますよね~。PNAS編集者のイリノイ大学Catherine Murphy化学教授に取材してみたら、「ピアレビューもクリアした厳格な実験です。しかるべき手続きを踏んだ上質な論文であることは確か」と太鼓判を押してました。

奇をてらったスタンドプレイということもなく、この種の指向性エネルギー研究は爆発物や高密度レーザーパルスといった他の指向性エネルギーシステムに応用される可能性もあるんだそうですよ? 電磁場を視覚で捉える技法も論文では示されているため(高速カメラ、赤外線カメラで撮影し、電磁波モデリングで解析した)、もしかしたらもっと広範なフォトニクス研究の発展に生かされるかもしれないとのこと。

へ~で終わる話も、こんな風に論考と科学検証を行えば立派な研究成果になるんですね。勉強になります。あ、実験では電子レンジがめちゃ壊れたそうなので、お家で実験はダメ、絶対ダメですよ! ぶどう2つでプラズマを呼んでタイムスリップしたくなっても家が燃えるだけです。やめましょう。

Sources: PNAS

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