「世界にいる哺乳類のうち34%が人間で野生動物はたった4%」など知られざる哺乳類の豆知識9選

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気候変動や自然破壊など、グローバルな問題をデータでまとめているOur World in Dataが、人類を含む哺乳類の現状を9つにまとめました。

Mammals – Our World in Data
https://ourworldindata.org/mammals

・目次
◆1:野生の哺乳類のバイオマスは人類が出現して以来85%も減少している
◆2:世界の哺乳類に占める野生動物の割合はわずか4%
◆3:人類の祖先は大型哺乳類を大量に絶滅させた
◆4:ユニークな哺乳類が最も多く住んでいるのはどこ?
◆5:世界の哺乳類の4分の1が絶滅の瀬戸際
◆6:姿を消しつつある巨大哺乳類たち
◆7:密漁によりゾウの個体数が激減した
◆8:復活したサイもいるが絶滅しかけているサイもいる
◆9:クジラは少しずつ個体数が回復している

◆1:野生の哺乳類のバイオマスは人類が出現して以来85%も減少している
生態系の豊かさに関する指標としては個体数がよく用いられますが、巨大な象も小さなネズミも同じようにカウントされているため、科学者はしばしば「バイオマス」という指標を使います。これは、生物を構成する基本的な物質である炭素の重さから動物がどのくらい存在するのかを表す指標です。

現代から約10万年前、人類の祖先がまだアフリカで暮らしていた時代、地球上の野生動物のバイオマスは2000万トンもありました。ところが、徐々に繁栄を始めた人類が大型の哺乳類を狩り尽くしたことなどが引き金となり、1万年前までに野生動物のバイオマスは1500万トンまで減少。1900年には10万年前の半分になってしまい現代ではたった300万トン、割合にして10万年前のたった15%まで減ってしまっています。


◆2:世界の哺乳類に占める野生動物の割合はわずか4%
野生動物が減少の一途をたどる一方で人間と家畜は急増しており、地上にいる哺乳類の96%が人間と家畜で占められています。

内訳は以下の通り。野生動物が4%しかいないのに対して人間は34%、残りの62%は家畜です。家畜の中では牛が全哺乳類のバイオマスの35%、豚が12%、バッファローが5%を占めており、ヤギや羊、馬、ペットなどがこれに続きます。なお、牛や豚と並んで代表的な家畜である鶏は鳥類なのでこの図では対象外です。


◆3:人類の祖先は大型哺乳類を大量に絶滅させた
近年の環境破壊により多くの野生動物が減少しているため、「人間が野生動物を脅かし始めたのは最近のこと」と思われがちです。しかし、文明を持つ前の人類の祖先も自然と調和するどころか、アフリカから世界各地に広がる過程で多数の野生動物を絶滅に追いやってきたことが分かっています。

Our World in Dataの調べによると、紀元前5万2000年から9000年の間に、体重44kg以上の大型哺乳類である「メガファウナ」が178種類も絶滅したとのこと。「第四紀の大量絶滅」と呼ばれるこの現象は人類が引き起こしたものだと考えられています。


◆4:ユニークな哺乳類が最も多く住んでいるのはどこ?
姿を消しつつある哺乳類の中でも、科学者が特に注目しているのが固有種、つまり特定の国や地域にしか存在しない種の哺乳類です。なぜなら、広い地域に住んでいる哺乳類より、決まった地域にしか住んでいない哺乳類の方が絶滅のリスクが大きいからです。

以下は、どの国に保有種が多いかを表した地図で、色が濃いほど固有種がたくさん住んでいます。固有種が多いのは他の地域と海で隔てられた島や大陸で、具体的には熱帯に位置するインドネシアが281種類と首位です。また、オーストラリアやアフリカのマダガスカルにも固有種の哺乳類が200種類以上生息しています。

◆5:世界の哺乳類の4分の1が絶滅の瀬戸際
固有の哺乳類が多く住んでいるということは、絶滅の危機にさらされている哺乳類が多く住んでいるということです。以下は、絶滅危惧種としてレッドリストに分類されている哺乳類が住んでいる国のグラフで、最も多く固有種が住んでいるインドネシアがここでもトップになりました。また、経済発展に伴う開発が進んでいるメキシコ、インド、ブラジル、中国も上位に位置しており、世界全体で見ると哺乳類の4分の1が絶滅の危機にひんしているとのことです。

◆6:姿を消しつつある巨大哺乳類たち
前述の通り、人類はアフリカから世界各地に進出するに伴って大型哺乳類を大量に絶滅させており、その危機は今なお続いています。以下のうち左列は、約258万年前から約1万1700年前の更新世に絶滅した哺乳類を黒色、生き延びた哺乳類を緑色で示したもので、グラフは上から北米、オーストラリア、アフリカ、南米のものです。左ほど体が小さく、右ほど体が大きいことから、絶滅した哺乳類が大型哺乳類に偏っていることが分かります。同様に、現在のところ絶滅が危惧されていない動物を緑色、狩猟や生息地の損失、その他の脅威にさらされている哺乳類をそれぞれ赤・黄・青で示した右列のグラフでも、特に狩猟で姿を消しているのが大型哺乳類に偏っているのが示されています。


上のグラフからは、古代から現代に至るまで大型哺乳類は主に人類の狩り、つまり乱獲によって命を落としていることが分かります。古代の人類は主に食料としてメガファウナを狩って食べていましたが、現代でも牙や骨を集めるため、あるいは単なる娯楽として大型哺乳類が殺されています。

◆7:密漁によりゾウの個体数が激減しつつある
密漁により命を落としている大型哺乳類として最も代表的なのは、地上最大の哺乳類である象です。特に象牙を目的とした密漁が深刻なアフリカゾウの個体数は、1500年の2600万頭から1995年には28万6000頭にまで数を減らしました。その後は若干持ち直しつつありますが、2015年時点でも約41万5000頭と、約100年前の1000万頭に比べて4%のところまでしか回復していません。

◆8:復活したサイもいるが絶滅しかけているサイもいる
角が中国で漢方薬として重宝されているサイも密漁に脅かされており、5種のサイのうち4種が絶滅危惧種に指定されています。

例えば、シロサイの亜種であるキタシロサイは記事作成時点では2頭しか生存していない野生絶滅の状態にあります。しかも、2018年3月には最後のオスが死んでおり、生き残りはメスだけになりました。

種を保全する取り組みの数少ない成功例の1つが、ミナミシロサイです。密漁によりミナミシロサイは1895年には20頭まで減少してしまいましたが、アフリカの自然保護区で厳重に保護された結果、1世紀の間に1000倍の2万1000頭まで個体数が回復しました。

◆9:クジラは少しずつ個体数が回復している
一方海に目を向けると、海の大型哺乳類であるクジラも捕鯨で大きく数を減らしており、1890年から2001年までにクジラ全体の個体数は3分の2にまで減少しました。特に、捕鯨が盛んに行われたナガスクジラ(Fin Whale)は98.5%も個体数を減らしています。

しかし、技術の発達により鯨油が不要になったことや国際的な取り組みなどにより捕鯨は下火となっており、一部の種のクジラは個体数が回復しつつあります。この点についてOur World in Dataは「捕鯨は自然保護の成功例の1つです。かつて世界中で高い需要があった動物が、代替技術や国際協力によって絶滅の危機から救われました。しかし、まだ多くの哺乳類が、絶滅の瀬戸際だった1960年代のクジラと同じような状況にあります。捕鯨の衰退は、事態を好転することが可能であるという希望を私たちにもたらしてくれるものになるかもしれません」と評価しました。

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