なぜ男性を対象にした避妊法の選択肢が少ないのか?現在開発中の新たな避妊法とは?

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女性向けの避妊法としては経口避妊薬(ピル)・女性用のコンドーム・子宮内避妊具(IUD)・緊急避妊ピル(アフターピル)などが存在していますが、男性の場合は膣内射精を避けるかコンドームかのほぼ2択です。一体なぜ男性を対象にした避妊法は選択肢が少ないのか、そして男性向けに開発されている新たな避妊法について、カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部の教授を務めるChristina Chung-Lun Wang氏が解説しています。

Male birth control options are in development, but a number of barriers still stand in the way
https://theconversation.com/male-birth-control-options-are-in-development-but-a-number-of-barriers-still-stand-in-the-way-186537

Wang氏によると、男性が射精前にペニスを抜く方法の失敗率は約20%とかなり高く、コンドームの失敗率は正しく装着した場合では2%であるものの、正しく装着しない人が多いため実質的な失敗率は13%ほどになるとのこと。精管を切除して妊娠を防ぐパイプカットという選択肢もあるものの、これには手術が必要であり、元に戻して再び妊娠可能にすることが非常に難しいとされています。

18歳~44歳の男性1500人を対象にした2017年の(PDFファイル)調査では、80%以上の男性がパートナーの妊娠を防ぎたいと考えており、避妊の責任は男性側にもあるという認識を持っていることが示されました。また、コンドームに不満を持っている男性のうち87%が男性の新たな避妊法に興味を持っているとのことで、コンドームやパイプカットではない新たな避妊法の普及が、不本意な妊娠を防ぐ有効な手段となり得ると期待されています。


近年は新たな男性向け避妊薬などが注目されていますが、実際には1980年代にメスを使わないパイプカットが登場して以来、新たな避妊方法は登場していません。この点についてWang氏は、男性向け避妊薬の開発は主に学術機関や非政府組織のサポートで進められているものの、これらの機関には製薬会社に匹敵するほどの医薬品開発インフラストラクチャーが整っておらず、財源の問題もあると指摘しています。

また、製薬会社は「避妊薬の開発コストおよび市場における需要の不確実性」「医薬品を管轄する政府当局から承認を得るための規制要件の不明確さ」「避妊薬を使用したカップルにおいて妊娠が発生した場合の責任」といった点から、男性向け避妊薬の開発に及び腰だとのこと。


そんな中、Wang氏を含むさまざまな研究者が、複数のアプローチで男性向け避妊薬の開発を進めています。ホルモン法と呼ばれるアプローチは、皮膚や筋肉への注射または経口薬でテストステロンプロゲスチンといったホルモンを送り込むという手法です。

プロゲスチンは精子を作るための下垂体ホルモンの分泌を抑制する効果を持っています。また、テストステロンは精巣が精子を生産するためにも使われますが、濃度が一定以上になると下垂体ホルモンの分泌が抑制されることがわかっているため、テストステロンの服用は精子生産を抑制する効果があるとのこと。すでにWang氏らの研究チームによるホルモン性避妊薬の第II相臨床試験が進行中であるほか、テストステロンとプロゲスチンのように作用する別の化合物を用いた避妊薬の開発も行われています。

別のアプローチとしては非ホルモン性避妊薬も挙げられます。この方法は、精子の濃度や機能を低下させるために精子産生器官を標的にした薬物を使い、男性の生殖能力を低下させるというものです。すでに非ホルモン製避妊薬は動物実験で有効性が示されており、いくつかの非ホルモン製避妊薬は第I相臨床試験が進行中だとのこと。

他にも、精子を輸送する精管を可逆的な方法で遮断するという避妊法が模索されています。男性用避妊イニシアチブパーセマス財団が支援する研究では、精管にポリマーの一種であるヒドロゲルを注入することで精子をブロックするという手法がテストされているとのことです。

Wang氏は、「人々は新しい避妊法を受け入れる準備ができています。私は学術機関・政府当局・非営利団体・製薬企業の各セクターが協力することで、安全かつ可逆的で、受容性が高く、すべての人々が利用できる新たな避妊法を提供できると信じています」と述べました。


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